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オリジナルのYA短編読み切り小説(フリー素材:発表済み)

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愛知県教育雑誌「6年分」(紙媒体)の連載読み切り小説です。朗読、歌、動画の原作などの二次使用につきましては無料です。©️白川美古都の記載だけお願いします。また、使用にあたり必ずしも…
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#言霊さん

YA【月はそこにいる】(1月号)

 月ノ島中学校には発足二年目の雅楽部がある。  杉山玲子は発足当初に入部した一人だ。きっ…

YA【太陽に向かって】(9月号)

   夏休みが終わり九月になった。  月ノ島中学校は本日、授業参観日だ。一年二組の教室の…

YA【君が好きだ】(8月号)

   田村健斗は朝からもう何度も空を見上げている。  晴れた。  天気予報では降水確率0パ…

YA【夢も希望もありまして】(7月号)

 夢も希望もありゃしません!  七夕祭りの短冊に筆ペンで書き付けられた文字だ。輪郭は震え…

YA【優しい雨】(6月号)

   月ノ島中学校一年生、貴田周は傘をさしたまま通学路でつっ立っている。たった今、女子に…

YA【透明なゴール】(5月号)

   今日は、毎年恒例の月ノ島中学校のマラソン大会だ。  全校生徒が参加する。  中学校の…

YA【満点の星の夜に】(4月号)

   月ノ島中学校は入学式、始業式と終えて、通常の授業に入った。  如月魁人は二年生の授業を終えて、一人でいつもと違う帰り道を歩いている。少し遠回りして、用水路のそばの畑をのぞきこんで、ため息をつく。  もう、四月上旬だ。土筆は見当たらない。  桜は散り始めているし、日もずいぶん長くなった。  昨日の夜、母と契約をした。土筆一本一円で買い取ってくれる。 (一円……、百本で百円か)  魁人は母と交渉をねばったけれど、土筆の買い取り値は上がらなかった。漫画を買うには五百本。途

YA【逆さまエリア】(3月号)

 月ノ島中学校の裏門のそばに、楕円形の花壇がある。  今、五十本ほどのチューリップは満開…

YA【どこへ帰ろう】(2月号)

   浜島瑠衣は、最寄りの駅のさびれたフェンスにもたれている。コートのポケットの中には入…

YA【風の強い夜に】(1月号)

 昼休み、月ノ島中学校の三年三組の教室が騒然としている。  工藤仁が背中から棚にぶつかり…

YA【心の声】(12月号)

   月ノ島中学校の二年生、野村マリ子は、クラスメイトに頼み事をされると断ることができな…

YA【 for you 】(10月号)

   月ノ島中学校の一年二組の青山瑠美は、今夜も、テルテル坊主を作っている。十月中旬の体…

YA【変じゃないって、恋だって】(9月号)

   月ノ島中学校の三年一組の教室にクスクスと笑いが広がる。  英語の授業中、一番前の席…

YA 【砂の城】(8月号)

「ミワ、起きてちょうだい」  瀬戸美和は、母に起こされた。枕元の目覚まし時計に目をやると、まだ朝の六時だ。  今日から夏休み。月ノ島中学校の授業のある日だって、朝七時に起きるのに。  美和は中学二年生になった。部活動に入ってない。早起きの必要はない。 「やだよ、眠たいよう……」  美和はもう一度、薄い布団の中にもぐりこんだ。布団越しに母の声が聞こえてくる。 「カズヤのラジオ体操についていってやって。昨日、頼んだでしょう?」  弟の和也は小学三年生だ。  近所の公園でやるラジオ