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二日酔い

二日酔いの、朝?

途中一度も目覚めることはなく、ようやく体を起こす。ベッド脇に置いてあったスマホを確認すると、すでに14時であることを告げていた。

自分の部屋で他に寝ているはずの二人はどうやらまだ目を覚ましていないようである。人がいるはずなのに音がしない。その状況がより一層、部屋に静けさをもたらしていた。

窓際に並んだ大量の空き缶やボトルは、一夜明けて主役へと変貌していた。酔いが回った酒の席、誰がボトルになんて着目するだろう。十分に騒いだ後の空っぽな部屋、ど真ん中にたたずむボトル。飲み干されたあと、翌日になってもなお放置され、そこでようやくボトルがボトルとして生まれ落ちる。このボトルがまた、部屋の静けさにより拍車をかけている。

頭痛がして、喉も乾いている。だがしかしベッドから歩き出したくない。二度寝するか?と目を瞑る。そんな時に限って睡眠は十分足りているものだ。14時を過ぎるまで一度も起きることなく眠り続けていたという事実を振り返る。そりゃ寝れないよな、と観念して、ベットでまた体を横にする。

なんだかとても懐かしい。そんな匂いがした。二日酔いの頭痛とだるさが自分と世界を繋いでいるはずの橋を完全にシャットアウトさせている。布団に残る自分の匂いは、どこへも行かずにただ自分の鼻の中で籠っている。

それはまるで学校に行きたくない日に風邪をひいたときのような、ずっと寝ていても母親がご飯を運んできてくれたときのような、ベッドの上でただ転がるだけの自分が完全に許されているような、そんな気分だった。

脳裏に昨日の記憶が蘇る。酔いが回った中、白熱した政治の議論。オランダと中国と日本。投票率の違い、人権に対する捉え方、感じ方の違い。突如始まったカラオケ大会。よく歌った、声量はどのくらいだっただろうか。すると訳もわからず観始めた天気の子。これは多分自分が勝手に流し始めた。十分過ぎるほどに酔いが回っている中、これ1.25倍速ちゃうか!と何度もパソコンの画面をいじるも、その度にああ、普通かと勝手に納得していた自分の姿が虚な記憶の中に残っている。

なんだかオランダに来て初めて丸裸になれたような気がして、思わず笑ってしまった。ものすごく安全で、長らく感じられていなかったような感覚。何をやっても許される、なんでもできそうな心持ち。

カーテンを明けた先に見えたいつもの曇天も、今日はなんだかいいものに見えている。二日酔いマジックみたいなやつかもな、まあそれはそれということで。



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