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【2000字小説】【童話】『お空のとびかた』

 りこのほほを、やわらかいかぜがなでていきます。くろねこのロロはひなたでおひるねちゅう、りこのめのまえをもんきちょうがヒラヒラとんでいます。
「いいなあ。りこもそらをとびたいなあ」
「え? そらをとびたい、だって?」
 りこのこえにおどろいたもんきちょうが、りこのまえにやってきました。
「おまえさん、そらをとびたいの?」
「とびたい。ねえどうしたらとべるの?」
 りこはドキドキしながら(だってちょうちょとおはなしするのは、はじめてでしたから)たずねました。
 もんきちょうは しばらくりこのまわりをとびまわり やがてりこのめのまえにきていいました。
「おもうにね、からだが おおきすぎるんだな。ぼくみたいに ちいさいからじゃないととべないさ。じゃあね」
「ちいさく、ねえ」
 りこは からだをまるくし、ちいさくなってみました。でもちょうちょほど ちいさくなるのは むりそうです。
「まあ、おかしなかっこう。いったいなにしてるの?」
 こえのほうをみると こんどは きに すずめがいました。
「すずめさん、ちいさくなるには どうしたらいいの?」
「なぜ ちいさくなりたいの?」
「そらをとびたいの。ちいさくなれば、そらをとべるかもしれないないの」
 すずめは りこをうえからしたまでみて、やがてりこのまえにとんできました。
「おもうにね、ちいさいだけじゃだめ。わたしみたいにちいさくて、はねがないと とべないわ。ではごきげんよう」
「はね、ねえ」
 りこはあたりをみわたして、はねになりそうなものをさがしました。
 すると、ロロがうーんとのびをしたのがみえました。
「ロロ、ロロはからだをちいさくして、はねをはやすほうほうをしってる?」
「なぜそんなへんてこなことをしりたいのさ」
「そらをとびたいの。ちいさくなってはねがあれば、それをとべるかもしれないの」
「なんだって! なんておもしろそうなんだ!」
 ロロはりことおなじく、おもしろそうなことがだいすきなのです。
「やってみよう」
「ロロ、できるの?」
「できるさ。くろねこはまじょのてしただぞ。しゅうちゅうしてるあいだだけ、ちょっぴりまほうがつかえるんだ。さ、ぼくのはなをさわって」
 りこがロロのはなをさわると、ロロはうにゃうにゃとうなりました。するとロロとりこはポンっとちいさくなり、はねがはえたではありませんか。でもたいへん。きゅうにちいさくなったので、りこはまっさかさまにおちていきます。
「りこちゃん、せなかにちからをいれて、はねをうごかして!」
 じょうずにはねをつかってとぶロロをみて、りこもひっしでせなかにちからをいれました。すると、はねがうごきました! 
 りこはロロといっしょにポカポカようきのなかをとびまわりました。チューリップのなかにはいったり、まいちるさくらのはなびらをあつめたり。そらをとぶのってなんてたのしいんでしょう。
「りこ、ごはんよ。ロロもおやつのにぼしがあるわよ」
 きゅうにママのこえがして、ロロのみみがぴくっとうごきました。
「にぼし! たべる!」
 あっというまロロのあたまはにぼしでいっぱいになりました。いっしゅんでロロのからだはもとにもどり、はねもきえました。ロロはねこですから、たかいところからじめんにちゃくちできます。でもにんげんのりこは……。
「わあ!」
 きゅうにもとにもどったりこは、しばふにせなかをうちました。
「りこ、おはなのちかくででんぐりがえししちゃだめよ!」
「だってロロが」
「ロロのせいにしないの!」
 ママにしかられたりこは、もうロロとなんかあそんでやんない、とおもいました。でも、すぐにロロをゆるしました。なぜって、みみをひらたくしたロロが、りこにのこりひとつのにぼしをさしだしたからです。
「いいよ、ゆるしてあげる。そのかわり、またいっしょにそらをとぼうね」
 ロロはめをぱちくりして、みゃっとへんじをして、うれしそうににぼしをたべました。

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