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【散文】一日の端っこの話

 

取り留めがないのでサーッと読んじゃって下さい。




 二週間ほど前、背中の辺りで常に回っていたネジの動きが遅くなって、ついには止まってしまった。年に数回は起こる不具合が、今回は長引いている。
 ちなみにさっき夕寝から覚めたばっかりで(絶対にしてはダメ的な記事をいつか見かけたが、疲れに逆らえるわけがない)、身体にごみが溜まっているような感覚だ。出来れば二度寝したい。

「一ヶ月、療養のため休ませて頂きたいのですが」

 バイト先の店長にそう言ったのは、食事の量が減り過ぎて点滴をぶち込むことになった数日後だった。あまりにあっけなく了解を得て、怖がっていた自分が馬鹿みたいに思えた。

 不思議とその日のバイトは、眩暈も不安も、希死念慮も、焼き切れるような焦燥感も手加減してくれて、何とか乗り切ることができた。
  急に食欲が湧くことはなかったが、多少は喉を通った。
 そしてたった今原稿用紙の上に抜け毛が一本落ちてきた(目が疲れるので、下書きはいつも紙に書いてます)。俺は将来ハゲてしまうのだろうか(21)、もしハゲ始めたらスキンヘッドにして、しっかり保湿してやるつもりである。
 また一本抜けた。

 話を戻す。
 その日も夜はいつも通りやってきた。
 夜というのはやっぱりすごいぞ。
 やつは明るいものを一瞬でかっぱらっていくのに、取り返すのに途方もない時間がかかる。結局取り返せずに、明るいもの盗難届を朝に提出してみるものの、治安がすこぶる悪いので一向に返ってこないこともしばしば。

 そんな性格の悪い夜を無視してやるために、疲れなど気にしないでギターを弾き、回らない頭でくそみたいな構想を練り、小説を読んで24時を待つ。
 カーテンを開けて(星が見える+朝日で起きれるように)、部屋の照明を消し、ベッドに横たわる。

 同じ曲を小さな音でリピートで流して、1時間ほど過ぎた頃眠りに就く。
 気味の悪い夢から逃げて目を覚ますと、3時46分だった。途中下車せずにもちろん二度寝して、終点は5時45分だった。少し泣いた。

 そんな夜がしばらく続いた。

 音楽、食事、読書、書き物、立つこと、息をすること。
 色んなものがどんどん詰まんなくなってきた。
 すると「あー俺今まで意外と幸せだったんだなー」なんて思ったりして、少し嬉しくなった。

 激しい憂鬱に改めて気づかされることもある。
 日に当たる・快眠・ご飯が美味しいと感じられる、これ即ち至高なり!!
 「よく寝て、うまいもん食べな」というアドバイスをなめ腐っていたが、
これらが欠けるとやってられない。ほんと。
 音楽という麻薬の素晴らしさ、小説を一晩で読む気力と体力とか。
 無くしてしまった今、その有難さを噛みしめている。
(噛み噛みって書き過ぎて梅昆布食べたくなってきた。どうしよう、誰のせいにしよう。どうやっても俺のせいになってしまう。助けてくれ)
 
 そんなことを考えているくせして、自分の命の有難さはなかなか噛みしめられない。とんだ矛盾だ。
 他人のそれは噛みしめられるのに、自分の事となるとどうしても蔑ろにしてしまう節がある。医者の不養生の仲間みたいな、そんな感じ。

 躁鬱なんかに負けて、「ま、いっか!」で済むようなことにいちいち傷ついてしまう弱い自分に、負い目を感じずにはいられない。
 それでも、縋れる何かを、貧弱な腕を振り回しながら掻き集めている無様な自分の姿を、誇りに思いたい。

例え「人間、結局死ぬんだから今急いで逝かなくても」に共感していても、終わらせたい時っていうのは、容赦なく寝首を搔かんとする。それは理性をも飛ばしかねない。
 その時、無意識に踏みとどまるような。踏みとどまらせてくれる何かを築くことを、とりあえず、今の生きる理由にしようと思う。
 明日も息をしていることを願って。
 おやすみなさい。


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