静岡県出身者が語る、災害の時に考えて欲しいこと。そして災害の後にして欲しいこと。

◇ はじめに

僕は1980年前後に静岡県浜松市に生まれた。

静岡県といえば、東海地震(今で言う南海トラフ地震の一部)がいつ来てもおかしくない、と50年近く(僕に分別が付いた頃でも20年クラス)に渡って言われており
日常的に防災や災害時、災害後の行動について話し合うという、災害意識超高い系の県民である。

災害に対してよく訓練された精鋭揃いの県民、と言っても過言ではないと確信している。

特に僕が生まれ育った地域では、大雨による水害も多かったらしく、災害に関する話は子供の頃から自然と耳に入ってきていた。
また、戦争で空襲を体験した祖父母の世代の知恵というのも、あっただろう。

そんな対災害エリート集団で生まれ育った男なので、学校や家庭で良く話し合って練られた行動規範がある。
それを公開することが、今後の災害時の対応に役に立つのではないか?と考え、書き連ねてみることにした。

以下の5区分に分けて書いていく。
・普段から災害に備えてすること
・災害時の行動(被災者として)
・災害時の行動(被災してない者として)
・災害後の行動
・災害からすごーく後の行動

また、主に地震に寄って引き起こされる
・火災
・津波
・建物倒壊
・停電
・水道ガス等電気以外の生活インフラの切断
・通信切断

を想定した内容で書いている。
他の自然災害にも応用できる部分が多いだろうが、そのまま使えるわけではない、という部分に注意して頂きたい。

特に、雪が関する災害は、別格であると感じている。
そして、それに関する知見は、僕自身に全く無い。


◇ 普段から災害に備えてすること

まずは当たり前の事を言おう。

各官公庁から、災害時の備えについてのドキュメントが公開されている。
これを読んで備えるべきだ。

 首相官邸:
 警視庁:
 消防庁:
 気象庁: 
 静岡県:
 東京都:

ここから先では、上記内容が大体できている人向けの、もう少し突っ込んだ話をしていく。

 備え1. 第二避難場所、第三避難場所を確認しておく

我が家では「第一避難先:自宅付近の月極駐車場」「第二避難先:小学校」だった。

第一避難先が駐車場だった理由は
・アスファルトで舗装されている
・7人乗りの自家用車がある
・周りに高い建物が無く敷地も広い(キャンプできるレベル)
・自宅から徒歩5分以内と近い

正直、第一避難先が強すぎる&第二避難先も超強い!だったのでこれ以上何もなかった。

津波を伴わない浸水なら、2階建て家屋だった我が家の2階部へ逃げるだけで事足りる。
津波なら10分あれば小学校の校舎まで逃げられる。もう何も怖くない!!

避難先を複数決めておく理由
1)災害に応じて避難先の対応能力が変わる
    (津波や浸水、地震火災で要件は変わる)
2)移動経路が破壊される可能性(橋は特に注意!)
3)避難場所が使えない事態を想定

避難先に求められる条件
1)建物倒壊の危険がない場所
2)火災に巻き込まれる危険がない広い場所
3)津波・水害から逃げられる高い(海抜)場所
4)公的機関からの情報が届きやすい場所(孤立しにくい場所)

※番号は優先順位ではない
※ひとつで全部対応できる避難場所はありえない


余談だが、今住んでる所を、上記条件に当てはめてみたら、適切な避難場所が無さ過ぎてワロタ状態になった。
道路の上の橋渡らなきゃだったり、川の近く通らなきゃだったり、住宅密集地だったり…

備え2. 連絡方法、集合方法を決めておく

災害時の連絡方法は、とても大事だ。

災害時は、基本的に通信手段が混乱する。
通信インフラの寸断、停電による基地局の停止、通信量増大による回線のパンクetc...
日常的に使用している通信方法は、災害時に使えなくなるかもしれない。

例えば
・災害伝言ダイヤル(171)や各社の類似サービスの活用
        ※事前に使用するサービスを決めておく
・自宅の一般回線を停電時でも通話可能なものにする
・安否確認は災害発生○日後以降、と決める
・避難時は、自宅にメッセージを残しておく事を事前に確認する 
        ※室内の書き置きではなく、野外の看板が好ましい
・安否情報を共有する隣保の確認 ※普段からのお付き合い、マジ大事!
・付近にいる場合の集合場所を決めておく(避難場所と同じ)

絶対にしてはいけないのが、遠距離からの合流手段を検討することである。


我が家の例であれば、僕が東京に出たとき「非常時の安否確認の電話はしない」と取り決めをした。
【非常時は、本当に必要な人に回線を空ける為、落ち着いたら、被災側から連絡をする】というルールを決めたのだ。

連絡が来るまでの間、被災していない家族は、被災した家族の無事を信じ、その後の安全を祈る。
辛い時間だが、離れてクラス家族を心配して無策で被災地へ飛び込んでも、被災者が一人増えるだけである。
家族に悲しい出来事が起きていたとして、その瞬間に間に合う保証はない。
被災地が落ち着いた、少なくとも流通が滞りなく行われる様になった時点で顔を合わせて、偲べば良い。

連絡方法も優先度をつけて「災害伝言板>自宅前に立て札>隣保へ共有」等、複数決めておくと良い。

備え3. お役立ちアイテム

これは、実際に備えているもので、あまり備えるようには言われないものをピックアップしてみた。

[備え3-1. 折り畳みショベル]

普段雪が降らない地域に雪が降った場合にも、とても活躍する。
スコップでもショベルでもシャベルでもどれでも一緒。
ただし、しっかり足を掛けて力を入れられるものが良い。
車を持っている人なら、非常用セットの脇に入れておいて損はないレベル。

個人的には、ピッケルにもなるヤツがオススメ。

[備え3-2. アルミ防寒シート]

最近では100均でも見かける防災グッズ。
冬場の防寒グッズとしてとても有効。
夏場でも、少し工夫すれば日差しを避けるアイテムとして使える。

使い捨てだが、手軽に入手できるので、試しに使ってみると良い。

[備え3-3. ケミカルライトブレスレット(光る腕輪)]

夜間、子供用の目印としてとても有用だと考えている。

・子供の動きは予測できない
・子供は一箇所に留まっておけない
・子供に物を持たせ続けるのは難しい

子供に対しては、身につけることができて長時間発光するケミカルライトブレスレットは、とても有用ではなかろうか。
それに、光る腕輪を身につけることで、ちょっとした非日常感が楽しさに変わり、ストレス軽減にもなるだろう。

残念ながら、これが有効になる状況に遭ったことがない。
登山等でケミカルライトをリュックに下げるのが有用だという話を元に考えたのだが…

備え4. オール電化、太陽光発電等は注意が必要

家計にお得と言われた「オール電化+家庭用ソーラーパネル」
もしくは「ガス発電型設備を備えた住宅」

東日本大震災で顕になったのは、これらの設備が災害にとても弱かったことだ。

例えばエコキュートのQ&Aにはこういう記述がある

水害などによる冠水・浸水した製品は絶対にそのままでは使用(通電)しないでください。
万一、水害などにより製品が冠水・浸水してしまった場合は、一見、乾燥しているようでも、内部が乾燥していなかったり、泥や塩分が残っていると漏電の可能性があり、大変危険で、発煙、発火のおそれがあります。
製品が一時的に 使用可能な状態であっても、絶対にそのままでは使用(通電)せず、必ず点検・修理を受けてください。漏電の危険が高いので、できるだけ買い替えをおすすめします。
エコキュート 水害時/停電時/断水時のQ&A より引用)

また、家庭用太陽光発電の停電時のケースでは、パワーコンデイショナーから直接給電できる僅かな電力しか使えなくなるらしい。
信憑性のあるソースで確認できなかったが、導入済もしくは検討中の場合は、事前の確認をしっかりとしておくべきだろう。

家庭用発電システムは、安定した外部電力を前提としている仕組みが多い。
この事をしっかりと頭に入れておいて欲しい。


◇ 災害時の行動(被災者として)

被災時の行動として、一番最初にすべきは「自身の安全の確保」だ。

「何を言ってるんだ!自分の安全より家族の安全だ!!」という方も、少し落ち着いて欲しい。
アナタが危険に巻き込まれた場合、その後の家族の安全は誰が守ってくれるのか?

まずは、アナタが安全に活動できる状況を整えるのだ。
その上で、家族を安全な場所に迎えれば良い。


さて、世の中には被災者であるのに被災者と認識せず、自身を危険に晒す行動をする人達が居る。

例えば、東日本大震災時の帰宅難民と呼ばれた人達。
例えば、先日の2019年台風15号の後、電車に乗るために列を成した人達。

何らかの災害により、日常生活が営めないならば、その集団は立派な「被災者」なのだ。
であれば、まず優先すべきは自身の安全。
帰宅や出勤は二の次の行動になるはずだ。

もちろん、「両親共働きで家には子供しかおらず、どちらかの親が帰宅する必要があるが親同士が連絡が取れない」という状況で帰宅を急ぐのは当たり前である。
むしろ、そういう人達や、救護やインフラ整備に関わる人達の為に、わずかに動かせるインフラを空けること、これが重要ではないだろうか?

また、交通が混乱している状況での無理な移動は、危険を伴う。
夜間、慣れない道を夜通し歩く。
炎天下、駅に入るために列を作る。
これらの行動の危険性は、ここで改めてお話する必要はないだろう。

・自身が被災者であることを正しく認識すること
・被災者として自身の安全の確保に努めること

この2つが、災害時に被災者としてすべき行動ではないか、と提案させて頂く。


◇ 災害時の行動(被災してない者として)

被災していない者が取るべき最初の行動は、この一つである。

「安易に被災者にならない」

今居る安全を確保し続け、可能な範囲で日常生活を維持する。
被災地のことは、被災地で活動する人達に任せて、彼らが安心して活動できるように、
被災者がいつの日か、日常に帰るときに備えて、日常を守り維持する為に、
胸を張って日常生活を送るのだ。

世の中には、スーパーボランティア等、災害現場に入り、被災者の為に活動する素晴らしい人達が居る。
彼らに習って行動したくなる気持ちは、とても分かる。

だが、考えて欲しい。

被災地で
  被災者と一緒に活動するアナタが
  被災者と一緒に食事をし
  被災者と一緒に寝て
  被災者と同じ様に燃料を消費する

さて、アナタと被災者の差はどこにあるだろう?

これは、被災者を一人増やすのに等しい。

災害直後の被災地は、ただでさえインフラが安定しない。
その貴重なインフラを通して、限られた物資しかない。
貴重なインフラ、限られた物資。
これらをアナタが消費しても良いのだろうか?
僕は、それらを被災者に、また被災地で活動するインフラ整備の方々や医療関係者の方々へ回すべきだと考えている。

被災地というのは非日常の危険地帯でもある。
その事を理解し準備した上で行くのであれば、アナタを止める理由は誰にもないだろう。

話は変わって支援物資の話をしよう

被災地への勝手な物資の持ち込みは止めて欲しい。
被災地のために、必死で物資を運んでいる人達は、既に居る。
その人達は、物資を管理している団体から、要請を受けて活動している。
もしくは、日常的な企業活動として、物資を運んでいる。

そういう状況で、管理できない物資が大量になだれ込んで来たらどうなるだろう?

・正確な管理が出来ないため、物資が行き届かない人がでる
・一時的に物資が飽和した結果、管理された物資が不要となり廃棄される
・追加の物資は不要と判断され、物資供給が滞る
・アナタの持ち込んだ物資が、整理されている間に不要となり廃棄される

これは、実際に東日本大震災で起こった事例だそうだ。
だれがこんな状態を望むだろう?
アナタの善意がこの様な結果を生むことになって、本望だろうか?


◇ 災害後の行動

災害から少しの時間が立ち、被災地のインフラも概ね復旧し、物資の流通が安定してきた頃の話をしよう。

・被災地で求められるのは、物資より現金になる
・災害復旧ボランティアの受け入れが始まる
・災害をダシにした詐欺が増える

この頃の状況というのは、大体こんな感じになる。

特に注意しなければいけないのは、人様の善意に浸け込む詐欺だ。

特に募金詐欺については、信頼できる機関を使って寄付をすることで避けられる。
伝統的には日本赤十字社が義援金を集めている。
最近だとふるさと納税を利用した自治体への災害支援の為の寄付の方法もある。
ここは各自で調べて、最良だと思う手段で行って欲しい。

被災地では、掃除やリフォーム等をすると言って、高額請求をしてくる詐欺が発生する。
他にも火事場泥棒も、発生したケースがある。
被災者の方々も、詐欺等の犯罪には十分に注意して欲しい。

そして、上には挙げなかったが、被災者に居ない人達にできる、とても大きな支援がある。
日常の生活を、普通に続けることだ。
アナタが日常生活で消費したお金が、世の中を巡って被災地へ届く。
アナタが暮らす日常へ、彼らは帰って来る。

僕は、その日常の営みこそが、被災地への支援として一番大切だと考えている。


◇ 災害からすごーく後の行動

これからは、災害の傷が目立たなくなった頃の話だ。

復興。

そこへ至るのにどれだけの時間が掛かるのかは分からない。
阪神淡路大震災では、震災当日から20年が経過しても「まだ復興したとは言えない」と考えている人もいる。

おおよそで、4~5年もあれば街並みはほぼ戻るだろう。
10年もあれば、そこで何があったのか、感じることは難しくなるだろう。
大抵の災害であれば…

だから、大体災害発生日から4~5年ぐらいの話になる。
その時に我々は何をしたらいいか?
僕はこう考える。

災害を忘れよう

もちろん、災害があったこと、それにより命を落とした人が居たこと、辛かったこと、苦しかったこと、反省や教訓…
全てを忘れろ、と言っているわけではない。

次に災害の被害を小さくするための反省、対策は必要だ。
それを怠ってはいけない。
そういう当たり前のことの先にあることを、話しているのだ。

  そこで災害があったから…
  そこで人が無くなったから…
  そこで……

そういうネガティブな感情は、忘れてしまおう、という提案だ。
そこは、既に普通の人達が、普通に日常を過ごす場所だ。
必要以上に、ネガティブな感情は要らないはずだ。

普通に暮らし、
普通に観光地へ行き、
普通に人と触れ合い、
普通に楽しむ

それができる様になって、初めて復興が成るのだと、僕は考えている。

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