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建築基準法12条

しおやです。

今回はいつもと少し変わった話です。

建築士の仕事で一番認知されているのは設計業務だと思います。(人によって違うかもしれませんが、「建築士」で画像検索すると分かりやすいです。)
シオヤデザインも設計業務がメインです。

他にも建築士の資格があるとできる仕事というのはいろいろあるのですが、その中であまり知られていないもののひとつに建築基準法12条による点検・報告というものがあります。
※特定建築物調査員・建築設備検査員という資格保有者もできます。

建築基準法12条

建築基準法12条は1~9項までありますが、民間の建物は1,3項、公共は2,4項でその義務を課しています。
そして1,2項では建築物の敷地、構造及び建築設備について、3,4項で特定建築設備等について課しています。
5~9条は…置いておきましょう笑

対象となる建築物は特定行政庁ごとに異なりますが、多くの人が使用し、劣化等があると使用する人に危険がおよぶ可能性がある用途です。

たとえば神奈川県では下の用途が対象です。(ややこしいですが、神奈川県の中でも、横浜市や川崎市などの12市においては、建築主事を置く市町村の長を特定行政庁と規定されていて、条例や規則などが微妙に違ってきますので、下記とはまた違うかもしれません。)

・劇場・映画館・演芸場
・観覧場(屋外観覧場は除く)・公会堂・集会場
・病院・診療所
・ホテル・旅館
・共同住宅・寄宿舎
・就寝用途の児童福祉施設等
・体育館・博物館・美術館・図書館
・ボーリング場・スキー場・スケート場・水泳場・スポーツの練習場
・百貨店・マーケット
・展示場・キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー・ダンスホール・遊技場・公衆浴場・待合・料理店・飲食店・物品販売業を営む店舗

この定期報告を専門にやる会社もありますが、そうではなく、設計事務所が行うことも可能です。

私はこの仕事に携わったことがあるのですが、最初は12条という設計ではほとんど見ない法規を「え~、こんなやつおったんや!」くらいな感じで少し驚いた記憶があります。
簡単に言うと、建物全体を見て回って、安全上、防火上又は衛生上特に重要な点を見ていき、報告書にまとめます。

例えば

例えば何か災害があったときのために逃げるルート(避難経路)というものが設計時に考えられます。そのルート上に物があると逃げにくくなるため、基本的にアウトです。これは、所有者の都合で「ここにしか置けない」と言われても、災害時に逃げられず命を落とす可能性につながるので置いてはいけないのです。

これは設計時の想定と建物利用者の使い方とのせめぎあいでもありますが、これまで火災時に避難経路に物があって逃げられなかった事故は繰り返されていて、多くの人が亡くなられたこともあります。
また火災時の煙を外に出す排煙窓が起動しなかったりも、人の死の原因になります。

悲しい事故が起こらないためにも、12条定期報告の調査・検査には協力して、指摘事項には対応していくのがまず最低限必要になるのだと思います。(定期ですので、年に1回や3年に1回などしかないため、日ごろから気に掛けることが重要です。)

設計へのフィードバック

設計事務所がこの業務をやってみて良いと思う点は、普段なかなか見ることができない部分を見ることができる点です。
なかなか対象となる建築の用途を設計する機会も無いですが、いずれは携わるかもしれず、その時には実作を見てるのは少なからず経験値になります。
また劣化具合や改修方法を見ることも勉強になり、設計に活かせるとも思います。

設計時にも利用しやすさやメンテナンスしやすい設計が必要です。そのためには発注者の意識も必要になってきます。そして施設管理者にもまたしかり。責任の転嫁では無く、段階ごとに移っていくのだと思います。


今回は少し変わった話でしたが、いかがだったでしょうか?

自宅を建てるシリーズやその他の話も書いていますので、読んでいただけると嬉しいです。
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