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缶コーヒーと松島海岸 | 小布施でカフェを始めるまでの話

2017年6月、私は千葉伸一さんと宮城の松島で缶コーヒーを飲みました。私の一番の「カフェ」の思い出です。

知人が「カフェをやろうと思っているなら、千葉さんが合いそう」と紹介してくれて、連絡をするとお返事をいただき、会うことができました。

千葉さんは、松島で松華堂菓子店というお店を経営されています。カステラやダックワーズなど、洗練されながらもどこか懐かしいお菓子の製造販売。さらに、Le Roman というまさにロマンあふれるカフェなども運営されています。

千葉さんを一言で表すと「粋な若旦那」。さらに、歌舞伎役者の女形さんのように、さりげない色気があります。加えて、反体制的なパンクの香りも感じさせながら、やり手経営者が持つ視座の高さもあるという、魅力にあふれた人でした。

松島海岸沿いにある千葉さんのお店で挨拶してから、お蕎麦屋さんで冷やしレモンそばをごちそうになりました。千葉さんは「せっかくなので、案内したいところがある」と海岸に向かって歩いて行きました。

松島海岸沿いを少し入った裏道にトンネルがあり、ちょっとした小島のようなところに出ました。

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観光地の喧騒から離れて、人通り、車通りがない場所。聞こえるのは風、かもめ、波の音でした。ゆったりとした水面を見ながら、松島海岸の素晴らしさって、この静けさだったのかと思いました。

千葉さんは来る途中の自販機で買った缶コーヒーをくれました。ブラックの缶コーヒーを飲みながら、千葉さんがふと言いました。

「松島もさわがしい観光地だけど、地域の人だけが知っているこんな場所がまだあるのが嬉しい。でも、たまにやるせなくなるのです。」

私は、「何がですか?」と聞き返しました。

「自分のお店でいくら良いコーヒーを出しても、この場所で飲む缶コーヒーに敵わないのですから」

む、むちゃくちゃカッコいい。

カフェの経営を通して、こんなロマンあふれる一言が言えるような感受性を養っていきたいと心から思います。

いつか「缶コーヒーと松島海岸」にまけないカフェを作ることができるか。または、「いろいろとやったけど、結局は勝てなかった」と、納得する日が来るのか、今から楽しみにしているのです。

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