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雨の日に

最近、今の職場の大繫忙期ということもあり、
精神的にぐったりと疲れてしまいました。
あまり人に振り回されるのは嫌だな、私が弱いだけなのかしらと、
考え込んでしまった昨日の夜。

毎朝早く起きて、
書き続けた小説を先日、文学賞に応募し終えたこともあり、
今日は目覚まし時計を掛けずに、自然に目を覚ましました。
カーテンの隙間から入る日の光は薄く、
窓の外を見ると、今日は雨。

アパートの目の前にある葉の先からは、
雨粒がピアスみたいにぶら下がっているかと思えば、
ぽたり、ぽたりと落ちていきます。
ちょっと疲れた私にとって、その光景は優しく映りました。

お昼はスーパーの近くのパン屋で久々に食べて行こう。
やりたいことやって、食べたいもの食べよう。

外の景色を見ていると、ふっとそんな考えが思い浮かびました。
今日はこれをやって、あれやってと、頭を回転させる必要のない、久しぶりの本当に何もない日。

簡単な朝ごはんと運動と、お掃除を終わらせて、
ほぼすっぴんのまま、私は傘を差してそのパン屋に向かいました。

歩いていると、椿の花がいくつも落ちていて、
私はその光景を見るといつも少しどきりとします。
椿の、意志のはっきりとしていそうなあの華やかな色、大きさ。
口紅の色みたいで、妖艶な、あの感じ。
雨の日は花や葉の色が濃く見えて、
その椿の光景には、つい目がいきました。

パン屋さんでイートインをさせてもらい、
お総菜パンを頬張りながら、窓に当たる雨粒を見たり、
入ってくるお客さんを見たり。
「一人であんなに買って、明日の朝にでも持ち越すのかな」
「ヨガマット持っているから、運動帰り?」
「急いで食パン買って行ったから、個人経営のお店でもしていて、
パンを仕入れるの忘れてたのかしら」
失礼とは思いながらも、色々想像しては、人には色んな人生があるものねと勝手に納得していました。

スーパーで買い出しをして、
帰り道、水たまりの様子を歩きながら眺めてみました。
新しい雨粒たちがその上に着陸しては弾け、
広がっていく、小さな波の輪。

雨ってこんなにいいものだったろうか。

いつもだったら、雨の日はなんだかブルーな気分なのですが、
疲弊している心に、降ってくる雨が沁みていくようでした。


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