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溶けてしまったパリの街並み

荘厳な建築物に、光を含む白髪が素敵なマダム、
赤い花を飾った可愛らしいアパルトマン。
街中にはプラタナスの木々が石畳の歩道に
涼しげに影を落とす。
繰り返し映画で見た奇跡のような一瞬が、
当たり前よという顔で次々と流れてゆく。

そこにあるのに、
バスを降りれば触れられる距離なのに、
未だに私にとって遠くにある景色だった。
そこにあることが信じられなかった。

視界は良好。短く切った前髪のおかげ。

なのに、全てを五感に焼き付けようとすればするほどに、頭からするすると溶け出していく。

脳のスポンジが驚いて吸収しきれていないのかも。
私の日常の景色とはかけ離れすぎてるからね。
もしくは、脳も一緒にうっとりしちゃってるか。

わたしは今、この上なく興奮している。
ふわふわと浮いているような、
けれどエネルギーに満ちた不思議な感覚。
まさに夢見心地というところなのかも。

けれど、戸惑いもあった。
長らく夢見ていたはずなのに、
いざその夢の世界が繰り広げられると、
私なんかがここへ来てもいいのかと思ってしまった。
(一瞬でもそう思ったことは反省。)

そんなことはどうでもよくて、
ただここにいられることが嬉しい。
大切なのはそれだけ。
嬉しいとか幸せとか、それと、
今日までに起こったすべてが私をここに連れて来てくれたってこと。
それだけだ。

バスを降り、3980円(税込)の履き慣れたスニーカーで凸凹したパリの石畳を歩く。

ついに、パリに来たぞ。

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