角野隼斗さんの「バルトーク ピアノ協奏曲3番」が宝物になった日(2023.7.23@高崎公演)。シルヴァン・カンブルラン氏×ハンブルク響ショック & Ec「英雄ポロネーズ」の大歓喜(2023.7.14@浜松公演)。

本日は7月23日。
いや日付変わったところでもう24日なので、韓国公演のある日ですね。
なんて忙しい方なのだろう、角野隼斗さんは。あんなに細身なのに倒れない所が本当に凄いと思う。
23日群馬はだるまの名産地・高崎から、次の日24日にはお隣韓国で、“Reimagine”ツアーで弾いたあのとんでもない分量の、体力気力精神力が満ちてないときついプログラムをおひとりで弾ききってくるというのですから……。
タフすぎて最高にカッコ良すぎるけど、お身体だけは本当にどうかお気を付けて欲しいです。
自分の元気玉を分けて差し上げても全然いいので(私の元気玉弱そうですがそこはかき集めて量で(笑))、どうか角野さんに元気を分けてあげてくれーっ、と悟空のテンションで心底そう思います。

★★★★★★★★★


前置き長くなりましたが。

本日の「バルトーク ピアノ協奏曲三番」。高崎まで聴きに行ってまいりました。このマエストロ、オケ、楽曲の組み合わせで聴くのは14日の浜松公演が1回めで、今回が2回目でした。
2回目だから私はどう感じるのかと思っていたのですが、……。

ヤバイヤバイヤバイ。。。本当にやばかったです。角野隼斗さんの「バルトーク3番」が最高でした。
もうなにこれ!という感じでいまだに信じられないです。
終わった瞬間から息吸えない位ドキドキして、いまもドキドキが残って心臓のなかで存在感を訴えていて息が吸いづらい。
大げさでなく今日の角野隼斗さんの演奏で、バルトーク3番のことが初めて解った気がします。体が震えるほどめっちゃ感動しました。


今までたくさん予習したけど、この曲のことよく解ってなかった。
今日の角野隼斗さんが弾いて下さったバルトーク3番は、わたしにとっては最初から全然違った景色が見えて。
第一楽章から、音が駆け回り、めくるめく新しい音楽の世界の扉をノックしてはつぎつぎ開いていくような、圧倒的ワクワクとドキドキに満ちた演奏だった! 面白くてワクワクして、ピアノがスリリングで、なんて刺激的で冒険的なんだろうって。
一緒に新しい地平へと旅をするような第一楽章。こんな曲だったんだ。改めて見える景色に感動。風が吹いて、自然の息吹が見える感じ。

第二楽章は、今まで祈りや純粋な美しさに満ちているという風に感じていたけど、それだけでなくて、憂いを含み静かに人生を内省するような、そんな音楽でもあるのかなと初めて解った。
編まれて織られて、音が折り重なる布になっていくような、無調な感じ?の左右の音の美が素晴らしかった。
晩年病状が悪化する中、妻のためにこの協奏曲を病床で書いたという背景を知って、自分の死後もどうか愛する人が幸せである事を祈るようなバルトークの想いが伝わるようでした。
(角野さんの想いと違ってたらすみません…)

第三楽章は、大迫力!!!
バルトークの圧倒的に自由で歓喜や諧謔というのかな? 遊び心に満ちた新しい地平を力強く切り開いていく感じに溢れて、今の角野隼斗さんに最高にマッチする!
こんなにバルトーク3番でドキドキするとは。いまだにドキドキが止まらず、動悸かと自分の健康を心配する位に心臓が早鐘を打って心奪われて夢心地が止まらない。
ファンタジーの中のようでもあり、縦横無尽に走り回り自由に駆け回る、鍵盤の上の手が生み出す音が奇跡すぎて参る。
今鳴ってる音にめちゃくちゃにドキドキするのに、次の瞬間の音にさらにそのドキドキを更新されるというのが、ずっとずっと続いていく。
これを奇跡と言わずして何をもって奇跡というのだろうか。
凄まじく魅力的なバルトーク3番。
もうやばい。やばすぎて言語化できないくらい格好よかった!!!!

今日の角野隼斗さんのピアノは、オケよりも、圧倒的に大きな存在感でもって、この曲はこういう風に弾くんだ、という強い意志と自由に溢れていた。ピアノが凄くすごく印象的に前に出ていた。
角野さんのこんなに自由に駆け回り、時には静謐に祈り、圧倒的にめくるめく美しい演奏で、バルトークさんがどんな美をこの曲に込めたのか、凄くすごく解った気がした。

角野さんが最高に魅力的にこの曲を弾いてくれたから、初めてわたしは、バルトークさんのこの曲の「従来のクラシックの王道からは逸れているけど、それでいて歓喜に満ちて、不可思議な音の響きなのになぜか希望に力強く溢れている」という斬新な素敵さを知って、心の奥深くから感動した。
今私が感じている解釈は、もしかしたら素人のただの誤解かもしれないけど、少なくともこの高崎公演の演奏で、私はバルトークピアノ協奏曲3番という曲がめちゃくちゃ好きになりました。


角野さんのピアノがこの曲の素敵さを教えてくれた。
今日、角野さんがこんなふうに高崎で弾いてくださらなければ、たぶんバルトーク3番でこんなに人生で感動できなかったと思う。
ほんとうにありがたいと思う。

「バルトーク ピアノ協奏曲3番」、めちゃくちゃ素敵な曲だなと今はお気に入りになった。
こうして自分のなかの宝物が誰かのおかげで増えていくのも、物凄く素敵なことだと思う。有り難いです。
こうして宝物になったものが、行き詰まった時、生きる事にしんどくなった時、きっと必ず私を救ってくれる事があると思う。
そんな気がする、バルトーク3番との素晴らしい出逢いでした。
角野隼斗さん、本当にありがとうございました!!!



そして、アンコールのカプースチン。
もうブラボーすぎて。。。
「間奏曲」は、大阪シンフォニーホールで聴いた時とまた違って、それがまた最高で!!!
ライブ感があって、前回と受ける印象違った。でも、ライブってそういうものだよね、と納得する。きっと「最高の演奏」という定形の完成形なんていうものは音楽にはなくて。
今その時にしか鳴っている音楽はなくて、その二度と無い今の時間の中で、人生の中で私が今生きていて、たまたまこの場所でこのオーディエンスとこのオケで、今の角野隼斗さんが奏でている。
音楽には、「今この瞬間」に鳴っている音しか、きっとなくて。それが音楽の素晴らしさだと思う。
金太郎飴みたいに判で押したような正解の演奏を同じようにするのが良いとは、私は絶対に思わない。
だから、大阪のときの感動も本物だし、今日高崎で聴いた間奏曲も、最高に最高だった。ほんとかてぃんさんのカプースチンがめちゃくちゃ好きだ。

もう絶対に角野隼斗さんにはカプースチンの8つのエチュードを演奏して音源化してほしい。いつも聴きたいと聴くたびに思う。
ライブ(コンサート)で弾くたび全然違っていていいから、その時の気分でアレンジやテンポやグルーヴ感が違っていていいから、とにかく角野隼斗版のカプースチン8つの演奏会用エチュードのCD(音源)が1枚欲しい!
(なんて強欲な欲求を、多忙すぎるお方にぶつけるんだ。図々しい笑)

「フィナーレ」はもう超速で光の速さだった事に驚きだけど、さらに驚いたのはそれでもめっちゃくちゃ格好良かったこと!!
人間はあんなに早くしかも緻密に一音一音聴こえる精度で鍵盤を抑えることができるのですね。(たぶん尺の関係とかもあって、短くやらないといけないというのがあったのではないかと推察するのですが、それでも圧倒的で異常に格好良すぎてびっくりした)
本当に、凄すぎて度肝抜かれるどころか、魂持ってかれました。
いやもう、凄すぎた。
最後の最後まで走り抜けたかてぃんさん、恰好良すぎた!!!



今日の高崎公演のまとめ。正直、角野隼斗さんのピアノのほうが圧倒的で、もうそこしかあまり覚えてないくらい。
本について、以前光浦靖子さんが仰っていたのですが、「あまりに本に夢中になりすぎると、本にのめり込みすぎて、本の表面から奥のほうへ自分の顔や頭がめり込んでいく感じがする」と。
私もまさにそうで、あんまりにもその世界の魅力に引き込まれると、あたかもその中に頭からうずもれていって、引きずり込まれるような感覚・意識になるときがあるのですが。
(映画のネバーエンディングストーリーみたいな感じ。幼い頃からネバーエンディングストーリー大好きなのですが、あんな風に本に引きずり込まれてその世界を今自分が実際に体験しているような感覚になる時がたまにある)
今回は、角野隼斗さんの奏でる「バルトーク3番」が素晴らしすぎて、第一楽章からずっと、私はピアノに引きずり込まれていました。
具体的には、グランドピアノの蓋が開いている所に顔から頭ごと吸い込まれて、ハンマーが弦を打つ最前線で聴いているような感じで(想像すると相当シュールな絵面、笑)、臨場感が凄まじすぎて、めちゃくちゃドキドキな体験でした。それくらい夢中になれるほど、素晴らしかった。。。

今日の高崎公演の角野隼斗さんは、いつも格好良いけどさらに異常なほど本当に心底惚れるほど格好良かった!!!
ありがとうございました!

★★★★★★★★★


そして、2023.7.14(角野隼斗さんの28歳のお誕生日)、浜松公演。
時系列的には戻ります。すみません。
浜松公演でハンブルク響を聴いた瞬間、私はきっぱりと心変わりしてしまった。オケと言えばN響だった過去の私を思い出せないくらい、浜松公演でのシルヴァン・カンブルランさんが指揮するハンブルク響に、完膚なきまでに魅了されてしまいました。初日だったというのもあるかもしれません。キレッキレで気合十分でめちゃくちゃ大迫力で美しかった。。。

まさにハンブルグ響ショック! 今までいくつかの国内オーケストラの生演奏を体験してきましたが、薄々いや大分確信をもって気づいていたけど、生で聴くとこんなにも美しく生き生きとしたクラシック音楽を奏でるオーケストラが世界にはあるのですね。うっとり。

もう少し子供が大きくなって、時間とお金に余裕が出てきたら、ヨーロッパやアメリカの有名オケの奏でる音楽を現地で体験したいなと心底思いました。もちろんその時は角野隼斗さんをソリストに迎えて、世界的に有名なオケがツアーを行うとかそういうシチュエーションを思い描いてるのですが、……なんかそのシチュエーションがすぐ叶いそうで怖い。お金と時間の準備のほうが間に合わない可能性が大。
それだけで長生きする意味ができますね。
角野隼斗さんのどこまでも大きくなっていく進化についていくので精一杯!


ハンブルク響は、反射神経のよいオケというか、機動力に優れてるというか、とにかく、シュッシュッて機敏に音を切り替えて、最高の音を鳴らす事ができるイメージのオケで、それだけで圧倒的に音楽に締まりが出て、たっぷりと聴かせる表現のところと、どんどんギアを上げて圧倒的な迫力で次々グイグイと盛り上げていく表現が両方出来て、その魅力をいかんなく発揮していました。
そして各パートの人が統率とか一糸乱れずそろえる、とかじゃなく、もっと雄弁で制約なく自由な感じで、個々人が全力で音楽に向かっていく。そんなところもとても個人的に好ましいです。

クラシックの知識がない癖に個人的好みで恐縮なのですが、私はオーケストラの中でもなぜか木管楽器が大好きです。
今回のプログラムも影響したと思いますが、浜松公演では木管楽器が素晴らしく鳴っていた気がして。音色も温かくて歌ってて……夢心地になるような幸福な演奏でした。(高崎公演では……そうでもなかったような)
そうして、コンマス率いる弦は個性があるのにもう出力全開になったときの機動力も音の圧も最高だし、チェロは本当に手を抜かないでずっと懸命に弾いてるし、オーボエのおじいさんがサンタさんみたいでいいし。。。
と、軽やかに鮮やかに、ハンブルグ響は私のなかの推しオケを塗り替えていきました。(N響さんごめんなさい……。だって素敵だったんですもの!)

いや、実際、塗り替えたのはハンブルグ響ではないのかもしれない。
素人の私でも分かる程、マエストロのシルヴァン・カンブルランさんがオケへと出す指示は明確で、その背後にはこの楽曲をどのような音楽として聴衆へ届けるかという強い想いというかビジョンを感じた。
大胆でドラマティックでありながら、かつ聴かせどころや繊細なニュアンスが大切な場面でのアプローチはすごく丁寧で、それがしっかりオケ全員へと伝わっていて、まるでオケがひとつの大きな有機的な生き物みたいになってる印象すらあった。
今回私が受けたショックもそのマエストロが目指す音楽の世界の、明確で圧倒的な具現化によるものが大きいのではないかと思う。だとすればシルヴァン・カンブルランショック、というべきかもしれない。

今この瞬間ここで鳴っている音楽が一番今を生き生きと生きている。音自体がまるで生の歓びを全身で感じて感情を発散しているような、そんな「生きている音楽」だった。
今この瞬間にも、浜松公演での初めてのチャイコフスキー4番との出逢いを思い出すと胸が高鳴るくらいで、最高に素敵で贅沢な時間でした。


そんな浜松公演で、角野隼斗さんのバルトーク3番はもちろん聴いたのですが、わたしは初めましてのハンブルク響ショックに若干頭をかち割られていたせいか、もの凄く素敵だったはずなのですが、今日の高崎公演のように、ドキドキワクワクが止まらない動悸息切れ状態には陥らず。(たぶん本当にハンブルク響に相当びっくりして度肝を抜かれてたせいだと思う)

なのですが、浜松公演でわたしがめちゃくちゃ覚えているのはアンコール。英雄ポロネーズがこの時初めてわたしの所に降りてきてくださったんです。今まで凄く高みにある感じで、高らかに鳴り響いて、凄く華麗で高貴で華やかで圧倒的で、どうしても手が届かない感じがぬぐえなくて。
ものすごーくバッシングを受けると思うので小声で申し上げたいのですが、わたしはこの曲が、その、どなたが弾かれた場合でも、ちょっとドヤっとしてる感じがあってそれがあまり得意じゃなかったのです……ごめんなさいショパン様。

なのに、浜松公演での角野さんの「英雄ポロネーズ」は、今まで聴いてきたなかで1番大好きで、なんならはじめてこの曲の素晴らしさをひしひしと実感することが出来て本当にほんとうにうれしかった。
どこまでも歓喜に満ちていて、光あふれて、音自体が喜んでいるような、それでいて力強く勇敢に道を切り拓くように前進していく、そんな「英雄ポロネーズ」。
誰かを讃えるとか、勝利に酔うとか、そういう感じが一切なくて、それが凄く心地よかった。こんなに素晴らしい曲だったなんて!!!
こんな風に弾いて下さらなければ、わたしはずっとこっそり、英雄ポロネーズに対して、「素晴らしく印象的な曲だし、めちゃ派手でメロディーもすごく美しいし、圧倒的に魅力的な曲の展開で素晴らしい」と言いつつちょこっとしたわだかまりを抱えてしまっていたと思う。
あぁよかった。わたしもひと並みにこれでこの曲を全力で愛することができるようになった!と思ったら安心したし、そうやって新しい魅力をその演奏で雄弁に伝えてくれた角野隼斗さんに、いつもしっぱなしだけど、またも深く深く感謝した。

★★★★★★★★★


そんなわけで、2023.7.14の記念すべき角野隼斗さん28歳のお誕生日だった浜松公演と、7.23の高崎公演に行ってきたのですが、どちらも得るものがありすぎて、わたしにとっては遠征したけどかけがえない手土産をたくさんもらって帰ってきたみたいな、そんな素晴らしい経験になりました。

そしてあらためて、わたしは心底、角野隼斗さんの自由さや解釈と緻密さや繊細さが絶妙に合わさったその音楽性が大好きで、最高に敬愛してやまない音楽家だと強くつよく実感した、二つの公演でした。

今日の角野さん、本当に最高に格好良かったな。。。(もう昨日だけど)
すっかり時刻も遅いので(午前2:43)、この感動に浸って寝ます。
角野隼斗さん、連日大変ですが、本日の韓国公演、がんばってください!


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