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Moe ――報われない僕らの恋の記録 〔Prologue〕

⚠本記事はnote創作大賞2024のために加筆したプロローグです。なおコンテストに際し公開済みだった本編も大幅に改稿しました。

【あらすじ】

高校生のユウタはクラスメイトのトウカを特別に思っていたが、映画撮影に来ていたタレントのモエと出会い、彼女に惹かれるようになる。そして、モエからいくつかの秘密を明かされた。それは、この世界がゲームで、モエはアバターだということ。ユウタの担任の高波がモエと同じプレイヤーで、彼女の恋人だということ。ユウタはモエへの気持ちを諦められないでいたが、〈現実〉の彼女は余命いくばくもない状態だった。


『Moe――報われない僕らの恋の記録』



▶Prologue


 彼女がフルダイブVRゲーム『SoL』にログインしたのを見届け、僕はパソコンに向かった。彼女の要望通りSoL端末の設定に細工を加えたあと、ブラッドレモンソーダでひと息つく。

「さぁて、今日も働きますか」

 すでに日常となった学校という職場に、僕はいつもと違う期待とともに向かう。なぜなら、今日は特別な日だからだ。

 小高い丘にある高等学校は、屋上にあがると街が一望できる。遥か遠くに海が見える。そのロケーション抜群の職場で、今日は早朝から人気タレント〈モエ〉を主役にした青春映画の撮影が行われているはずだった。

 いつもより早く出勤したつもりだったが、同僚たちのほうが早かった。しばらくして野次馬が校内に侵入したという報告があり、体育教師が駆けていく。僕は第一資料室に向かい、誰もいないのを確かめて授業用資料を入口の傍に置いた。

 これは、ちょっとしたサプライズのための下準備だ。

 僕はその下準備をしながら自分が高校生に戻ったように浮かれていたが、後々この時の行動をひどく後悔するようになる。が、まだ何も知らない僕はサプライズに必要な役者を探すために資料室を出て西棟玄関に向かった。

 目に飛び込んできたのは自転車で野次馬の横をすり抜けて駐輪場に向かう担当クラスのユウタ。彼ならサプライズに適任だと思ったが、この選択もまた長く僕を苦しめることになるのだった。

(Prologue終――――次話▽20XX/05/29)


20XX/05/29

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20XX/06/05

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