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軽骨堂書店

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短編小説『伸びた日脚の畳み方』

短編小説『伸びた日脚の畳み方』

「小田原城行こうぜ」
 あまりに長い時間それだけを聴き過ぎてそろそろ雨音が完全なるBGMとして可聴域の外へ飛び出しかかっていた頃、ネギッサンは絶望的とも言えるような低い声で言った。俺は気にせず読書を続けたが、気が変わるには十分なはずの時間を置いてからネギッサンはもう一度全く同じ台詞を繰り返した。
「行ってどうするんですか」
「小田原城に行ったという記憶を作る」
「時計見て下さい」
「かっけー時計持

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