読書備忘録2019

 2019年あんまり本読めなかった年だったなと振り返りつつ、備忘録的に印象に残った本と簡単な感想をいくつか残しておこうと思う。
 

1.レクイエム

 イタリアの作家タブッキ がポルトガル語で執筆したものを邦訳で読むという不思議な読書体験。この本を開いている間続く、目を覚ましたまま夢を見るような心地よい時間の余韻にいつまでも浸っていたくなる。


2.自分ひとりの部屋

 フェミニズム批評の古典的作品。おそらく現代においても刊行当時と同等、もしくはそれ以上の必然性をもっていると感じた。文学論、フェミニズム論として何度も読み、考え続けたい。


3.万延元年のフットボール

 言わずもしれた大江の長編。読了後は物語にぶん殴られたような衝撃で圧倒された……。ちゃんと咀嚼・消化できるように再読したい。


4.夜戦と永遠(上・下)


 フーコー・ラカン・ルジャンドルをつなぐ論考。概念の困難さが先行するが、それでも簡潔な論理の流れで理解しやすく、換喩と隠喩を用いた美しい文体に魅了される。ここから勉強し始めたい。


5.すべて真夜中の恋人たち

 感動ものではないのに、気づけば静かに涙が溢れていた。切なく、儚い純粋な想いの前で駆け引きなんてできやしない。恋の痛みも悦びもすべて真夜中の光は受け止めてくれる……。


6.大江健三郎自選短篇

 大江の本、2冊目。初期の短編は完成度高くて、20代で書いたのが信じられないし、レインツリーの連作は「これこそフィクション」となれる。勉強にもなるし、純粋に濃密な読書体験を楽しむこともできる良質な短篇集。


7.黄泥街

 中国の作家・残雪の第一長編。不条理文学、幻想文学と簡単にカテゴライズしていいはずはないが、実在/架空、現実/空想の境目はページを捲るに連れて薄れていく。わかるわからないよりも前に(わからないのだが)「すごい」としか言いようのない傑作だと思う。復刊してくれた白水社に深く感謝している。


8.でも、ふりかえれば甘ったるく

 2019年の読了1冊目だった本。様々なバックボーンを持つ女性9人のエッセイ集。沈んで、もがいて「今」を生きる幸せとは……。週末、温かいコーヒーとともに読みたい一冊。


9.ものするひと(1-3)

 最後は漫画を。純文学作家の「普通」(あくまで括弧付きの普通)の日常。ストーリー的な大きな起伏があるわけではなく終始静かに進んでいくがそれがいい。「ものする」人、僕もそうありたいものだ。


 読書メーターを見返すと今年出版された本が全くなくて驚いた(本屋はよく物色しに行くので新刊はチェックしてるし、積ん読にはあるから優先して読むほど食指の動くものと残念ながら出会えなかったのかもしれない)。
 今年も読めた冊数は少なかったがおもしろい本にたくさん出会えて幸せだった。来年ものんびり読んで書いてぼんやりと生きていこうと思う。”いい本”に出会えますように。

#読書 #本 #文学 #日本文学 #海外文学  

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