憧れの真珠を前に
ときめきを求める旅。
最終目的地はハンガリー、ブダペスト。
大学生の頃、友人の旅行記で見た、ドナウの真珠と呼ばれる夜景を、いつか、いつか自分の目で見たい。ずっとそう思っていた。
でもそれは、いつか、本当に遠くの未来のことだとも思っていた。
それが、自分でも思ってもみない近い未来で叶うだなんて、1年前の自分が知ったらどう思うのだろう。
この年末年始は暦が良くて、
プラハinブダペストoutの航空券が、他の候補地よりも安くて、
足枷になるものもなかったから、
たくさんの偶然が重なって、こんなにも早く叶えることができるのだ。
大袈裟だけれど、この世のありとあらゆるものへの感謝の気持ちを胸に、私はブダペストの駅のホームに降り立った。
宿のチェックインまで2時間。
大きなバックパックを抱えて街を歩きたくはない…
けれども、荷物を預けるにももったいない時間…
ということで、翌日の予定を前倒してカフェへ。
ちょっとお高いけど、とっても雰囲気の良いカフェ。
ハンガリーの伝統的なケーキのプレート。
幸せな甘さと重さでずっしりと心が満たされた。
しばらくゆったりして、宿にチェックインしたあとはいよいよ街歩き!
クリスマスマーケットも最終日。
その雰囲気を味わうことができて良かった。
そして、冬のこの時期のヨーロッパは夕暮れが早い。
もううっすら日が暮れていた。
憧れの景色までもう少し。あと少し。
足取りが軽くなる。
とうとうこの瞬間、憧れが、現実になった。
憧れの景色の中に私は立っているんだ!と思うと不思議な気持ちがした。
国会議事堂は遠くから見ると少し柔らかな印象を受けたけれど、
近くで見るととても繊細で刺々しくて、どこか脆い。そんな気がした。
翌日、太陽に照らされた姿は、これもまた違った魅力的な表情をしていて、
夜景を観に来たはずのこの街で、1番お気に入りの瞬間になった。
憧れの景色は、なんだかとても呆気なかった気がする。
もちろん、憧れていただけの感動や、喜びはあった。
景色だって美しかった。
でも、どこか喪失感を感じる。
憧れはずっと憧れのままで、手の届かない夢のままでいる時が、1番美しいのかもしれない。
なんて、考えながらこの街で、この旅最後の夜を過ごした。
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