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タイで痔の手術をした夫の話④:夫、帰還。



おかえりネロ


私が博物館に行くのを断念してから小一時間、
ベッドを運ぶガラガラという音と複数の人が談笑する声が近づいてきたので
もしかして!と思ったらやっぱり夫が運ばれてきた。

帰還した夫は安らかな笑みを浮かべており、
8人ほどのスタッフがささやくように笑いながら1、2、3、と掛け声をかけて
夫の体を持ち上げパラマウントベッドに戻すさまが
フランダースの犬のラストシーンのようで…

ふぁさ…って


私はふだんから絶対笑ってはいけない時にツボりがちなのだが、
この時もマスクの下でプルプルしていた。

笑いをこらえるのに必死な私に
ナースさんがタイ語でいろいろ重要っぽい説明を始めたのでますますテンパってしまい、
適当なタイミングでそれらしくうなづいたりしていたら、
ちょっとぼんやりしているけど意識はある夫が
「コイツに何を言ってもムダですよ」というようなことを言ってくれて、
8人くらいのスタッフさんたちはまたえらくウケていた。

タイは付き添い入院が当たり前とはいえ
それは身の回りのお世話をするためであって、
タイ語も話せない
車の運転もできない
何もできない私はマジでなんのためにここにいるんだろう?
卑屈な意味ではなく素直に疑問に思った。
まあ私としては楽しいから良しとする。

2人になってから
「どうだった?痛かった?こわかった?」といろいろ聞いたが
夫はうっとりとした笑顔で
「ううん…寝てただけ…。」と言うだけだった。

日が暮れてきて、
夫はヘルシーそうな病院食を食べて、
そんな夫から
「いっしょにいてくれてありがとう、ここは俺のおごりだ」と言ってもらった私は
なんの役にも立っていないくせにルームサービスでステーキを食べた。

おいしそう
ルームサービスいろいろある
面白いくらい満ち足りた笑顔なんだけどいちおう隠してあげよう


夜は大雨になり、
病室の大きな窓から雨のチャオプラヤーリバービューを堪能した。

入院という非日常感と、
痛い思いや怖い思いをせず無事に手術が終わった安心感
長年の問題を解決した達成感
いっそう輝いて見えたあの日の夜景をわたしは多分一生忘れないだろう。


次の日

ドクターの診察を受けてそのまま退院になるかもう1泊するか決まるということだったが、ドクターはなかなか現れなかった。

朝ごはん

夫は痔をナイショにしたいという気持ちはみじんもないらしく
「さみしいから誰でもいいからお見舞いに来てほしい」というので、
私たちのニュージーランド時代からの友人で、ここ数年日本に留学しタイに帰ってきたばかりのPちゃんを招集した。

Pちゃんもシリラートの病室を見るのは初めてだったので
部屋を見回して面白い面白いと言ってくれ、
昨日から泊まってすでに我が家気分の私たちは
「まあ冷蔵庫の中の無料のジュースでも飲みたまえ」とおもてなしした。

せっかくPちゃんがきてくれたのにそのあとすぐ退院できることになったので、
支払いを済ませて私たちはお世話になったシリラート病院をあとにした。


オペ2週間後に1度診察。 経過も問題なく、夫と痔の戦いはおわった


次回最終話、トータル費用と夫の感想など

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