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テキストカラテ

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ニンジャスレイヤー の二次創作
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#小説

【タイム・ウェン・ザ・シグナルファイア・ライゼス】 ④

「アイエエエエ!」

悲鳴を上げながら走る若い女あり。ラフな装いをした黒髪の女は涙で顔をくしゃくしゃにしながら必死で駆けていた。彼女の名はリンセ・イノハラ。人生の常識外から突如襲い来たニンジャへの恐怖に支配されたリンセはただただ走る。

「ハァーッ、ハァーッ……ンアーッ!」

途中、足がもつれ転倒した。電撃的な速度で背後へ顔を向ける。追いかけるものはいない。膝よ笑うなと己を奮い立たせ、

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【タイム・ウェン・ザ・シグナルファイア・ライゼス 】③

ナカダミ・ストリートのアスファルトをドクロめいた月が照らす。日が落ちて間もない頃。繁華街の外れ、化粧を落としたオイランめいた寂寥たる暗がりを一人の男がトボトボと歩いていた。彼の名はトミタ。クルダの一味である。

まったくこの頃はツイていない。バイクはマッポからの逃走の最中、事故で派手に吹き飛んだし、サケに酔って路上で寝ている間に財布が盗まれた。スロットでは大負けした。極め付けは先日のカナリタノシサ

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【タイム・ウェン・ザ・シグナルファイア・ライゼス】 ②

『刻む音楽』『固さ!』『ネコネコカワイイも』。CDショップ〈極地の音〉の軒先でバチバチと明滅する電子看板の光は然程強く感じられない。不似合いな太陽の光によって。珍しく今日の空は晴れ上がっている。数時間もすれば工業地帯から噴き上がる排煙によって再び空は薄汚れてしまうことだろう。
この束の間の晴れ空の下、一人の女が〈極地の音〉へ足を運んでいた。ユーリ・マキシモだ。彼女がつけているヘッドホンからは重々し

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【タイム・ウェン・ザ・シグナルファイア・ライゼス】 ①

ブブーンブンブン……低く重たい陰鬱な電子のベースラインが流れる店内。ここは『カナリタノシ』。ナカダミ・ストリートに位置する娯楽施設だ。利用客はサボタージュ・ヤンクやヨタモノ、ドラッグの売人……アナーキーの箱詰めである。
その隅に位置するアーケードゲーム・コーナー。筐体の前でイビキをかく浮浪者や、独り言を呟くギークがポツポツと居るだけの客入りの少ないコーナーだ。
ゴタゴタと並ぶ筐体の一つ、〈アクショ

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