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オクラの半分は優しさでできている

オクラをトマトとひき肉を煮込んで白飯と食べたくなった、そんな夏の暑い日。

さっそくその思いを実現させるために買い物に出かけた。坂だらけのこの町では買い物の計画をきちんと立てないと疲れてしまう。坂の上にある肉屋でミンチ肉を買い、下って行きつけの八百屋に寄ってオクラを買う。完璧。

肉屋では牛肉のミンチ肉を200g買った。その場で肉の塊をミンチにしてもらう。気温が高いので最短距離でオクラを買って家に帰らねば。

坂を下っていつもの八百屋へ。しかし、オクラが見当たらない。旬の時期のオクラがないなんて、私の完璧な計画が頓挫してしまう。
八百屋の周辺には野菜や果物を路上で販売している人たちがたくさんいて、そこにはオクラが売られていたのだか、路上で買うのは少しためらわれた。細やかな計量ができないからか、いつも500gか1kg単位で野菜や果物を買う羽目になる。しかもきちんと主張しないとデフォルトで1kg買うことになる。オクラ1kgもいらない。

どうしてもオクラが欲しい私は、八百屋のおじさんに「オクラはないん?」と問いかけた。すると八百屋のおじさんはその辺にいた従業員のお兄さんを呼んだ。そのお兄さんは私に「こっちにおいで」と言った。どうやらオクラのある場所に案内してくれるようだ。これで一安心だ、と思ったら連れて行かれたのは炎天下の中、八百屋の外の路上でオクラを販売しているおばあちゃんのところだった。

八百屋のお兄さんはそのおばあちゃんに「オクラが欲しいんだけど、1kgいくら?」と聞いた。おばあちゃんは耳が少し遠いようで聞こえなかったのか、お兄さんは先程より少し大きな声でもう1度「オクラは1kgいくら?」と言った。おばあちゃんが値段を答えるや否や、1kgもオクラはいらないと慌てて私が2人に向かって「ノスキロ!(1/2kg)」と叫んだ。
するとそれを聞いたお兄さんは袋をおもむろに手に取り適当にその袋にオクラを入れ、少し離れたところにあった計りで計量へ。1/2kgより多めに入ったオクラを戻して調整をし、おばあちゃんにノスキロだよ、と伝えた。そして私に向かって「ノスキロだから1.5JD(約300円)」と言った。
私が渡したお金をおばあちゃんは笑顔で受け取った。

八百屋のお兄さんからオクラの入った袋を受け取り、お礼を言うと彼は八百屋へ颯爽と帰っていった。自分のお店の利益にはならないのに、ここまで親切にしてくれるなんて。おばあちゃんに対する思いやりなのか、外国人である私を不憫に思ったのか…どっちでもいいや。

炎天下で売られていたオクラは少々しなびていたし、思っていたより多く買ってしまってオクラを食べる毎日になりそうだけれど、食べるたびに八百屋のお兄さんの優しさを思い出しそうだ。


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