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派遣会社と奴隷商〜僕だって普段からこんなに計算してません〜

みなさんこんばんは

仕事を辞めてから10kgほど太ってしまいました。
働いていた時と食生活が変わったのが原因だと思いますので、当時のように毎日ラーメンを食べる生活に戻したいと思います。


さて、前回ポンコツ村のハローワークを書いた際に、派遣についても書いてほしいという声を聞いたので、書かせていただきたいと思います。


今回タイトルにちょっと過激な書き方をしてしまったんですが、
人を集めて外で売る。
貰ったお金の一部を中抜して労働者に払う。

という意味でたまにこの表現がされますね。

はてさて派遣会社は悪の秘密結社なのか。
一旦その仕組みから考えてみましょう。


例えばあなたの時給が1,500円。
毎日8時間労働で、月に20日働いたとします。

給料は毎月24万円。
しかしここから所得税とか社会保険とか抜かれて手元には20万円も残らない。

そんな時に派遣先の社員さんからこんな話を聞きました

「うちは派遣会社には時給1,800円払ってるんだけどね」


これは搾取だ横暴だ!!!!
私だって1,800円欲しい!!!!!

すかさず電卓を叩いてみると28.8万円。
5万円近くアップします

労働者に直接支払えば年収が60万円近くアップすると考えると、派遣会社が存在するからみんなワーキングプアーなのかもしれません。

こうしてはいられない。
すかさず派遣会社にダッシュ。
窓ガラスを突き破ってクレームを言いに行きました。

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派遣会社に辿り着いて担当者さんと一緒に割れたガラスの掃除をしてから話を聞いてみると、意外なカラクリが。

1.派遣先が払う時給は働いた時間だけに支払われる
2.派遣会社側に有給休暇を取らせる義務がある
3.社員の3/4以上働いてたら社会保険必須だけど、派遣会社が半分払う必要がある(労使折半)

※加入義務ルールはもうちょっと細かく色々あるよ!

一個ずつ聞いてもピンと来ないと思うのだけれど、この辺を混ぜ込むと不思議な計算に。

例えば時給1,800円派遣先から貰ってるよと言う事がバレちゃったので、これで計算をしてみましょう。

1,800円×8時間×20日=288,000円

こんなに会社がもらってる!
全部とは言わないからもちょっとよこせ!!

と、言いたいところですがちょっとストップ。

1.派遣先が払う時給は働いた時間だけに支払われる
2.有給休暇を取らせる義務がある

20日働いているなら有給休暇は年間10日以上付与されます。
毎年付与日数は1日〜増えて計算面倒になるので、ざっくり毎月1日付与されていると考えてみましょう。
その場合、派遣先に行かなかった日は派遣先からお金が支払われないので、文字通り派遣元から有給で休暇を支給することになります。

この時の派遣先からの支払額がこちら

1,800円×8時間×19日=273,600円

ちょっと減った。

そこでもう一つ忘れてはいけないのが、

3.社員の3/4以上働いてたら社会保険必須だけど、派遣会社が半分払う必要がある(労使折半)

要するに、給料から毎月抜かれてイラッ☆とするあの社会保険料は、企業側も同額負担しないといけなくて、企業側もイラッ☆としているよという事です。

社会保険料は給与によって変わるので一概には言えませんが、ざっくり15%くらいだと思って計算すると、企業負担は労働者に支払ってた24万円の15%だと36,000円

これを派遣元から受け取る額から更に引いてみると、
273,600円−36,000円=237,600円

ここから労働者に24万円を支払うと。。。。。。

あれ????
派遣会社赤字じゃね??????

「お世話になってる派遣先からマジで忙しくて困ってるから追加で人を出して欲しいってずっと言われてたんだけど、時給1,500貰わないと絶対働かないっていうあなたしか候補者が居なかったから、社内で話し合って紹介したんだよね。この条件だと今後は絶対紹介できないから、この案件なくなったら仕事なくなると思ってね」

「え?マジ?」

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搾取されていると思っていたらまさかの赤字覚悟で給与が支払われていた。


こんな感じで、時給や総支給、手取りだけではなく、様々な角度からお金は考えなくてはいけません。


ちょっと話を脱線させて、よくある話だとフリーランス。

「企業に勤めている時は月給25万円だったけど、フリーランスになったら月35万円も貰えるようになったんだよね!」


めっちゃ給料が増えているように思えますが、フリーランスということは、業務委託や準委任契約が殆どで、要するに上で触れていた社会保険は存在しません。更に有給休暇やボーナスもありません。


あくまで例としてですが、例えば月給25万円の社員でボーナスは3ヶ月分をもらっていたとして年間分計算をするとざっくり。

基本給:300万円

社会保険:45万円

ボーナス:75万円

有給(日給分得したとして計算):12.5万円〜 ※毎年増える

合計:432.5万円


こんな感じになります。


でもフリーランスの場合は

35万円×12ヶ月=420万円

月額に10万円の違いがあっても諸々ひっくるめるとむしろ条件は下がってしまっているとも考えられます。

更に雇用保険や労災保険も無いので何かあった時の保証もありません。

だからフリーランスは損だよ。というお話ではなくて、目先の数字に踊らされず、しっかり計算しましょう。というお話です。


会社員と言っても有給はほとんど消化できず、ボーナスも無い会社だっていっぱいあるので上記の計算が全然当てはまらないこともありますしね

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さて、話を戻して派遣のお話。

SES等でよく見る多重請けの話にも言及しようと思ったのですが、書き始めてみたら泥沼化したので止めておきます。気が向いたら別記事で。。。

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さて、上記のような多重請け構造とは別のお話で、「派遣免許を持っている企業から、派遣契約で客先に送られる派遣社員」※書き方がまどろっこしい

をやるのは、自分にとって良いことなのか悪いことなのかについて考えてみましょう。


とはいえこの手の問題は「何を幸せとするかによる」とかいう玉虫色の答えになりがちなので、派遣の構造も含めたメリットとデメリットを考えてみましょう。


前半に言及しましたが派遣さんを雇う会社は、時給1,500円相当の人を雇用する際に、ざっくり1,800円+派遣会社の利益分。例えばそれが500円だとしたら時給2,300円を払う必要があります。


こういう話をすると、いわゆる原価厨と呼ばれる人たちが、中抜されるぐらいなら直接雇ったほうが良い!!!とか、マクドナルドのフライドポテトの原価は10円だから原価80円のハンバーガーを食べるべきだ!!!とか言い始めます。


好きなもん食えよ。


失礼、脱線しました。

構造上高く付くのは明らかなのに、なぜわざわざ派遣会社を使うのか。

それは人が採用されるまでの中間コストに焦点を向けてみると理解しやすいです。


例えばあなたの会社では週5日働いてくれる内勤事務の人を一人採用したいという方針が決まりました。そして上司から、あなたに採用を任せると言われました。


さぁ、どうしましょう?


もしあなたが人事系の仕事に一切関わったことがないのであれば、こんな事急に言われても若干困るのではないでしょうか。


まずこれが一つ。


ここからなんとかかんとか調べてみると、バイトルやタウンワーク等のアルバイト系の求人媒体や、リクナビやマイナビなどで契約社員として募集するのもアリだなという事が判明しました。


そして募集をすると、かなり安く見積もって10万円〜の募集広告費が掛かると営業担当の人に言われました。

そしてもちろん言われます「採用出来るとは限りませんが」

こっちでも書きましたが、求人は広告です。

なので広告には正解はありませんし、上手くいくかはやってみないとわかりません。それにも関わらず、広告を出したことがない人が担当者として広告を出さないといけないとなったら尚更です。


「え?求人広告の会社の人が上手な記事を書いてくれるんじゃないの?」


と、思いますよね?

プロ意識が高く職業倫理感が高い営業担当の方がついた場合はしっかりやってくれるかもしれません。

しかし今回は構造の話を中心にしているので、これも構造的なお話をするのですが、極端な話求人広告の営業さんは、採用ができない方が良いのです。

何故かというと、採用ができてしまえば「事務の人を1人採用したい」あなたは求人を出す必要がなくなってしまうので、お客じゃ無くなってしまうからです。

なので、クレームにならないように、採用が終了してしまわないように、ズルズル求人の案件を引っ張るのが、求人の営業担当の最も売上が上がる方法です。


ここだけ切り取ると求人広告の営業さんがクズっぽく見えてしまいますが、あくまで構造のお話です。

どちらかというと、継続して求人を出し続ける、大手の飲食チェーンさんや、毎年安定して中途や新卒の社員を採用しようとしている企業さんの求人で成果を出して、継続して使ってもらったほうが、営業としてはコスパ良いですよね。

そのため、突発的に一人だけ採用をしたいという企業さんは、ノウハウ的にもお客さんとしての扱われ方的にもちょっとだけ難しい立ち位置になってしまうのです。

求人業界に仲が良い人が居てバリバリ力になってくれるなら別ですが、結構難しそうですよね。


これが二つ目。


まだ続きます。

求人を出したとしても、あくまでこれは求人であって、採用ができるというわけではありません。この後に来るのは「応募」です。


これが地味に大変なんですが、応募が来たら面談日程を調整しないといけません。


しかしこれまた不思議な事に、応募したくせに面談調整の連絡をしても半分ぐらい返事が返って来なかったりします。


自分がバイトに応募をした時の事を想像してほしいんですが、不採用になることも想定して、一社ではなく複数社に応募をする人が多いです。

そして、一社から採用されたら、他のバイトは「まぁいっか」となって音信不通になってしまうことも多いのではないでしょうか。


また、応募した瞬間はやる気があったものの、2.3日経過するとやっぱり違うなと思い直してしまう事もあるのではないでしょうか。


この辺数字に出して分析してみると如実に出てくるんですが、応募してから1週間以内に連絡がつかなかったらほぼ連絡が付きません。


また、一番連絡が付きやすいのは求職者さんが応募して30分以内です。

そりゃそうですよね、応募している瞬間は求人見ている暇があって連絡も対応しやすいということですから。


とはいえ30分以内は極端にしても、朝繋がりやすい人昼繋がりやすい人夜繋がりやすい人と、人によって生活リズムは違います。


なのでそれぞれのタイミングを見計らって、応募をしてくれた人にこちらから連絡を取らないといけません。

事務を1人雇わないといけないぐらい仕事が忙しくなったというのにも関わらず。


こんな感じで、求人を出したにもかかわらずちゃんと対応出来なくて採用につながらないという事例もよくあるみたいですね。

これが3つ目。


①人を雇わないといけないって言われてもどうして良いかわからない

②求人を出すにも上手な求人の出し方がわからない

③応募が来てもきちんと対応しきれない



事務員さん一人雇うのにこんなに壁となる手間があります。

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ガチな話をするなら、面接に来た人を上手に口説けないとかまで入ってきますが、今回はそういう記事じゃないので割愛します。


じゃあどうすんの?っていう事で本筋に戻りまして派遣会社を使おう。となるわけです。


派遣会社を使う場合はどうなるのか。

①派遣会社に条件を伝えて待ちます。

②こんな人どうですか?って紹介されるので、良さげな人なら採用する※本当はアウト

これだけです。


※に関してですが、派遣スタッフを雇う際に面談をするのは法律で禁止されています。

なので面談をする企業は本来ありません。

ただ、働き始める前に大抵の企業は事前に顔合わせをしますし、たまたま顔合わせをした後に採用枠が社内都合で埋まってしまい、その後やっぱり採用枠を増やそう。となってしまうことはまれによくあるかもしれません。


さてさて、こんな感じで、自力で求人を出すよりだいぶ手間が省ける事を考えると、派遣会社を使うのもアリだと思いませんか?


ちなみにこんなに手間が掛かっている採用を派遣会社がするのは損にならないのか。という考え方もありますが、勿論割に合わないことも多いです。前半で触れたとおり、意外と利益率が低い構造なんですよね。

ただ、派遣会社側は個企業が採用をするより少しだけ優位性を持っています。

まず複数の求人を取り扱えること。


例えば渋谷と原宿と新宿の企業の会社からそれぞれ事務職を求められたとします。

渋谷の求人には3人応募が来て、原宿と新宿の求人には応募が来なくても、渋谷に応募した人が、原宿や新宿でも問題なく働くと言ってくれるのであれば、どれか一つだけ求人を出すより効率的に人を集めることが出来ます。


また、先程の採用するためには応募者対応をしなくてはいけないという点に関しても、毎日何十何百と求人をまとめて出しているので、それらを纏めて対応するために専門の人を用意することが出来ます。そのためどの時間でも応募者対応が出来るのでロスが少ないです。


さらに言えば近頃では採用管理システム(ATS)と呼ばれるもので自動的に応募がされると同時にメールが送られ、面談日程を自動調整してくれるシステムや、ビデオ面談は勿論。所によっては事前に設定された質問に対して求職者が回答の動画を撮影することで24時間疑似面談対応ができる仕組みが登場したりと、採用の効率化に関してもどんどん新しいテクノロジーが入ってきています。

このように採用コストを減らすことで利益率を上げる企業努力を行なっているので、先程の企業が一人事務の人を採用するよりも圧倒的に安く採用することが出来、派遣会社側も利益を生み出すことが出来るみたいです。


さて。

派遣会社を利用する企業の理由もわかった。

派遣会社側の利益に関してもわかった。


それはいいから働く側はどうなんだと思いましたか?


僕は忘れてました

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ごめんね。


さて、働く側のメリット・デメリットを考えましょう。

まずはメリットから。

企業側同様、応募側にも優位性があります。

自身が企業側が求める人材であるなら、複数の求人を提示されるので、仕事を探すにはあまり困らないことでしょう。

また、「派遣法」は労働に関する法律の中でもかなり厳しい領域にあり、破れば派遣免許が剥奪され、派遣事業ごと潰れてしまう可能性があるので比較的しっかり守られる傾向にあります。


そのためサービス残業は起こりにくく、有給も比較的取りやすいのではないかと思います。


また、営業担当が矢面に立ってくれるので、例えばこの日は予定があって休みたい等の交渉も、自身で行わなくても派遣会社の営業さん経由で行なってもらえたり、ハラスメント系のトラブル対応も代わりにやってもらえるかもしれません。


更に、一般的な就職活動では週3日や4日だったり時短勤務で仕事を探すのは結構難しかったりしますが、派遣であれば複数の求人が取り扱われている関係で、自分にあった仕事を提案してもらえる可能性もあります。


この点自分で仕事を探すより効率的に探すことが出来るかもしれません。

そして、最近では5年ルールというルールが生まれ、5年以上勤めている人は無期雇用をしなくてはいけないというルールがあるため、派遣で仕事を探して、長く働けるなと思った場所でそのまま正社員で働くことも十分狙うことが出来ます。


一方デメリットはというと、一番大きいのは責任に関してではないかと思います。

派遣社員は働き方的には同僚にはなりますが、組織構造的にはどうしても外部の人になってしまいます。

そのため、業務の中でもコアとなる部分はなかなか任されにくいです。

また、今回のコロナのように何か問題があったときに最初に雇用を外されるのもやはり派遣社員やアルバイトが先になるかと思います。

これが一番のデメリット。


これをひとまとめにすると

①コアとなる業務を任されないので専門スキルを身に着けにくく

②世の中や企業になにか問題が起こったときに解雇されるので

③スキル不足かつ高齢になったときに失業すると再雇用が難しくなる

というコンボを喰らう可能性がある。ということでもあります。

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ただ、

①コアとなる業務を任されないので専門スキルを身に着けにくく

この部分ですが、正社員でも実はそれほど大きく変わらない部分はあって、自ら主体的にスキルを身に着けようとしているか。の方が実は重要だったりします。


例えば飲食店の正社員で働いていたとしても、ただ毎日来たお客様の対応をしたり調理をしたりしているだけの人が居てそこで20年勤めていたとします。しかしコロナで飲食店が潰れた時に、その人の再雇用先はどうなるでしょうか。

そして同時に、どうしたら集客が増えるか、リピートが増えるか。広告はどうするべきか、スタッフの採用はどうするべきか、教育はどうするべきか、マネジメントはどうするべきか、利益管理はどうするべきか、などなど、自ら学ぼうとしている人だったらどうでしょうか。


人は環境に適応する生き物でもあるので、やらなくても良いならやらなくて済ます。という方も非常に多いかと思います。

でも、「派遣社員だから成長できない」はちょっとばかし短絡的すぎる考え方かと思います。


例えば事務職だとしても、指示を的確に理解し、必要な数字を出したり作業を簡略化するために簡単な関数をチャチャっと組める人が居たらメチャクチャ助かります。


普段の事務作業に関数は必要ないからとか、業務として教わっていないから。という人と、「もっとらくする方法はないか」とググりながら作業をする人では最終的に身につくスキルは違うという事かと思います。


これらのスキルを持っている方であれば、派遣事務の案件でも比較的すぐに紹介をされると思いますし、事務職経験が無かったり、タイピングもロクに出来ない方では仕事が紹介しにくくなったりと、「派遣」でひとくくりにするのではなく、やはりスキルが重要になってくるかと思います。


まぁそういう意味では色々と「させられる」正社員のほうが学ぶチャンスは多いというのは間違いないかとは思いますけどね。


また長くなってきたので本日はこの辺で。

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もちろん投げ銭してくれても大丈夫です。

ゴキブリを購入する費用に充てます。


ではまた次書く気力が出てきたらまたあいましょう。



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