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村田沙耶香「地球星人」

「コンビニ人間」に次いで、村田沙耶香さんの作品を読むのはこの「地球星人」でした。
「コンビニ人間」のときにも感じたことですが、
村田沙耶香さんの作品を読んだ後、
「現在の『常識』に、自分たちは囚われすぎているんじゃないか」という疑問が浮かびました。

今回の「地球星人」も、女は結婚をして、子を産まなければ、
「人間工場」の部品として、うまく機能せず、寂しい人生を送るという、
いつの間にか「地球」でできていた「常識」に溶け込めない人物たちが登場します。

自分の体の器官に、異性から興奮され、弄ばれること、
子孫を産むための「部品」として機能すること。
「自分の」体なのに、自分で自分のものの扱いを決めることができない、もどかしさ、やるせなさ、切なさ。
決めることができたとしても、それが多数派の意見と異なれば、悪いことをしているわけではないのに、首を傾げられて『でもさ』と諭され、時には咎められる。

人は、慣れる生き物です。
感じた違和感を、本人も意識しないうちに消化し、なかったことにできます。
消化して、世間一般の指す「常識」にぬくぬくと浸っていた方が
考えることも、傷つくこともなく、楽な生き方です。

でも、主人公は迎合できなかった。
みんなと同じことができない自分は、変なのかもしれないと思っても、最終的には似たような感覚の人たちと出会い、彼らと生活を始めます。
ラストにかけては、怒涛の勢いでページを捲りました。

なぜ子を産むのは女だけなのか。
なぜ人肉を食べてはいけないのか。
なぜ人は人を殺してはいけないのか。

たくさんの「常識」の枠を、
村田沙耶香さんはフラットな目で捉え、物語にその「なぜ」を載せています。
多くの人が消化してきたことを、ひとつ、ひとつ、丁寧に取り出していく。
あまりにも自分にとっては当たり前だったことが、
村田さんの作品を読んだ後は、もしかしたら百年後は「非常識」なことになるのかもしれないと思えてくるのです。

枠にとらわれれば、身動きが取れずに苦しくなります。
だからわたしは、そんなとき、村田さんの小説を開きたい。
村田さんの世界への問いかけに、耳を澄ましたいです。

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