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白鉛筆
2021年5月4日 15:03
シノノメの肉声、《オーダー》の力を使って、あの女子高生から十万円を巻き上げる。それが私に提示された、最後の条件だった。「あの、どうして」視界の端、文庫本に夢中になっている少女を捉えながら、私は訊ねる。「どうして、って?」「十万円なら、私、自分で払えます」「まぁ、そうだろうね」「わざわざあの子から巻き上げなくても……」「駄目だよ。僕が欲しいのは、あの子からせしめた十万円だ。それ
2021年5月3日 14:19
「便宜上、ここでは僕の力のことを《オーダー》と呼ぶね」つまんだポテトをマスクの中に運び、シノノメは言った。食べるときぐらいマスクを外せばいいものを、まるで自分の口を何人にも見せてはならない、という制約があるかのようだ。約束通り、ダブルチーズバーガー、ポテトとバニラシェイクのM、そして直前に依頼されたナゲットを載せたトレイが、シノノメの前。対して私は、ホットコーヒーを裸のまま置いて、それに向
2021年5月2日 17:02
「君は一銭も支払わなくていい。代わりに、あの高校生から十万円巻き上げること」シノノメはそう言って、目線を斜め前、私にとっては斜め後ろのテーブルへと向けた。それとなく振り返ると、二人がけの席の一つに腰掛けた、制服姿の女学生が見える。長い黒髪にメガネをかけ、手にした文庫本に吸い寄せられるように目を向けていた。いかにも”文学少女”といった装いで、真面目で清楚な雰囲気は、およそこの大衆的なファース