【掌編】ベロニカでは届かない
書く時間がもどかしい。思いながらも、僕はペンを走らせる。
初めて参加した即売会は、その界隈では有名なイベントだったらしい。ウェブで存在を知り、何の気なしに出店してみた僕は、当日になりようやくその規模の大きさを実感した。
端から端まで歩くだけで息切れしそうなほどに、広い会場。そこに所狭しと長机が並び、四桁に及ぶクリエイターがブースを構える。ただ薄い布を敷き、本を平積みしただけの自分とは異なり、棚を使ったディスプレイ、華やかなポップ類で集客を試みる周囲からは、この情報過多な空