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読書感想文課題図書2021 書きやすさレビュー

読書感想文講座の講師として数百人の小学生の指導を行った経験から、読書感想文では題材にする本選びが重要だと気づきました。
そこで、2021年度の読書感想文課題図書について、どれが読書感想文として書きやすそうか、読書感想文の課題として使う際のポイントなどを解説してみました。本選びの際の参考にしてみてください。
※まだ読めてない本もあるので、随時更新します

なお書きやすさの目安は下記の記号で表しています
◎:比較的書きやすいと思われる
○:ふつう
△:書きにくい可能性が高い

※あくまでも「読書感想文の書きやすさ」だけの話であり、 作品そのものがいい、悪い、面白い、つまらない、などに言及しているものではありません。

課題図書評価:低学年編

未読:あなふさぎのジグモンタ


◎:そのときがくるくる
少々長めだが読みやすい。
主人公がキライな食べ物を「あれ?食べられるかも?」と思うあたりの心情に着目し本人がキライな食べ物の話などにもっていくと書きやすいかもしれない。


△:みずをくむプリンセス
「水がない国がある」という国際情勢への理解が必要な本。
小学校低学年には少々難しいかもしれない。
小4の社会でダムや浄水場の話をやった子が、それにからめて題材にしても面白いかもしれない。


未読:どこからきたの?おべんとう


課題図書評価:中学年編


○:わたしたちのカメムシずかん
感想のとっかかりになるポイントが見つけにくい。
カメムシそのものの話に視点を置くと、少し書きにくいだろう。
身の周りにある「イヤなこと」をただいやがるのではなく興味をもって観察することで、気持ちが変わってきた体験などとからめると書きやすいかもしれない。


△:ゆりの木荘のこどもたち
「あ-面白かった」で終わってしまいそうな作品。
時系列を整理しながら読まないと混乱する子もいるかもしれない。
どこにポイントを置いて感想文を書いていくかが難しい。


未読:ぼくのあいぼうはカモノハシ


△:カラスのいいぶん
観察日記的なパートと解説文的なパートが入り交じっていて、少々読みにくい。
目先の流れにまどわされず、野生動物との共存や、動物をやっかいがるのではなくその生態に興味を向ける姿勢などをとっかかりにしていくと書きやすいかもしれない。


課題図書評価:高学年編

未読:エカシの森と子馬のポンコ


○:サンドイッチクラブ
都会で中学受験をする子供たちの話なので、中学受験とは縁遠い地方の子は少しギャップを感じるかもしれない。
自分探しや青春、友情などがテーマになりやすいので、自分自身の気持ちをきちんと深掘りできないと、薄っぺらい感想文になってしまう可能性が高い。


△:おいで、アラスカ!
2人の主人公の視点が交互に切り替わりながら語られる形式。
読書になれている子でないと、読みにくく混乱する可能性が高い。
病変した人にスマホを向ける残酷さや、2人の主人公の心のふれあい、一秒先を心配する気持ちなど、感想のとっかかりになる、いいポイントがたくさんあるが読解力が問われる作品。


◎:オランウータンに会いたい
物語ではなく解説文的だが、すっきりとした調子で読みやすい。
動物の生態を観察するための努力や環境保全の話など、感想文のテーマにできる内容も豊富。ここからどうやって「自分事」の話にもっていくかが、読書感想文のポイントになりそう。

読書感想文の題材にする本の選び方

「読書感想文の題材にはどんな本を選べばいいでしょうか?」
感想文の講座をやっているときに、よく聞かれる質問です。
答えは「少しかんたんだと思える本」
いつも読んでいる本や、本人の読解力レベルよりも少しかんたんな本を選ぶのが一番のコツです。目安は、本を読んだあとにその内容をスラスラと解説できるくらいです。
読書感想文では、本の内容を理解するだけでなく、それを自分事ととらえて話を発展させていく力が必要になります。そのため、ただ「読める。内容が理解できる」だけでは、作文を書くのは難しくなります。ですので、少しかんたんだと思えるくらいの本が最適です。

よくある話ですが「この機会にいい本を読んでもらおう」と張り切るのは厳禁です。本との出会いはまた別の機会を狙ってください。
繰り返しになりますが「いい本」「子供にぜひ読んでもらいたい本」と「読書感想文が書きやすい本」は別物です。まずは作文にしやすい本を題材に、作文の書き方を体得してもらえればと思っています。

読書感想文「これはヤメとけ」シリーズ

昔からある海外名作児童文学(小公女、宝島など)
時代背景が古い、海外の風習が分かりにくい、宗教的感覚が分からないなど、違和感のオンパレードになってしまい、感想文どころではなくなる可能性が高いです。

謎世界観系の童話(さかさ町、宮沢賢治の童話など)
面白く読めるものも多いですが、読書感想文とは結局のところ「自分の話」をするものですから、あまりに現実離れしていると、自分の話に繋げようがなくなってしまいます。

5分で読める!系の簡略版
正直、論外です。簡略化されすぎていると、大まかなストーリーしかなぞれません。よほど力のある子でないかぎり、感想のきっかけは出てきません。

長すぎるもの(ダレンジャン、ハリー・ポッターなど)

面白いところや心に残った場面が出てきすぎてしまい、まとめにくくなります。学年が低いと話全体の概要や人物関係を覚えているのも難しい場合があります。ほどほどの長さをおすすめします。

図鑑、写真集系(すごいね世界の通学路など)
文字が少ないので読みやすく感じますが、感想文にするのは難しいです。似たような派生実験を自宅で行い、作文の形をした自由研究のようなトーンで書く方法もありますが、正直、先生のウケはあまりよくありません。

痛快謎解きミステリー系(謎解きはディナーの後でなど)
本としては面白いのですが、エンタメ性が強いこともあり、あまり読書感想文には向きません。謎世界観系の本と同じように、自分の話としての展開が作りにくいです。

スポーツ選手の「自伝」
伝記ならいいのですが、自伝は難しいです。自己啓発書的だったりするなど、理由は色々あるのですが、読書感想文の主題になるポイントが見つけにくいケースが多いです。

なぜ「読書感想文をかきやすい本」をすすめるか

読書感想文に苦手意識を持つ子が多いからです。ロールプレイングゲームなどでも、最初から強い敵と戦うことはありません。まずは弱い敵を倒して、経験を積み、操作や戦い方を覚えてから強い敵に挑みます。
それと同じように、まずは考えやすい問題、感想を持ちやすい本からはじめてみるのがいいと思っているからです。
繰り返しますが、いい本=読書感想文が書きやすい本、ではありません。読書感想文を書くのは難しくても、子供に読んでもらいたい本、楽しい本、素晴らしい本はたくさんあります。読書感想文が書きにくいからといって、悪い本という意味ではありません。
このように、読書感想文の書きやすさで本を評価しているのは、まずは読書感想文を書きやすい本を題材に「あ、こうやって書くんだ」という成功体験をしてもらいたいという考え方からです。読書感想文の指導とあわせて、参考にしてみていただければ幸いです。

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