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読書メモ UXリサーチの道具箱

 業務でUXリサーチをすることになったので、今回は「UXリサーチの道具箱 ーイノベーションのための質的調査・分析ー」を取り上げます。
 UXリサーチの目的は「調査」と「評価」に分かれますが、本書は「調査」について取り上げており、2巻の「UXリサーチの道具箱 ーユーザビリティテスト・実践ガイドブックー」が「評価」についての本なので、目的に応じて使い分けると良いと思います。


概要

「調査ーデザインで解決すべき課題を発見するための活動ー」のためのUXリサーチの調査・分析手法が7つ道具として取り上げられている本。一度ざっくり読んで、実際にやるときにまた見返すという使い方ができると良さそう。

道具として取り上げられているのは、ユーザーインタビュー/データ分析/ペルソナ/シナリオ/ジャーニーマップ/ジョブ理論/キャンバス。
一つ一つの存在は知っているし見たことはあるのでイメージはできる。
でもいざ自分が実際に行おうとすると、手が止まってしまうポイントが存在する。なぜそれを行う必要があるのかがうまく伝えられなかったり、調査設計で行き詰まったり、調査の結果のアウトプットがまとまらずやったはいいけどどうするんだっけ?などである。
この時、この本をめくるときっと次やることがわかる。
そんな使い方を目指して書かれている本な気がした。


学びと気付き1.定性データ分析

定量データの分析は慣れているが、定性データの分析についてはほぼイメージがついていなかったので、データ分析の結果どのようなアウトプットが作られうるのか、どのような手順でそれを行うのかが分かり参考になった。

分析手法
<一人のインタビューを構造化する>
1. 質的データを書き起こす、文章化する
2.重要箇所に下線を引く
3.2をカード化=付箋に書き出す
4.グルーピングし、見出しをつける
5.グループ間の関係性を分析して図解化する(前後関係、因果関係)
6.カード化したデータから浮かび上がってくる新たなストーリーのアウトラインを再文章化する
7. もとデータとストーリーラインを照らし合わせて矛盾がないか検証・考察する

<複数のインタビューをパターン化する>
・複数のユーザー間に見られる行動や思考の共通性をパターン化する
・同じテーマでインタビューした場合、5人で1〜2パターン、10人で3〜4パターン程度が見つかることが多い

一言で言えば質的データを編集しやすい形にして、構造化していくということなのだが、本書ではSTEPを分けイメージ図があることで具体化されたように思う。

質的データ分析の結果は“結論”ではなく“仮説” (仮の結論) です。 ストー リーラインを書いて検証・考察すれば新たな疑問が生まれてきます。
 〜
質的調査は調査と分析を繰り返しながら徐々に結論に到達します。
 〜
自社のビジネスにとって役立ちそうな仮説が得られればそこで調査は終了です。

またインタビュー結果を活用するコミュニケーションで気をつけなければならないのもここだと思う。インタビューの出口はあくまでも仮説ということは意識しながら実際の調査を行なってみたい。


学びと気付き2.架空のペルソナと本物のペルソナ

ペルソナの中で印象的だったのは「架空のペルソナと本物のペルソナ」について。ペルソナの作り方は2種類あり、そしてそれぞれによって適切なプロセスが異なる。説明を引用すると、、

本物のペルソナはユーザ調査(主にインタビューや観察) で得られたデータ に基づいて作ります。 偽物のペルソナは主に開発チームメンバー (プロダクト マネージャー、 エンジニア、 デザイナ等) の主観に基づいて作ります。
ペルソナは開発チーム全員で作ります。 そうすれば制作プロセスを通じ てチーム内の対話と合意形成が促進されます。 さらに、 自分たちのペルソナは 「仮説の積み重ねに過ぎない」 ことが明白になるので“誤用”が防げます。

 私は同じプロジェクトを担当するデザイナーさんと2人で”偽物のペルソナ”を作ることを考え、つくったところで理解が得られなさそうという不安を抱いていた。しかしこのプロセスは過ちで、偽物ペルソナを作るなら「開発チーム全員で、プロセスの共通認識を作りながら」行う必要があるのだ。

個人的にこのやり方でうまくいくのかな・・・?と不安を抱いていた箇所に対して、説明がフィットしていたのですごく腹落ちした。今回私のチームではユーザ調査を予定しているので、それに基づいて”本物のペルソナ”をつくることにチャレンジしてみようと思う。着手前に気づけて本当によかった。


学びと気付き3.ジャーニーマップの目的と活用方法

ジャーニーマップについて覚えておきたいことはこれ。

現在のユーザー体験はシングル・タッチポイントには到底治りません。例えば〜のです。ジャーニーマップはそんな「マルチ・タッチポイント」におけるインタラクションをデザインするのに適しています。

現在担当プロダクトで考えなければならないこととして、スマホ戦略はどうするか?というものがある。スマホサイト・アプリのプロダクトとしての位置付けをどのように具体化していくか、判断していくかに迷っていたが、ペルソナ+ジャーニーマップは一つの手段として適切そうだと思えた。


まとめ

課題発見のためのリサーチをすることが決まり、この本を読んだいま、実際にリサーチをやってみたくてうずうずしている。ユーザーインタビュー→データ分析→(パターン化)→ペルソナ(擬人化・優先順位づけ)までの流れはとりあえずやってみる。

インタビューして「理解が深まってよかったね」で終わらせず、プロダクト企画・開発に活かすことまでやりきりたい。
今回取り上げた学びポイントは本の前半に寄ってしまっているが、それだけ私の所属チームのリサーチの現在地が手前であるということだと思う。本の通りにやったところできっと上手くいかないことはあると思うが、推奨されるプロセスでまずはやってみて、現状のチームの中でベストなやり方を模索していきたいと強く思った。



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