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【小説】君の知らない真実

君は考えたことあるかい?

「サンタって何者なんだ?」って。

そもそも、サンタはみた人が誰もいないにもかかわらず、なぜ同じイメージが共有されているんだろうね。

きっと世界中の誰に聞いても、真っ赤なフカフカの洋服と帽子を身につけて、おひげをたっぷり蓄えた、恰幅の良いお爺さんだって、口を揃えていうよ。

でもさ、考えてみたら当たり前なんだけど、クリスマスイブの夜だけで世界中の全ての子どもたちにプレゼントを渡すなんて、絶対に無理だよな。

もう一つ不思議なのは、絶対どこにでも、サンタなんていないよ、と信じている子がいるってこと。

その子がそんなふうにいう原因は「わかっちゃった」ことにあるみたい。

決まってこういうんだ。

親がプレゼントを置いていたのを見た!

プレゼントがこっそり隠されてた!

サンタなんていないんだと誰かが言ってた!

でもさ…

じゃあ、反対に聞くけれど

それは、ほんとにサンタさんがいないって証明になる?


これまでにたくさんのプレゼントをもらった事実があるのに、たった一つのその出来事で、「わかっちゃった」ってなるの、逆に不思議だと思わない?

まるで、サンタなんていないと思ってほしいかのように!


ぼくはね、この謎に気づいてから、ずっと何故だか考えていた。

そして、この間、とうとう閃いたんだ。

ぼくはサンタの秘密をつかんだと言っていい。

きっと真実を知ってしまった。

何故って、これなら全部説明がつくからね。

いいかい。

サンタは子供を持つ親を操れるんだ。

ぼくは知っている。

人って、信じたいことを信じるんだ。

だから、簡単な暗示をかけるだけでいい。

ぼくらはすでに、サンタのこともしっているし、クリスマスイブにはプレゼントが来るってことも知っている。

これは、暗示にかかり易い状態だってこと。

あとはこういうだけでいい。

君はサンタだ!

そうして、親を集めて子どもたちへのプレゼントを渡すんだよ。

つまり、一度にたくさんの家にプレゼントを届けるために、親をサンタにするんだ!

昔は、もしかすると自分で配っていたかもしれないよ。

でもさ、考えてごらんよ。

今の家に、外から入れるところなんてあるかい?

夜、その姿を見られずに済むような暗がりがあるかい?

ね、わかるだろう。

世の中がそんな風に変わったのなら、サンタだって変わるしかないのさ。

素晴らしい力を持っていたって、それには限界ってものがある。

流石のサンタも、たった一人の力でみんなにプレゼントを贈るには、ちょっとやり方を考える必要があったってこと。

そこで思いついたのが、どこの子供にも必ずいるはずのもの。

親を利用することだったってわけさ。

これはサンタにとって素晴らしいアイディアだったに違いないよ。

だって、ほとんどの家には親がいるだろ。

親を操りさえすれば、家の中だって侵入する必要もない。

だってもともとその人の家だもの。

そういうわけで、サンタはじっくりと時間をかけて、催眠術をかけていくのさ。

「12月24日、あなたはサンタになる。」

ってね。

そうすればほら、その間にサンタは、親のいない身寄りのない子供たちのところへプレゼントを届けにいくこともできるってわけさ。

そうそう、この方法には思ってもみなかった副産物があった。

「サンタは親なんだ!」と勘違いする子供が増えたのさ。

そうすると、これまでサンタに届いていた子供たちのお願いのうちいくつかが、サンタの元に届かなくなった。

当たり前だよね。サンタはいなくて、親がプレゼントをくれたと思い込んじゃってるんだから。

親にプレゼントをお願いするなら、サンタへお願いするわけがないもの。

昔から、子供たちがちょっと大人になってきたら、サンタのことを忘れるようにしなくちゃいけなかった。

だってそうだろう。君たちの周りの大人で、まだサンタからプレゼントをもらっている人はいるかい?

どっちにしろ、ある時期が来るとサンタはいないかもって思わせるようになってたんだ。

それが、この方法を取ることで、ちょっと早まる子が出てきたってわけ。

こうして、サンタのところにはサンタを信じている子どもたちの願いが届き、残りはそれぞれの親がサンタの代わりをしてくれるようになったんだ。

だからさ、昨日見つけちゃったあの包み紙を持ったママが、今日の夜、やってくるのを見つけちゃうかもしれないけれど、それって本当はサンタからのプレゼントなんだって僕は知ってる。

サンタさん、今日も僕のところに来てくれてありがとう。






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