天草騒動 「63. 長岡帯刀、大矢野作左衛門を討ち取る事」
やがて鍋島甲斐守殿の軍勢が単独で、原城の落城の跡から桧山の荒神ヶ洞の後ろに押し寄せ、
「この洞窟の中に一揆の残賊どもが隠れておろう。この詰めの城の一番乗り、鍋島甲斐守直澄なり。尋常に最期の勝負をせよ」と、大音声で呼ばわった。
他の軍勢はそれを聞いて、
「甲州は血気にはやり、武勇に慢心して気が狂われたのではないか。たった今落城したというのに、どうしてあのような事をするのか。笑止千万。」と、囁きあった。
ところが不思議なことに、にわかに山が震動し、その洞穴の中から天主の