悪魔
一週間に一回は更新しようと思っていたのに気付けば二ヶ月ほど放置してしまった日記を久しぶりに書くことにする。ネタは何も無い。
ここまで何処にも出掛けず何も起こらない日々は短い人生ながら初めてのことなので、たぶん書けることといったら妄想の話くらいだ。それで言うと、最近なかなか印象的な夢を見たから、その話でもしてみよう。
とはいえ内容は朧気である。細部を語ることは出来ない。ただ漠然としたニュアンスだけが頭にこびり付いている。
夢の中で、私は誰でもなかった。強いて言えばカメラマンだった。さらに正確性を期して言うなら、夢の世界はとてつもなくグラフィックの質が高いビデオゲームで、私はそのゲームを遊ぶプレイヤーだった。しかしアバターとなる人物は存在しない。動かせるのはカメラだけだ。NPC達を見守ることしか出来ず、彼等彼女等の行動を左右するのは不可能だった。会話もエサやりも水温調節も出来ない上にこちらを認識してもらうことも出来ないシーマンだ。とんだクソゲーである。
その世界には、数人の少女達がいた。一様に制服、しかも白いセーラー服である所に創り手の性癖が窺える。そのうち数人は何故か最初から血に塗れていた。ただし、それが彼女等の物ではなく返り血であることはどうしてか私にははっきりと分かった。
少女達がいるのは大きな学校の中らしい。かなり古く、木造で、ちょうど『十三機兵防衛圏』の旧校舎のような雰囲気だ。だがあれほど全てが古い訳ではなく、所々に新しい、リノリウム張りの床などの箇所も存在する。思い出しているうちに気付いたが、恐らく私の母校、それも小学校に限りなく近い。と言ったところで誰にも伝わらないが、片田舎にある全校生徒六百人ほどの、創立から既に百年を数えているような小学校の校舎を適当にイメージしてもらえればそう遠くはならないだろう。
奇妙なのは、校舎にいるのは少女達だけで、教師や、その他の生徒達の姿が全く無いことだ。説明を忘れていたが、少女達は皆15〜18歳と思しき歳格好である。ここにも夢の主人の如何ともし難い嗜好が表れてしまっているのは弁解の余地もない。
数人、恐らく7〜8人ほどの少女達は、一人残らず怯えているようだった。さもなくば、ひどく緊張しているらしい。歩けばギシギシと鳴きそうな木板の廊下の片隅に集まって、身を固くしている。
絵があった。廊下の壁、突き当たりの所には、大きな大きな絵画のような物が張り付けられていた。背景のほとんどが黒く、描かれているのは人なのか建物なのか、赤や紫などでシルエットがはっきりしない。
校舎には、何かがいた。人ならざる何か。黒く、凶暴な、人型の怪物。きっと悪魔だ。少女達は悪魔に怯えていた。そして、既に悪魔へ何度か攻撃をしていた。その攻撃は確かに成功したが、だからといって悪魔は消えることは無いのだった。
消えないから失敗だということではない。少女達は間違いなく攻撃に成功している。しかし悪魔は消えない。正直自分でも何を言っているのか分からないしもしもこんな所まで読んでいる人がいたらもっと何がなんだか分からないと思うが、そんな感覚がした。成功しているが、消せない。どれだけ攻撃に成功しても消すことは叶わない。すごく何かの隠喩っぽい。
血染めの制服を着た少女達の中には、ちらほらと超能力を持っている者がいた。強く覚えているのは、入れ替わり能力と、透明化の能力だ。それらの力を持っている二人は特別仲が良く、協力して悪魔の横を通り過ぎようとしていた。
倒そうとはしていなかった。
通り過ぎようとした。
すれ違おうとした。
中庭にある大きな木にザザ降りの雨が打ちつけていた。
木のそばには噴水があり、その周りに、どこに消えていたのかと思っていた教師達が並んで立っていた。皆揃って笑っていた。傘も差さず、手を繋いで、輪になって。こちらを見ながら。
その時私はカメラではなかった。プレイヤーではなかった。一人の少女だった。透明化能力を持つ少女だった。隣にいる、手を繋いでいる少女、彼女と触れ合っている間だけ力を発揮できる少女だった。
どうか何事もなく通り過ぎることが出来ますように。
悪魔が振り向きませんように。
震えるほど怯えながらそう祈っていた。
という夢を見たんだ、と今回はそんな日記でした。別にこの場所を夢日記置き場にするつもりはないけどまた何か印象に残る夢見たら書くかも知れません。
ヤマナシオチナシイミナシの本当にただの夢なのであれです。久しぶりにnote更新したかったという以上の何も無いです。
日記って難しいですね。
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