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【試し読み版 1/3】 社会人のための楽器の継続と上達の手引き - はじめに:本書が目指すもの

このページは書籍「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」の試し読み版(全3ページ)で、1ページ目「はじめに:本書が目指すもの」の章です。

本書の正式版はペーパーバック版およびKindle版が発売中です。書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご参照ください。

ペーパーバック版の表紙イメージ

執筆者と目的

このような人が書きました

本書「社会人のための楽器の継続と上達の手引き」を手に取っていただき、ありがとうございます。

筆者はコンサーティーナというややマイナーなアコーディオン系の楽器の演奏者で、アイルランドの伝統音楽を演奏する活動をしています。セッションと呼ばれる、アイリッシュパブやカフェなどで行われる演奏の集まりに定期的に顔を出しており、ソロや友人とのユニットなどで小規模なライブを行うこともあります。

最初にお断りしておきますと、この本の筆者である私は、プロのミュージシャンや専業の音楽講師などではありません。ただ、人が何かに打ち込むときに、普通の意味での「趣味」と区別されるひとつのラインがあって、それは「人から報酬(ギャラ)を頂く立場になる」ということです。居心地のよい座席に座って、人から用意されたものを受け取る立場から、ステージの上に立って、自分の手で生み出したものを人に送り届ける立場になるということですね。私はアマチュア演奏者ながら、早くから人前に立つ経験を積み重ねており、いわゆるギャラの発生する演奏も経験しています。

また、私はプログラミングを行えるエンジニアで、ネット上でインディーゲーム制作者として長く活動してきた経験があり、さらには自分の考えを書籍やネット上の記事として発表しているライター(著述家)でもあります。つまり「自分の手で何かを表現する」という経験を複数の分野で持っており、その上で特に「考えて、書いて、伝える」ということを専門にしている人間だということです。そして、これらは誰かに習ったというわけではなく、独学で身につけたスキルがほとんどです。

このような点から、プロのミュージシャンではない私が楽器の上達や楽しみについてのノウハウを書くことで、みなさんのお役に立てることはあると考えています。

こんな人に向けて書かれています

本書のスタンスは、楽器の演奏は何よりも「楽しむ」ためにあるものだということです。そして「楽しみたい」という気持ちが本気になると、必然的に「もっと上達したい」「人と一緒に演奏したい、人前で何かをやってみたい」という感覚が起こってきます。その気持ちを後押しするための言葉と、役に立つ実践的な知識と考え方を提供することが、本書の主な目的です。

本書が想定している読者は、趣味として音楽活動を楽しみたいと考えている社会人です。憧れていたピアノに大人になってから挑戦したい、仲間たちとバンドを始めてみたいといった人たちですね。小学校入学にも満たない頃からピアノやバイオリンを習っていて、音大を経由してプロを目指すといった人たちは、多少のヒントを提供できる可能性はあるとはいえ、本書の主要なターゲットからは外れています。そうした例外的な環境や才能に恵まれていなくても、演奏者として音楽を楽しむということはできるというのが私の考えです。

ただ、趣味といっても、週末のちょっとした息抜きにするといったレベルだけを想定しているわけではありません。ちゃんと上達して、人前で発表会やライブをしたり、楽器こそが自分の生きがいだと感じられるような、そんな「高いところ」に行けることを応援したいと思っています。

本書では、対象の音楽ジャンルや楽器の種類を限定していません。ロックバンドをやりたい場合でも、クラシックのピアノを始める場合でも、私のようにマイナーな民族音楽をやる場合でも、同じように役に立つはずです。必然的に、テクニックに関する細かいアドバイスよりも、音楽表現の中で意識すべき重要なポイントや、壁にぶつかったときの対処法、どうすれば日常の中で楽しく練習を続けていくことができるかといった話がメインになります。

本書で考えていきたいこと

このような疑問に答えるつもりです

本書で考えていきたいトピックは、以下のようなものです。

  • 仕事や家庭に忙しい普通の社会人が、楽器を続けることができるだろうか

  • 練習しなければ上達しないが、その練習をどうすれば楽しくしていけるのか

  • どの楽器でも応用できるような、効率的な上達のヒントはあるだろうか

  • レッスンを受けるというのはどうしても必要なのだろうか。そこから得られるものは何だろう

  • 誰もが才能に恵まれているとは限らないが、その事実にどうやって向き合えばよいか

  • ライブや発表会のように人前で演奏するときには、どういった心構えを持てばいいだろうか

  • 上達に伸び悩んだり、モチベーションが落ちたときにはどう対処したらいいのだろうか

これらのトピックについては、章ごとに「練習の継続方法」や「モチベーションとの向き合い方」といった個別のテーマとして分けて、ひとつひとつ丁寧に考えていきたいと思います。

本当の目的はこちらかもしれない

さて、本書にはもうひとつ、重要なテーマがあります。それは、人生の中に生きがいをつくり、あなたの周りに温かい人間関係を築いていくということです。実際に、私が自分の人生の中で真剣に打ち込みたいという対象を見つけて、たくさんの大切な人間関係に恵まれたのは、楽器を演奏するという活動においてでした。

趣味というものは、単なる気晴らしや暇つぶしではなく、自分が生きている意味ということと密接に関わってくることがあります。これは何も大げさに言いたいわけではありません。私の周りには、平日の昼間は普通に会社員として働きつつも、生活全体がほとんど音楽を中心に回っているという人がたくさんいます。人が社会の中で生きるということは、決して楽なことばかりではないはずですが、私が出会ってきたこのような人たちは、自分の日々の生活を心から楽しんでいるように見えます。こうした大人があなたの周りにどれだけいるでしょうか。

繰り返しになりますが、このような幸せを得るためには、特別に恵まれた環境や才能といったものは必要ありません。根気と工夫次第で、あなたにも得られるはずです。楽器の上達方法についてお伝えするというのが本書の表向きのテーマですが、もっとその先の目標があるとしたら、それはあなたの人生を豊かで幸せなものとすることです。

本書の構成

この「はじめに」の章では、本書がどういった人たちに向けて書かれていて、どのようなテーマを扱う本なのかということを述べました。

ここで、本書の全体像を見ておきたいと思います。本書は、以下の全十一章で構成されています。各章のタイトルと、そこで考えていきたいと思っている内容について、箇条書きにしています。

  • はじめに:本書が目指すもの …… この章。本書の目的と、どういう読者に向けて書かれているか

  • 第一章:最初に考えること …… 演奏の楽しさと、必ず発生する大変さの認識。夢と目標の大切さについて

  • 第二章:練習をどう続けるか …… 習慣化の具体的な方法と、日々に変化を与えるアイデア

  • 第三章:テクニックの話 …… さまざまな楽器とジャンルの間で共通する、上達のための重要なポイント

  • 第四章:レッスンの必要性を考える …… レッスンでは何が得られるのか、よい活用方法はあるか

  • 第五章:人前で演奏すること …… ライブや発表会が上達に与える大きな効能と、人前に立つときの心がけ

  • 第六章:視界を広げる、自分の軸を持つ …… 主体性をしっかり持ちながら、先人の知恵と成果を吸収していくこと

  • 第七章:人間関係から得られるもの …… もしかしたら最大の価値があるかもしれないものの存在と、その広げ方

  • 第八章:モチベーションが落ちたときには …… 夢を手放してしまわないために。人の心の仕組みを理解し、対処する方法

  • 第九章:ヒントと寄り道 …… 本書の根拠となっている、筆者自身のいくつかの体験の共有

  • おわりに:あなたに伝えたかったこと …… 本書全体のおさらいと結び

章の一覧は以上です。主要な章としては、第二章の練習の継続、第三章のテクニックの話題、第八章のモチベーションを考える章の3つがあり、残りの章がその他の重要なポイントを補完する形となっています。

この本のスタンスは、楽器に取り組むということが大変であるということを認識しながら、それをできる限り楽しいものにしていこうという点にあります。ですので、本書を読んでいただくこと自体も楽しんでいただけたら、筆者としては嬉しく思います。

それでは、楽器の演奏を楽しみながら、それでいてしっかりと上達していくにはどうにしたらいいかということについて、一緒に考えていきましょう。

【次の章へ】第一章:最初に考えること

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