見出し画像

HRのSharedServiceモデルがEmploye Experieneに与える影響について考えてみた

大企業HRオペレーションモデルの特徴

 とても当たり前ですが、大企業には数多くの従業員が在籍します。社員1万人を超える会社ももちろんあり、その場合約100人超の人事部員がいることも珍しくないです。(2社の経験上70人の社員に1人くらいの比率で人事)

大企業人事ではその組織の大きさゆえに,「●●部門担当人事」といった部門ごとに担当が配置されるか、「採用担当」「出向手続き担当」といった機能ごとに組織が構成されている場合が多いです。

私はこれまで2社の大企業人事を経験してきました。大企業人事と一括りにされることも多いですが、戦略的人事という概念が提唱されて以降HRオペレーションモデルにも変化があり,2社だけでもそのモデルは大きく異なります.特に,CoEと呼ばれる人事制度設計や企画を担う本社部門というより,実際のビジネス接点となる従業員サービスに関する体制が徐々に変化しています.

1社目;部門人事モデル
2社目;SharedServiceモデル

このモデルの違いによって人事目線・従業員目線での様々なメリデメがあり、EXに大きなインパクトを与えることが分かったので、今回はHRオペレーションモデルについて感じたことをまとめたいと思います。

※人事制度企画といったCoE機能よりは、HRAdmin的な人事オペレーションに関する考察です。

部門人事モデルにおける従業員サービス

  • 従業員接点→部門人事担当

このモデルの特徴としては,従業員接点は機能毎に分けずに各部門の担当人事がその担当ビジネス部門の人事に関するサポートを全てまとめて担います.
Beforeコロナの働き方を考えると、勤務地ごとに人事を配置するこのモデルがもっとも効率的でした。

多くの方が出社しており,わからないことがあれば人事フロアに行って相談をすれば良かったからです.これにより、ビジネスサイドから見て、自分の面倒を見てくれる人事が誰であるかが明確になり、戦略的な相談や人事策についての問い合わせが容易になるというメリットがありました。

しかしこの体制のデメリットとして、本来一箇所で集中的にやった方がいい業務もそれぞれの部門や地区の人事でやることにより,オペレーションが非効率になることがあげられます。具体的には、ビジネスサイドと共同で労務費予算を策定するような業務に置いて、各地域の人事がそれぞれ独自のツールやフォーマットを用いて業務を遂行し、一括でやれば効率的な未完了職場へのリマインドなど細々した作業も全く別々で対応しているなどです。これにより、業務負荷が増大し、効率性が損なわれるという問題が生じます.

SharedServiceモデルにおける従業員サービス

  • 従業員接点(人事手続き):部門/地域横断的なShared Service

  • 従業員接点(人事戦略):HRBP

CoE/HRBP/SSの3ピラーモデルと言われるこのモデルの特徴は,これまで担当部門に対して「なんでもやります!!」と言ってきた部門人事を,HRBPと SharedServiceに分けたことです。これまで通りHRBPは担当部門を持ちますが,あくまで人事戦略的なサポートのみ.日々の会社運営に必要な人事異動や評価などのオペレーションについては,部門や地域を横断的にサポートするSharedServiceがサポートします.

一見効率的に見えるこのモデルは,時に従業員やビジネスサイドからすると少し複雑だと感じる場合があります。なぜなら、何か人事的な相談をしたい時に,誰に何を相談すればいいのかがとてもわかりにくくなったからです.

SharedServiceモデル導入における課題とは?

「とにかく自分の担当部署の人事のAさんに相談すればOK」だったと言えた部門人事体制と異なり,SharedServiceモデルでは「この場合の相談は・・・.これは・・・」と相談先が機能毎に分かれる傾向にあります.
 その結果,なかなか相談先人事に辿り着けず,「何となく顔と名前を知っている」担当HRBPに手続きなどのオペレーションに関する相談も持っていくことが起こります。

一つ例を挙げてみます。
出向中の従業員が「退職をする」と出向元のマネージャーに申し出たケース。これまで部下の退職を経験したことのないマネージャーは、どのように対応すればいいかもちろんわからず、人事に相談したい。そこで問い合わせ先を確認したところ「出向チーム」「退職処理チーム」...きっと出向中の出来事だから「出向チーム」が対応してくれるはずだ。

しかし、出向チームからの返信は「こちらのチームでは対応しておりませんので、担当チームへお問い合わせ下さい。」

では、退職処理チームに問い合わせすればいいのだろうか。

退職チームからの返信も「こちらのチームでは対応しておりませんので、担当チームへお問い合わせ下さい。」

もうよくわからないから顔見知りの担当部門HRBPの●●さんに連絡しよう。。

極端な例ではあるが、実際に現場で起きている話です.

この状況は誰にとってもハッピーではありません.
人事手続きについて相談したいビジネスサイドから見ると、「人事の誰がサービスを提供してくれるのかわからない」と言うストレスを抱えているし、最終的に相談を受け取るHRBPは「本来もっと戦略的な仕事により力を割きたいのに。。。」といったストレスを抱えています.

SharedServiceモデルを上手く運用するためにはどうすればいいか?

では,実際にこの課題を解決するにはどうすればいいのでしょう.僕の考えでは,それは「受付窓口の設置」です.市役所とかに行って困った顔をしていると「どの様なご用件ですか?」と声をかけてくれるあの人たちのイメージです.

これ,当たり前の様に思えるかもしれませんが,結構当たり前じゃありません.それぞれの部門が色々なところに問い合わせメーリスを掲載して,問い合わせの窓口も統一されていなかったりします. 

とにかく,人事に関する問い合わせの窓口を一本化する.その上で人事がバックエンドで問い合わせの内容を振り分けていく.こうすることで人事の負荷は少し増えますが,従業員の満足度やストレスは圧倒的に軽減できます.
(ちなみにこれ言うは易しで,問い合わせの振り分けは簡単ではないです.まず役割分担の明確化と共に,横串的にどの部署で誰が何をやっているかを全体把握している担当者の育成が必要です.その振り分け担当者となる人は全人事部門の規定やガイドライン,説明会資料などにくまなく精通しておく必要があり,結構大変です)
※最近のHRテクノロジーカンファレンスでも紹介されていた、ノリに乗っているServiceNowを活用することで,そのバックエンドでのオペレーションや育成負荷もかなり効率化できるのですがそれはまた別の機会に)

ただ,それだけ大変だったとしてもEX向上には欠かせない機能になっていくのではないかなと思います.

結論

・時代によって人事のオペレーションモデルは変遷していく
・人事オペレーションの集約化によるShared Serviceモデルには効率化といったメリットもあるが,従業員から見た時にわかりにくいというリスクも孕んでいる
・とにかく相談受付窓口の一本化,バックエンドでの問い合わせ振り分けが今後一層重要になる

自分自身もまだまだHRのオペレーションモデルについて勉強中ですが,引き続き発信に努めていきたいと思います!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?