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胡散臭い、話

 「胡散臭い」という言葉は、一体いつ覚えたんだろう。
 占いとか風水、スピリチュアルな雰囲気のあるもの、そういったものに対して、同じような匂いというかオーラがぷんぷん漂ってくる気がする。

 わたしはいままで、胡散臭いものに対しては「君子危うきに近寄らず!」の態度を貫いてきた。

 例えばわたしはヨガと名のつくものに「胡散臭いオーラ」を感じ取っていた(アシュタンガヨガ、とか名前が長いのは特に)。ここ数年は、筋トレに目覚めていたこともあって「あんな緩い動きで痩せるわけもないし、インチキだわ!」くらいに目くじらを立てる始末。
 そしてヨガとセットでよく見かける瞑想。実にあやしい。わたしは修行僧じゃないんだし、悟りなんて開けるわけないじゃないか。と、かなりの誤解も手伝って、やっぱり怪しいと思い込んでいた。

 ところがだ。
 そんなヨガと瞑想を、ある時ふと気づいたら、わたしが憧れる人たちがみんなやっていることに気づいた。近藤麻理恵さんや長谷川潤さん、エマ・ワトソンやミランダ・カー。

 あれ?わたしが憧れている人って、みんな胡散臭い・・?

 かなり衝撃的だった。よく調べてみたら、パワーストーンとか風水といった別の趣味まで見えてくる。おまけに最近とても今更なマイブームが来ているさくらももこさんも、”スピリチュアル”な話が好きだ。
 胡散臭さも極まれり。

 わたしはかなりの衝撃を受け、逆にぱーんっと開き直った。
上等だ、わたしも胡散臭い同士になろうじゃないか! 

 わたしは徹底的に胡散臭くなろうと試みた。
 YouTubeでヨガの動画を探し、瞑想について解説された本を読み漁り、そして実践した。毎朝のヨガはいつの間にか定番となり、瞑想は「むずむず」して欲するほどになってしまった。さらに風水を勉強して、不要なものを手放したり玄関のたたきを水拭きしてみたり、水回りをせっせと磨いたり。更には、どこかで習った訳ではないけど、朝食時にはこれから食べる物やその生産者、そして食器を作ってくれた人、運送してくれた人に感謝の祈りをささげるようになった。

 とてもいい調子に胡散臭くなっている。

 そんな折、近藤麻理恵さんのYouTubeチャンネルで驚くべき動画が配信された。

 サムネイルだけでものすごく、ものすごく怪しい。
しかし、この動画を見ていたらすとんと腑におちることがあった。

 こんまりさん曰く、風水のベースは掃除と片付けで、それらによって自分の生活を快適にすることが目的とのこと。
 そうか、ヨガや瞑想、風水やパワーストーンやそのほか諸々の”胡散臭い”軍団の正体は、自分のQOLを高めるためことを目的としたツールだったのだ。そして目に見える効果や変化みたいなものがほぼ感じられない、という点が共通している。これが実に胡散臭さを助長している。

 ヨガのポーズをゆったりとっている姿や瞑想する様子、パワーストーンを愛でるさまは、エマ・ワトソンであればさぞかし美しいと思うし、むしろ見ている人の心を癒す効果すら期待できそうだが、わたしがやっていても三十路女の怪奇な行動に映るだけだ。自分でも思う、まさに胡散臭い。

 ただ、断言できるのは、総じて「清々しい気持ちになれる」こと。痩せたり美人になったりする訳ではない。でも確実に機嫌がよくなる。本当によく考えられているし、同時に人間が陥る状況って今も昔も変わらないんだなと思う。

 ヨガをすると普段は緊張やストレスでがちがちになっている全身を弛緩させ、深く呼吸をすることができる。瞑想は、あれもこれもと考えてストレスが溜まりまくっている脳(心)を休ませることができる。風水にはまれば家が綺麗になっていくし、住んでいる人も快適だから機嫌がよくなる。とても当たり前だけど、意外と滞りがちな”生活のコリ”がほぐれるのだ。

 目に見えるもの、人からどう見られるかを優先しがちだけど、自分の内面をケアできるのは自分だけ。だって、人からは見えないのだから。だからみんな、自信を持って胡散臭くなればいい。

 胡散臭さ、万歳!

 ・・・ただし、本当に怪しいものもあるかもしれないから、そこは自己責任で。

2020.6.27  shiori

 



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