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Shippioにおけるソリューション定義のためのUXリサーチ事例

Shippio Product Design Managerの西藤です。(Twitter: K_Nishito
先日新規プロダクトの立ち上げにおける顧客ニーズ発見までのプロセスを振り返るというnoteを出しました。その中のプロセスを、「UXリサーチ」という観点で少し振り返って書いてみます。

はじめに

今回の取り組みは、自由度の高い状態からソリューション方針を定義していくものでした。私自身、自由度の高いソリューションを定義する際はよく簡易的なコンセプトプロトタイプ(以下、簡易プロト)をいくつか作成し検証を進めています。その際に意識した点を4つほど簡単にご紹介します。

  1. 「簡易プロト」で潜在的な顧客の期待を探りに行く

  2. プロトタイプは、So-Whatを意識した複数方針で発散する

  3. ヒアリングは、良し悪しではなく「アウトカム」

  4. 上記武器を持ってデザイナーとして上流から関わる

1. 簡易プロトで潜在的な顧客の期待を探る

今回は主に下記について理解を深めるために簡易プロトを作成し、実際の物流事業者へのリサーチを行ってきました。

  • ビジネス要件を満たすためのソリューションのあり方

  • 初期顧客の輪郭と感じる価値

  • 今後の開発の軸・優先度(の決め方)

今回プロトタイプとして用意したものは主に「プロダクトの営業資料(提案資料)」です。(toC向けのサービスではLPなどでも代替できると思います。)営業資料を活用する利点は下記のとおりです。

  • 提供者目線にならない: 「顧客の言葉で」価値・メリットを端的に整理できる

  • アウトプット/アップデートが早い: デザインがない状態でも、コア体験のイメージさえあれば主要な顧客FBを貰える、アップデートもすぐに行える

  • FBの質が高まる: 「導入する / しない」のリアクションをよりリアルにもらえる

コンセプトテストのための提案資料の表紙

なお、細かく言うとプロトタイプの形式は下記3種類くらいがありました。

  • ライト版: 5分程度で話ができるよう、1-2枚の説明紙 (多くの方針を検証比較する際)

  • ノーマル版: 正式な提案資料として、15-20 ページ程度の訴求紙

  • ヘビー版: 上記に加えてfigmaでデモを準備

参考までにアップデート/ 作り変えの回数・頻度は下記のとおりです。

プロトタイプの種類・アップデート頻度

2. So-Whatを意識した複数方針で発散する

上記目的に紐付いてプロトタイプを作成する時に、下記の3つの点を意識しました。

  1. So-Whatを意識: 機能ではなく「方針」(今後の意思決定軸)を定めること

  2. 上記の差分を明確にし、振り切った案を作成すること

  3. 定義した方針に引っ張られず、最終的には全て捨てる覚悟を持つこと

2-1. So-Whatを意識する

プロトタイプ作成でつまずきがちなのが、ソリューションの「機能そのもの」を評価するだけになってしまうこと。もちろん目的によってはアリですが、検証した結果のSo-Whatの変化は微々たるものになってしまいがちです。
今回はもっと大きく「今後の意思決定軸」を明らかにすることを意識しました。ざっくりいうと、このサービスの今後の開発指針(実務者の業務効率化、サービス品質向上、xxx など)として分岐しそうな方向性の発散をしながらソリューションを深めていきました。
そうすることで、プロトタイプへの反応と今後の指針がひも付きやすくなります。

2-2. 各案の差分を明確にする

上記のようにソリューション方針を考えると、ほぼ必ず「複数」の案が出てくるはずです。(出てくるくらい考えるべき、と考えているのかも?)
それらの案を、できるだけ「振り切って / 重複なく」考えることで各プロトタイプへのリアクションが解釈しやすくなります。(方針が定まったら、その軸に基づいてすぐに優先機能を考えられる状態。)

2-3. 最終的にはすべて捨てる覚悟を持つ

プロトタイプを作るとき、全ての案に対して「絶対行ける」と思えるくらい考え抜くことが大事です。が、それらを気に入りすぎてしまうとインプットが歪んでしまうので、「絶対にそのまま行けるわけはない」という心持ちも同時に持つようにしています。

3. ヒアリングは「アウトカム達成の道筋が見えるまで粘る」

ヒアリングの際は、「アウトカムが達成できるか」「できないとしたら何が不足しているのか」を理解することを徹底しました。

「プロダクト開発に活きるUXリサーチ」より引用

プロトタイプを用意する際によくあるケースが、単に「プロトタイプに対してどう思うか・良いと思うか」という聞き方になってしまうこと。上記のような聞き方は徹底的に避けました。(以前、プロトタイプへの反応としての”よい”は、居酒屋に誘ったときの”行けたら行く”くらい信用ならないものとつぶやいたことがあるのですが、それと本当に同じです。)

今回はアウトカムが達成できるかを0-10で尋ね、その点数の不足分を聞き切る方法をとっていきました。(もちろん上記を理解する上で「従来の何の行動を代替しに行くのか、代替手段に対してどのようなメリットがあるのか、そのメリットを提供することでアウトカムにつながるのか」という理解も重要なのですがややマニアックなので割愛)

なおここでいうアウトカムとは、下記2つ程度のいずれかとなるケースが多いです。

  • ビジネスアウトカム: 導入する/しない、料金を支払う/ 支払わないなど

  • ユーザアウトカム: ”対象としている業務がなくなる、XXXが置き換わる、もしくはそれらに近いもの(推奨度) など

上記検証を進める中で、「もうちょっとこうだったら・・・」という部分をアップデートしながら、検証を進めていきました。

4. 「簡易プロト」デザイナがより上流から関わる上で重要な武器

これらの動きは、必ずしも「検証」のためだけでなく、チームで議論を深める中でも重要になってきます。
特にPdMと一緒に動いていく中で、PdMの考える「WHY」を実現する「WHAT」を検討する中で、これらの発散⇔収束は必須だと思っています。
WHATの具体化が深まるからこそPdMもWHYをより深められる、その結果WHATもよりシャープになっていく、という動きは今後も大事にしていきたいなと考えています。

最後に

「プロトタイプ」というといろんな意味で使われるかもしれないのですが、私自身は「問いに答えを出すための最小限の刺激物」と思っています。時に資料であり、時にDesign モックであり、時にチラシであり、時に架空リリースだったり。潜在的な期待を捉えるためにも、「可視化」の力はとても強いと思っており、このあたりの動きはどんどん広げていきたいです。

自分自身の備忘メモ的になってしまい恐縮ですが・・・こちらにて、UXリサーチ/デザインリサーチ Advent Calendar 2022参加記事とさせていただければと思います。

UXリサーチ・デザインリサーチに関してご興味ある方がいたらぜひTwitter( K_Nishito)などでお声がけください。

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