新たなサッカーの見方:「センターバックを攻撃できているか?」
風間八宏さん初の戦術本、『風間八宏の戦術バイブル』(幻冬舎)が11月24日に発売になりました! 僕は構成を担当させて頂きました。
風間さんと言えば、「止める・蹴る」で知られていますが、その個人技術の話からさらに踏み込み、「戦術」について詳しく解説しています。
たとえば本書において、風間さんは「センターバックを攻撃できているか? を見れば、そのチームの攻撃の良し悪しがわかる」と主張します。
風間さんはある高校年代のチームで、ハーフタイムで次のようなアドバイスをしました。
「相手10人に守られても、1人を崩せばゴールになる。全員が相手のセンターバックを常に見ておけ。ちゃんとセンターバックを攻撃しよう!」
みんなの第一優先を敵センターバックに置こうということです。そうするとピッチで何が起きるのか?
敵センターバックのまわりでFWがフリーになろうとアクションを起こし、他の選手はその動きを見るようになる。すると、敵センターバックは体勢や立ち位置を修正し続けなければならず、DFラインがぐらつき、相手の組織が間延びしやすくなる。すなわち、隙間(スペース)が生まれます。
風間さんが川崎フロンターレと名古屋グランパスで取り組んだのも、まさにこのポイントでした。風間さんは大久保嘉人選手が川崎に入団したとき、こうアドバイスします。
「ヨシトは動きすぎている。常にセンターバックのところにいて、相手と駆け引きしてくれ。そうすれば絶対に得点できる」
大久保選手はすぐに意味を理解し、3年連続でJリーグの得点王になりました。
ちなみに川崎時代と名古屋時代のチーム作りについては、5章で詳しく触れられています。
この本を読んでから日本代表の試合を見ると、3つの欠点に気がつくと思います。
欠点1:FWが自陣方向を向いてボールを待ち、センターバックを攻撃できていない。その結果、サイドにしかスペースを見つけられない。
欠点2:DFラインが下がりがちで、組織が間延びし、相手に走り込むスペースを与えてしまっている。
欠点3:ビルドアップのとき、選手が杓子定規にピッチに広がりすぎ、ボール保持者が孤立し、パスコースが少ない。
この本を読むと、「ポジショナルプレー」や「5レーン」といった輸入された戦術用語では見えてこない世界が、見えてくるはずです。
【目次】
まえがき
1章:ゴール前で「センターバック」を攻撃する
ゴールを取るための方法論 / 行き詰まった攻撃の典型例 / ポイントは「前向きの選手」の数 / センターバックを攻撃する4つの方法 / ベルギー代表ロメル・ルカクの特徴 / 世界最高のCFロベルト・レバンドフスキの駆け引き / トーマス・ミュラーの忍者のような動き
2章:ビルドアップは相手を「囲む」
ビルドアップを成功させる普遍的な方法 / 相手を「囲む」ための基礎 / 相手を「囲む」ときの距離 / ボールサイドに固まって「囲む」ナポリ / 大きい距離で「囲む」リバプール / バイエルン・ミュンヘンの必勝法は「大きな円」 / 大きい距離の落とし穴 / 自分たちの距離を保つ / トッテナムの守備陣形の鍵はソン・フンミン / 攻撃も守備も、自分たちのピッチサイズを保つ
3章:欧州プレイヤー&クラブ解説
リオネル・メッシ / 見る / ポジショニング / 止める・蹴る / ロックオン / 急加速 / カリム・ベンゼマ / ズラタン・イブラヒモビッチ / マンチェスター・シティ / バイエルン・ミュンヘン / ユリアン・ナーゲルスマン / リバプール / トッテナム・ホットスパー / アトレティコ・マドリード / ボルシア・ドルトムント / アヤックス・アムステルダム
4章:ボールを奪い切る守備
1人でもボールを奪うために必要な習慣 / 止まる・狙う・奪う / 最も大事なのは「中央の守備」/ 安易に下がらない / 同時に2人を見る / あえてコースを空け、パスを出させて奪う / センターバックが押し上げる / 遠いサイドは捨てる
5章:川崎フロンターレと名古屋グランパス
川崎フロンターレでの指導初日 / ボールを「最適な場所に完全に静止」させることの意味 / あえて守備の練習を放棄した理由 / 2年目、大久保嘉人がチームに加入 / 進化し続けた大久保嘉人 / 驚かされたボルシア・ドルトムントのクロス / 小林悠の「やり続ける能力」 / 大島僚太と谷口彰悟の成長 / チョン・ソンリョンの足元の技術 / 相手のシステムを無効化する / 素直な選手が多かった名古屋グランパス / 「絶対にジョーを得点王にしよう」 / 突き抜けるほどの強さを目指して
6章:日本サッカーの育成改革
日本サッカーの育成の問題点 / スペインの強豪・セビージャの育成方法 / 「知恵」のある選手の育て方 / いつがわかると「狙い」がわかる」 / 妨害されても目的を変えない / 見る優先順位を作ると、見えるようになる / 集団に隠れない。全員ちゃんとやる / 一番うまいやつに一番要求する / 継続と刺激 / 世界で1人だけの選手を生み出す
あとがき
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