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仔象の夢 【詩・メルヘン】

音楽室で
仔象が眠っている
深海よりも深い眠りを眠っている

オルガンが鳴っている
薄い香草のかおりが
部屋の中にほのかに匂っている

仔象に抱かれて眠りたい
仔象の夢の中で眠りたい
そう思った君は
仔象の腕の中にもぐりこむ

すると
海溝よりも深い眠りが君を襲い
海溝よりも深い眠りを君は眠り
さて どのくらいの時が過ぎたのか
もうわからない

夢を見る仔象と君の間を
いくつもの彗星が流れて消えていった

時を経て君は目覚める
君は気づく
白い鼻が空に向かってずっとのびていて
月にからまっている
君は振り子になっていた
月の振り子になって時を刻んでいた

そういえばあの音楽室の時計は
不思議な時刻を指していた
振り子の周期は彗星の軌道と重なっていた

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