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私が私を大切にできた日

とても久しぶりに本を読んだ。
しっかりした本棚がないことを理由に、ほとんどの本は実家に置いてきた。手元には今、小説はたったの5冊しかない。そのうちの1冊を読んだ。村上春樹さんの『アフターダーク』。

なぜもっと持ってこなかったのだろう。ホームセンターで990円で売っていた3段のカラーボックスの上段には、ビジネス書と自己啓発本、証券外務員の問題集が詰まっている。実家から持ってきた本もあるし、5月に職場の上司やビジネス仲間に勧められて買った本もある。外務員試験は4月に合格したけれど、この先の人生で実務的に役立つことはきっとないだろう。

2段目に、小説が5冊と、エッセイ本が2冊。この街に引っ越してきてから読んでいないものばかりだ。たまにページをめくるときもあったけれど、数ページでやめてしまった。オーディオブックを5月までは契約していたから、通勤時間や部屋の掃除をしている時に宮部みゆきさんの『模倣犯』を聴いていた。今考えれば、多忙な毎日のなかで私が私を大切にできる貴重な時間だったように思う。

そんなこんなで、6月は活字にほとんど触れていなかったのだけれど、今日ふと『アフターダーク』が目に入って、ぱらりと開いてみた。この本を初めて読んだのは、確か主人公のひとり、マリと同じ19の頃だった気がする。図書館で借りて読んで、そのあと古本屋で買った。

村上春樹さんの作品はかなり読んでいるけれど、『アフターダーク』はあまり再読していなかったことに今日気づいた。大方のあらすじや好きな一節は覚えていたけれど、あれこんな話だったっけ?と結構驚いたからだ。それなのに、5冊のうちの1冊に、なぜ数ヶ月前の私はこの小説を選んだのだろう。わからないけど、ものすごく感謝している。今の私にぴったりと寄り添ってくれる本だったから。

私は感想文やレビューを書くのはとても苦手なのだけど、過去に何らかのトラウマや、乗り越えられない記憶があるひとに、必ず届く何かがある思う。

今日は、シャワーを浴びて、洗濯して、シーツと枕カバーを干して、掃除して、文章書いて、塗り絵して、本を読んで、料理した。今私はとっても満たされている。今日は私を大切にできた日。もう薬飲んで早く寝よう。



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