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硝煙 【詩】

ぶっ放した後の
硝煙のにおいで
幸せになれる

窓枠を這っている
むすうの蜥蜴と
その影の交錯

弾丸を装填しながら
八月を憶い出す

棕櫚の暗がりで
気の荒い芸術家のように
動物の白骨を撫でる
狩に憑かれた
ノーベル賞作家のように
チーターに狙いを定める

撃ち抜いた後の
幸福感に焦がれて
両手が震えた

(もう子どもじゃないだろう)

その瞬間
大統領の頭から
溢れ出す爬虫類
あの暑い夏の日の朝からずっと
射程に捉えていた

ショーウインドウに並んでいたものは
鍵束 宝石 口紅 山高帽子 ライフル
蒼白い銃声が世界を駆け巡った

あの街は
あの日は
そのにおいを忘れられない

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眠れない夜に

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