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各都道府県の海事文化遺産(イントロ)

みなさんに、水中・海事文化遺産についてもっと身近に感じてもらいたいので、全国の水中・海事関連の遺跡・遺産をまとめることにしました。


と、理想的な形で進めばよいのですが、なかなか時間が取れなくなりました。でも、ぼちぼち進めていきたいと思っています。今のところ、試験的に有料記事としています。時間・労力とそのリターンを考えると、無料で提供は難しいですので、ご理解ください。


都道府県別に北から始めたいと思います。まとめ途中のデータなので、引用はお控えください。そのうち研究などでも活用していく予定ですが、今は、いろいろなデータを集めている状態…途中経過という感じの認識でお願いします。

データや情報に誤りもあるかと思います。指摘していただければ修正します。いや、教えていただけるとありがたいです。水中遺跡の保護は、ひとりではなしえません。多くの人に関心を持ってもらうことが大切。

考古学や歴史の専門家にとっては、つまらないデータかもしれませんが、そもそも、ここで情報を紹介する目的は、

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というのも、世界には数十~数百万件の水中遺跡が知られていますが、ほぼすべて開発関連のアセスメントや不時発見など一般の人の協力のもと確認されています。しかし、日本では水中遺跡について知っている人がほとんどいないため、発見されても報告されなかったり…。また、海洋開発に関わる工事でも未調査で開発が進みます。そのため、水中遺跡の数は他国に比べ2~3桁少ないのが事実。

そのために、不完全な情報でもこのように公開しています。「あれ、うちの近所にも水中遺跡あるじゃん?」と気がついてもらう。もしくは、「隣町にいろいろあるから、うちの町にもあるはずだよね」と疑問に思ってもらうこと。それを目的としています。

事実誤認はできるだけないよう心掛けてはいますが…日本全国広いので、得意なエリア不得意なエリアがあるのは当然…。お手柔らかに。新たな情報があったら随時追加・修正していき、みなさんと一緒にデータベース化していく…そんなことが理想です。




大体以下の内容について書いていきたいと思っています。今回は、これから始まる連載記事のトリセツ。

これから書く内容について…

その地方の水中遺跡・海事文化の概要・調査の歴史などをざっと紹介し、以下の点について情報を出していきます。

  ①水中遺跡・主な海揚がり品の情報など
  ②船・舟の部材などが出土した遺跡
  ③海難事故・海事記録
  ④海事関連の史跡・遺産など

①水中遺跡に関しては、それなりに網羅しているのではないかと思います。ただし、20世紀の遺産と戦争遺跡は、ここでは積極的に挙げていません。ちょっと数が多いのと、個人的にはそっとしておきたい、という感情もあります。残念ながら、戦争遺跡は比較的簡単に見つけることができます。そのため、荒らされてしまう可能性もあります。データベースは保持していますので、特集として書いてみたり、近くで開発が行われる場合などに引っ張り出して、破壊される可能性がないかチェックしてみたいと思っています。もしくは、ご要望があればおしらべします。 

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各都道府県の水中遺跡のデータベース作成中…

②船材などが発見された遺跡(内陸も)を紹介したいと思います。私が紹介するのは、ほんの一部です。たくさんの遺跡から船の部材が出土しているでしょう。用途不明木材なども船材の可能性も大いにあります。船材は、転用されることが多いのが特徴です。実際の船だけではなく、船・海事に関わる線刻画や装飾古墳、舟の形をした土製品などなども貴重な資料となります。これは、ちょっと紹介していません。調べ切れていないのが現状です。この手の資料は、別途まとめようかと…。時間があって資料がそろいそうな場合は追加しようかな。

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博多遺跡群出土の船材

③水中遺跡、特に沈没船を探すには、文献史料が大切です。海難事故の記録や当時の港の様子などをうかがい知ることができます。沈没や座礁の記録は、その特定の船でなくとも、その場所が海の難所であったことなどを示してくれます。海外では、文献記録により海難事故があった周辺は、自治体で把握され、工事・海洋開発に際して調査が行われる(いわゆる周知の遺跡)ことが良くあります。

海難記録の数、どれくらいあるかご存じでしょうか?資料の残存具合、市史などにどのように編纂されているかにもよりますので、正確に海難事故件数を知ることはできません。文化庁・九州国立博物館が全都道府県に依頼して市史などから海難の記録を吸い上げる作業を行ない、およそ6000件のデータが揃っています。ただし、これは市町村など自治体に残された記録の一部でしかありません。また、「XXX年、高麗より漂着するもの多数」という記録や、「大風により破船50隻」のような記録も1件としてカウントしています。編纂されていない史料にも多くの記録が残されているでしょうし、そもそも、残らなかった史料、そして、記録されなかった海難事故も多くあるでしょう。

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対馬宗家文書 (Colbase https://colbase.nich.go.jp/)

私の専門は、考古学なので文献史学はあまり得意ではありません。なので、情報は拾い読みしています。ここでは、基本、19世紀の記録は、ほとんど扱いません。数があまりにも多いので…。とくに幕末で有名な船舶や外国船籍はできるだけ拾って紹介します。都道府県によって状況は多少異なりますが、外国船籍 近世以前の沈没・座礁記録、江戸時代の記録の中から主なもの10件ほど紹介したいと思います。また、市町村別事例の件数の報告も考えています。

④海事に関わる文化遺産・建築遺産。これも、よく知られたものを中心に紹介しています。船着き場、護岸堤、また、海とのかかわりで津波など災害を記した碑など。細かく調べれば、各地方にたくさん残されているはずです。橋なども水域の利用を広くとらえると、海事文化遺産に入れてもいいのではと…。橋の基礎部分は水中に作ることもあります。その場合、建設方法は特殊なものになります。その場所に橋を架けた理由も、交通の便と川の流れの理解があったからだと考えられます。ここでは、水中・海事文化の幅の広さを感じ取っていただくよう、遺産のリストを作成しています。

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対馬藩お船江跡、水中遺跡であり土木・建築遺産

紹介しないもの…
民俗学的な事例、海の文化に関する歴史・伝承などは、あまり詳しく調べていません。本来は、それらも重要です。漁労の歴史、伝統船大工のお話、海運にまつわる伝承。調べたいことはいっぱい。もちろん、絵画史料なども舟を描いたものがたくさんあります。ただ、欲張って載せすぎると後々継続できずに後悔しそう。それれは、別の機会、もしくは、焦点を絞った研究で使いたいと思います。

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模型・アイヌの舟/イタオマチップ。舟の模型も貴重な史料となります。漁撈道具なども大切…手が回りません。(Colbase https://colbase.nich.go.jp/)



今後の予定を少し…
「水中考古学者」のわりに、随分と関係ないこと調べてるな…と思った方。はい、「水中考古学を定義する」を読んでいただければ、少し理解していただけるかな。


水中考古学と言っても、専門は海事考古学―Maritime Archaeologyです。つまり、人と海の関係を学ぶ学問です。英語圏で言うMaritimeを「海事」と訳していますが、日本語だと「水域」もしくは「水に関わる」と言った方が適切かもしれません。水運の歴史、人類の水の利用とかかわりの歴史を学んでいます。

研究対象が海の中にあることが多いので、水中考古と呼ばれますが、水中にある遺跡に特化しているわけではない…。ですが、水中にも遺跡があることを知ってもらわないと、どんどん破壊が進んでしまう。それは、何としても避けたい!公然と行われている遺跡破壊を止めたい!そのための活動を続けています。


今のところ…

1週間に一回ほどの割合でアップデートを考えています。全国制覇まで1年はかかるかもしれないですね。一応、北からですが、順番の入れ替えがあるかもしれません。気長にお付き合いください。

と、それが当初の予定でしたが…

なかなか時間が取れません。1か月に一度、もしくは、それ以上かかるかもしれません。落ち着いたら加速させていきます!




参考資料 (主なもの)

全国の資料をあつめています。引用元などは、そのうちまとめて公表する予定ですが、大まかに、以下のモノを使っています。興味のある人は、個別に調べてみてください。

九州国立博物館 水中遺跡の保存活用に関する調査研究 成果報告書1~5

文化庁 水中遺跡保護の在り方について: 報告

文化庁 水中遺跡保護の在り方について : 報告 (資料編)

近世以前の土木・産業遺産
http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~baba/index.html

日本列島における原始・古代の船舶関係出土資料一覧 国際常民文化研究叢書5 -環太平洋海域における伝統的造船技術の比較研究  深澤 芳樹 

アジア水中考古学研究所(ARIUA) データベース             海の文化遺産総合調査プロジェクト     http://www.ariua.org/projects/overallsurvey/

全国遺跡報告総覧
https://sitereports.nabunken.go.jp/ja

国立文化財機構所蔵品統合検索システム
ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

「海知る」海上保安庁 海のGIS https://www.msil.go.jp/msil/Htm/TopWindow.html


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海上保安庁の「海知る」システム 沈没船・海底障害物を表示

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