見出し画像

パリで見た、確かな愛着と価値

Ultramod ウルトラモッド

フランスに来たら訪れてみたかったお店。
手芸や制作が身近な方なら知っている方も多いかもしれない。

Ultramodはパリの19世紀から続く、最古の老舗メルスリー・手芸店。パリはオペラ座の近くにどっしりと佇んでいる。200年も愛され続けてるってすごいなあ。

徒歩10分にあるホテルに泊まっていたので、散歩の途中に行こうということに。高鳴る気持ち100%で小躍りしながら向かう。ショーウィンドウ越しに映る空間はもはや、資材の美術館。少しの緊張を押し流そうと扉を開けると、神秘的な光景を目にした。

高い背丈にぴったりのスーツ身を包み、風を纏うおじさま。おじさんでも、おじいさんでもない、おじさま。贅沢な虹みたく並ぶリボンの前で、マダムと楽しげに会話している。

おじさまが、手芸店にいる。

私のお目当てはアンティークレース。ガラス窓の木箱の中一杯にはいってる。ときめく。どれも繊細で、儚くて…一本でもどこかに引っ掛かってしまえば、たちまち解けてしまいそう。

夢中になる私の横をコツコツ、と革靴の足音と共に通り過ぎた男性は、会計を済ませ、居なくなっていた。あまりにも意外でちぐはぐな光景に、最初はその男性が営業か取引先か何かかと勘違いしそうになったけれど、やっぱりお客だった。慣れた足取りからからするときっと、常連さんに違いない。

明くる日。
ウルトラモッドに勤務している日本人マダム2人とお話しすべく、(この話はまたいつか。)私はまた、ここを訪れた。ホテルから拠点を移し、現在滞在中の家はパリ郊外、ここまで片道50分。今回は少し遠出のお出かけ気分で。

やはり、手芸を趣味にしている方の中ではかなり有名なお店らしく、(パリの地元民にも、観光客にも)お昼頃に訪れた時にはお客さんが4〜5組居た。ここを目当てにパリに来る人もいるみたい。

そして客足も落ち着いたお昼過ぎ、ひとり、おじいさんが大きな袋を抱えてお店に入ってきた。無造作にその袋から大きな布切れのようなものを取り出す。よく見えなかったけれど、服かシーツかなにかだったと思う。修理をするのかな?お店の男性にそれを見せ、2人で会話しながら店の奥へといってしまった。

なんて素敵で新鮮で、愛おしい光景なんだろう。

別に日本と比べるつもりはない。日本も挙げればきりがないほど良いところ沢山だから。けれど、この瞬間、これまで育ててきた私の"ものに対する価値観"が大きく揺らいだのは事実。

日本を出発する前、フランスに行ったら服が欲しい。そう思って荷物も最低限しかもってこなかったし、雑誌やインターネットでフランスらしい服屋を何件か調べていた。が、結局、ひとつも行かなかった。まだうまくは言えないけれど「なんか違うな。」と感じたのだと思う。

もちろん服はすき。今もこれからも。そこに紡がれた物語と空想、歴史を咀嚼する、そしてこれを私のものにしたいと願う。でも、この先は私のストーリーを詰め込むのもいいな。

確かな愛着と価値を黙々と育てる。
私もそんなおばあちゃんになりたい。
早くなりたい。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

みなさんのきもちをしっかりと受けとって、カタチにしていきます。