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ブレスト・キャンサー・グループ、略してBCGのこと

職場に、わたしを含めて三人の、乳がんの仲間がいる
わたしがいちばんの新参者
お一人は2年前に部分切除
もうお一人は数ヶ月前に全摘出をされた方だった

わたしはこの土地にきてまだ5ヶ月とちょっと
この土地の冬もはじめて体験して生き延びた?ばかりだった

わたしはこの土地ではじめて冬をすごして
この土地が好きだと思った
その理由は、
どんな職業や年齢や人種のひとも
ある種、同様に
大雪やらひどい寒さやら吹雪やらなにやら
自然のもたらす苦境や
同時にその美しさを

その場にいるだけで、いつも共有しているというような
ある種の平等さと、同志のような感じを
毎日、毎日感じるからである

天気の話はsmall talkのネタなどではなく
死活問題に関する、怪我しない・死なないための情報交換だ
また、厳しい状況にあって、悲観的にならないためにも
今日はこんな天気だねと話すこと
それは皆でマインドフルになることでもあり
ユーモアで心をほどくみたいなことでもある
そういうのをみんなで、やってる気がする

そういうところが好きだと思った、
札幌での初めての冬だった

で、BCGの話をする
BCGは、同じ職場の、乳がんを経験している
三人の、グループラインの名前である

私たちはそれぞれ
別のタイミングで、自分が乳がんであることを知って
それぞれに病院に行き
家族や友人たちと相談しながら
治療のことを考えて、手術を決めて
ある段階まで、職場ではそのことを言わないで
思いを巡らせてきた

BCGの発足はいまから1ヶ月前
わたしが、療養休暇をとることについて
職場でいつも頼りにしている方に質問をしたところ
その方が、前月に同じ休暇をとり
治療をされたことを自ら話してくださった
そこでも、わたしはまだ自分の病気について
具体的話していいのかわからなかったが
その方が、さらにご自分の病気について
先に話してくれたので
わたしも同じ病気なんです、と伝えることができた

それからしばらく、病気のこと、手術のこと
職場でどんなふうに伝えるかということ
体や心のこと、主治医の先生との関係について
いろんな心配なことを話して
情報も気持ちも、たくさん共有してもらって

わたしは、ずいぶん助かった。

それから二週間ほどたって、その方が
「じつは、同じ職場にもう一人仲間がいます」と教えてくれた
もしよかったら、その方にも、わたしのことを話して
その方にもわたしに話していいかきいて、繋ぎますって

それで、わたしは、すぐに
おねがいします!
といった
それから、一体どなたなんだろう?と思った

その人は
わたしが5ヶ月前にきたときから
優しく、明るく、おもしろい話をいろいろ
話しかけてくださっていた方だった

ともあれ、そういう経緯でBCGができて
そのグループで、たくさんのことを話してる
本当に、ずいぶん助かってる
(名前もおぼえやすくていい)

たとえば今朝は、わたしが
術後の傷をまだみてない、なんだかこわくてまだ見られない
ということを書いたら
みんなが
それぞれ、体験したことや
いまどう考えているかということを書いてくれた

誰も、わたしにどうこうしろと言わないし
わたしのことを、かわいそうがってもいない
ただ、同じきびしさを、共有してくれている。

同じきびしさを共有してくれている人がいるということ
それは、寒い寒い冬を、一緒に過ごすことと似てる
今日の吹雪信じられないくらいきつかったね
こんな寒いのはなかなかないよね
まだ降るんだね
たぶん今日すべりやすいから、転ばないようにしなきゃね

なんてことを言い合うこと、
それ自体が、冬を越すための役割以上のなにか
一体感というか、生き生きした前向きなエネルギーというか

なんだろう、人間というのは
思っていたよりも、段違いに魅力的な側面を持っており
特殊な状況下でなにかを共有することで
その、人間でいることの面白さ、魅力みたいなものが
鮮やかに見えてくるようになっている、ような気がする

BCGはそんなグループで
わたしは、助かっているだけでなく
人間でいることの面白さ?醍醐味?みたいななにか
はじめての体験をさせてもらっている気がする

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