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【エッセイ】大好きな会社を辞めると伝えた日(2256文字)

大好きな上司に、大好きな会社を辞めると伝えてきた。

いっそ、会社や上司が憎たらしかったらどれだけ伝えやすかっただろう。会社の人たちは心から尊敬できる人たちばかりで、突然退職の意思を告げられた上司の対応はどこまでも温かかった。

「退職はすごく残念だけど、なあなあに働いていく人もいる中でその決断をできるのは凄い。尊いものだと思う」と言われたとき、不覚にも泣きそうになった。

なぜ、今日のことを書くのか。

GW明け初日の勤務を終え帰宅した今、すぐにでもベッドに飛び込みたいところ。でも今日書く。いつかこの決断を後悔しそうになった日に読み返すために、今の気持ちを言語化して残しておきたい。過去は美化されるものだし、そうでなくともかけがえのない思い出を沢山くれた会社だ。辞めなきゃよかったかもと思う日が来てもおかしくない。

でも、人に言われたのではなく自分でしっかり考えて下した決断なら、たとえ後悔することがあっても受け入れられる。だから自分の考えを残すことにする。

会社は好き。人も好き。でも私はここでは幸せになれない。

第一志望のこの会社に受かったときは心から嬉しかった。都会のオフィスに通うという憧れのOL生活。誇れる仕事と安定したお給料。優秀な人たちから受ける刺激。フレンドリーな同僚との交流。どれもこれもがキラキラと輝いていた。こういったものを手放すのは正直惜しい。

でも、今の会社で総合職として働いていくのはあまりにもきつい。割と真面目に生きてきた私は「一生懸命頑張ったら大抵のことはどうにかなる」という謎の自信があったが、その自信はこの数年で打ち砕かれた。どれだけ頑張っても分からない。終わらない。辛さから抜け出せる未来が見えない。私より辛い人はきっといくらでもいる。でもその辛さを「きっつー!!」と言いながらも楽しめる人が多くて、私は残念ながらそうではなかった。

本音と向き合う。

ここでは自分を取り繕うことをやめると、私は総合職に向いていない。大きすぎる裁量権なんていらないし、出世も興味ないし、会社の課題を自分事のようになんて捉えられない。どうでもいいと思ってしまう。だけど、入社希望の学生たちには裁量権の大きさを魅力の一つとして語り、上司との面談では10年後のなりたい役職像を語って、さも会社の課題をどうすれば改善できるかを日々考えている若手社員のように振る舞ってきた。

でももう、自分に嘘をついて見栄をはるのはやめようかと思う。この数年間「真面目に生きてきたのに毎日なぜこんなに辛いんだ?」と心から不思議に思っていた。

今なら分かる。その答えは、自分のキャパを越える苦手なこと・興味のないことをしてきたからだ。ずっとそこから目をそらしていた。

私にとって、実力以上を求められることはモチベーションではなくただの苦しみだし、勉強は嫌いじゃないけど、それが興味のないこととなると一気に苦行になる。大企業じゃなくても、正社員じゃなくても、嫌なことをせず、つつましく生きていけるだけのお金だけ稼いで暮らしたい。どうせ仕事以外にも人生に困難は付き物なのだから、避けられる苦しみは避けて生きていきたい。

見栄やプライドや他人からの評価を無意識に気にしていたのだと思う。これだけのことにずっと気がつけなかった。

悩めるひとに。

私は家族や恋人や友人にとても恵まれていて「逃げてもいい」と言ってくれる人たちがいた。だけど、必ずしも周囲に自分を救う言葉をかけてくれる人がいるとは限らない。そんな人に向けて、敬愛する故・小池一夫さんの言葉をひとつ勝手に贈る。決めるのは自分だし、その責任は常に自分にあるべきなのだけど、背中を押す言葉はやっぱり必要だと思う。

「努力の方向を間違えないように」
すごく単純な人生の結論なのだが、
自分が得意でないことは、
基本的にやらなくていい。
自分の不得意は、誰かの得意なことで、
その人にまかせればいい。
努力の放棄ではなく、
努力の方向を間違えてはいけないということ。
このしんどい人生を少しでも楽に生きるコツ。

『だめなら逃げてみる』 小池一夫

心を楽にする名言が詰まった本。きっと自分を救う言葉に出会えるので、しんどくなったときにふと、思い出してみてくださいな。

残りの三か月、自分に何ができるだろう。

今後立場が上の人との面談もあるだろうし、退職時期も確定していないけど、おそらく7月末で退職することになる。早速だがそれまでの三か月をどう過ごそうか考えた。

◎自分の仕事を責任をもってやり遂げる。(当たり前か)
「丁寧な仕事をすること」「機嫌よく働くこと」がモットーだと謳っていたのに、日々時間に追われる中ですっかり忘れてしまっていた。せめて残りの期間はそうなれますように。

◎同僚と過ごす時間を大切にする。
環境が変われば関わる人が変わる。どれだけ仲が良くても、会社を辞めたら疎遠になるのは避けられないと思う。少し寂しいけど。だからこそ、これからの何気ない会話やランチの時間を大切にしたい。

◎感謝を伝える。
とにかく周りの人に助けられてきた会社員生活だった。どれだけ忙しくても手厚いサポートをしてくれた上司。休職中もずっと連絡してきてくれた先輩。いつもランチや飲みに連れ出してくれた先輩。しんどいときも支え合ってきた同期……挙げるときりがない。改めて心からのありがとうを伝えよう。

今日からどう生きてこう。

なかなかセンチメンタルになっているが、今の気分にぴったりのエモーショナルな曲でこのエッセイを締めくくろうと思う。

藤井風さんの『帰ろう』


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