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【Traveling】令0603〈02.福岡空港,博多〉

1.着陸〈福岡空港〉

あれは……長門市の西のほう,,,,,
………………見島…?

すっかり景色を楽しむ余裕が出てきた。
永らく日本海の上を飛行していたが,少しずつ陸地が見えるようになり,形から場所を特定しようと試みていた。

次第に高度が下がり出した。海面の波模様が少しずつ鮮明になってゆく。
近づく「福岡」を感じ取り,前途に思いを馳せる。

機体は大きく旋回し,西方に沈む夕陽が海に照りつける。金色のリフレクション。
その下に見える楕円形の島は,おそらく玄界島,これは…能古島。
博多湾が全貌を現し,夕陽色に染まるビル群が鮮明に見える。これが,福岡…………。
なぜか息を殺しながらじっくりと見る。
ペイペイドームは分かり易い。近くには福岡タワーが見える。

鹿児島本線方面に進むと,左回転して着陸態勢に入る。
代わって眼下に見えるのはおそらく大野城市や志免町の市街地だろう。

さらに高度を下げてゆく。機体が地面に影を落とし,車列の細かい車種まで見えるようになってきた。……………………………

……雪の舞う花巻を出発した機体は,無事福岡空港に着陸した。
ボーディング・ブリッジから建物に入る。
約2時間ぶりの地上。初めて福岡,そして九州の土地を踏んだ瞬間だった。
到着は12番出口(心の奥で密かに狙っていた9番出口ではなかった)。

長い長い通路。「動く歩道」もある。

ターミナルビルへ出た。今回の旅で最大の難関(?)であった航空便が無事に到着したのだ,その喜びはひとしおである。

しかし,大きい…………。
福岡空港クラスになるとここまでの大きさになる。
真新しい国内線ビルの供用は4年前だそうだ。高い吹き抜けになったアクセスホールが印象的で,盛岡以来ここでやっとシャッターを切った。

ターミナルビルの最下階,地下鉄空港線に接続する空間。
地上に戻った乗客が,列を成して吸い込まれてゆく。
「WELCOME TO FUKUOKA」を発見し,その画像で到着ポストをしたのがこの場所である。

自分もその列に交ざって,改札を通過した(無論,ハチカで)。

停車していた空港線に乗り込む。丁度良い着席具合だ。
〈5.3月2日 16:39~16:44 福岡市地下鉄空港線 姪浜行き(福岡空港~博多)〉

2.邂逅〈博多駅〉

東比恵を通り,博多駅へ到着する。
「福岡空港ゆき電車が……」自動放送が地下鉄構内に響く中,人混みに圧倒される。
ターミナル博多は流石に乗客の入れ替わりが激しく,いきなり混雑に晒された。
それと同時に,久方ぶりの「都会」に心が躍った。この人間の密度は,普段なかなか体験できない。

改札を出た。
政令市ターミナル駅の人ごみ。仙台駅に初めて入った時の感覚に似ている。
こういう駅はとても好きだ……。
周りを行き交う人は,ほぼ九州の人々なんだろう。とても不思議な感じがする。

足早に動き回る都会人を避けつつ,駅舎の外へ出る。福岡の空気を吸う。

「JR博多シティ」。極度に現代的な駅舎が,振り返ると現れた。
2011年3月3日開業と言うから,丁度明日がアニバーサリーだ。

左側には「博多バスターミナル」。
……さっきから,後ろを西鉄バスがとんでもない量通ってゆく。
福岡は「バスの街」というのはどこかで聞いたことがあるが,これ程までとは……。
この旅行では「バス」にも度々驚かされる所と為る。

信号を渡ると,博多駅全体がよく見渡せる。
横断歩道を行き交う人波と,ひっきりなしに往来する福岡ナンバー。一瞬盛岡ナンバーに見えたのは気のせいだ。
圧倒,圧倒,圧倒………。何もかもが新鮮である。

気付けばもう17時になる。なるべく日没前に街を見ておきたい,と思った。
とりあえずは天神まで行こう,と決めて,大博通りを祇園町方面へ歩き始めた。

福岡というまちの博多側。「博多」を冠する施設を案内する標識が目立つ。
大博通りの両側はオフィスビルが整列している。

案内標識に現れた「天神」の文字に期待を弾ませながら,祇園町交差点を「国体道路」へ折れる。

3.進入〈祇園町西交差点〉

国体道路を西へ進み,上川端町・祇園町界隈へ出る。
かつての博多市街,「博多部」の南端にあたる地区で,博多川を挟んで西に中洲,南には住吉,博多駅前地区と接する。
次第に玄関口,ターミナルのオフィス街という印象から代わって街なか感が増してきた。「祇園町西」交差点を,キャナルシティと櫛田神社・川端通商店街とを結ぶ歩道橋が跨ぐ。

向かいの歩道から見た川端通商店街の櫛田神社側入口。
外から見てもかなりの人通り……!
明治通りと国体通りとを結ぶ,歩行者のメインストリートなのだろう。

「祇園町西」交差点から南東方面。この道路を道なりに行けば,博多駅の正面に出る。
この下を先日延伸開業した七隈線が通っている。

歩道橋へ登る。「博多旧市街」と銘打った旗が掲げられている。

歩道橋から博多川方面。橋の西側が「中洲」だ。
この画角には橋が4つも収まっている。この交差点の周りは,道路が結構入り組んでいる。
歩道橋を渡って,川端通方面へ降り立つ。

4.旅行者〈櫛田神社〉

エスカレーターを降りて正面直ぐに現れたのは櫛田神社西門。
進入……。

博多祇園山笠…!
ここ櫛田神社の祇園神に「山笠」を奉納するお祭りで,国の重要無形民俗文化財に指定されている。
「山笠」は山車や神輿に相当するもので,この目の前のものは「飾り山」というタイプらしい。
7月,祭りに沸く夏の博多も楽しそうだ…,と思った。

「博多総鎮守」……重みのある字面。
旧社格は県社であって,古くから「お櫛田さま」と呼ばれ博多の氏神,総鎮守として篤い信仰を集めた。

写真を撮っていると,外国人女性に英語で話しかけられた。
どうやら写真を撮って欲しいとのことで,狼狽えながらも「オッケー,オッケー」と情けない英語もどきで対応する。咄嗟のときには,あんなに勉強したのにほとんど出てこないものだと,自分の至らなさに辟易とする。何しろ,日本人以外に話しかけられたことなど今まで無かった(言い訳)。そりゃあ,カメラを持っている奴がいたら撮ってもらおうとするだろうが。

女性はまず楼門の前に立った。2,3回画面の白丸をタップする。
今度は反対,神社側。
見事な逆光であったので,女性はしきりに立ち位置を気にしていた。
また何枚か撮影する。
よく見る外国人観光客の写真の画角だ。スマートフォンを手渡すと,「あなたも撮る?」との話。出先で自分が入っている写真はほぼほぼ撮らないけれど,折角だからとお願いした。

筆者近影。黒ずくめの格好。
腹の底で煮えくりかえる遠方へ来た楽しさや興奮とは裏腹に,外面は何だかもの寂しい写真であるが,本人はかなり楽しんでいる。大丈夫です。

折角なので,ズタボロ英会話スキルで少し会話をしてみる。突如訪れた実践編。スピーキングはからっきしである。ほんの数ヶ月前まで,長文を読んでマークを塗る,くらいしか触れてこなかったこの言語で…。

「Where are you from?」とりあえず訊いてみた。
「Austria.Europa.」

一瞬最小の大陸の方に聞こえたが,ヨーロッパということは,確かにあのオーストリアだ。これは少しレアなのかもしれない,とも思いつつ。
「オォ~~~~~」と分かっているのやら居ないのやら微妙なテンションに聞こえかねない返答をし,
「I'm from northern Japan.I came here for the first time!」
と,この土地のローカルでないことを示そうとした。
後半の初めてアピールは相手も賛同した。彼女も福岡が初めてだったらしい。
「ノーザン・ジャパン」に対しては,絞り出すように「Hokkaido…?」との返答。惜しい。

「ニアー。I'm from Aomori.」
「uhh」

との返答。惜しい。アオモリを世界のAOMORIにしなければ。
彼女には北日本にも是非来て貰いたいものだ(既に行ったことがあったかもしれないが)。

「ツーリスト」同志の出逢いに感謝し,彼女と別れを告げ,櫛田神社を後にした。

5.回廊〈川端通商店街〉

川端通商店街。
博多華丸氏の広告が,福岡に居る事実をより深く実感させる。

なるほど,これは賑やかな通りだ。
全蓋王国西日本,九州に来て初めての全蓋式アーケード。
歩くだけで養分を受け取れる。

川端通商店街は,川端中央,上川端の2つの商店街振興組合から成り,約400mのアーケードに130余りの店が軒を連ねる。
北は明治通りと博多リバレイン,南は国体通り・キャナルシティ博多に接続し,博多川を渡るとすぐ中洲に出る。かなり至便なロケーションである。
古くからの店と,よく見るチェーン店が丁度良いバランスで組み合わさっている印象だった。

アンパンマンに見送られ,アーケードを出る。

明治通り「川端通り」交差点で左右を見渡す。
左には中洲のビル群,右手前はふくぎん博多ビル,そして道路向かい側には博多座。

「博多リバレイン」。
福岡市主導の再開発により平成11年に開業した複合商業施設群だという。
正面のこの建物は「リバレインセンタービル」であり,博多リバレインモールや福岡アジア美術館が入居する。
デ,デカい………!!

福岡の再開発スケールの大きさに圧倒されながら,中洲・天神方面へ歩きだした。

〈03〉へ続く。


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