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チャット・マーケティングの真実 後編

前編に引き続き「チャット」についてのメソッドとなります。マニアックな内容すぎて、たぶんあまり多くの人には読んで貰えないかもですが、せっかく書き始めたので「後編」も頑張って書きたいと思います。


前編のおさらい

前回のお話では、最近あらゆるWebサイトで導入が進む「チャット」のマーケティング活用面について、導入企業の多くが成果が出ておらず、そこにはある共通した課題があるという点を書かせて頂きました。

詳しくは「前編」をお読みいただければと思いますが、おおまかには、その導入目的が、顧客の困ったを解決する事による「機会損失の削減」においてない為という点と、チャットボットに過度な期待を持ちすぎている事にある、という点を解説させて頂き、重要なのが「有人チャット」に取り組む事であるという結論を述べました。

今回の後編では、特に「有人チャット」に取り組む事を前提として、具体的にどのようにして「成果」を上げていけばよいのか。また、有人チャットならではの課題となる「教育と生産性(組織面)」の課題を、どのようにクリアすれば良いのかを書きたいと思います。

チャット誘導のCTAが一番重要である

まず、成果をあげるための側面からも、そして有人チャット化に対する組織面の課題をクリアする側面からも、CTAをいかに工夫するかが、とても重要になります。

最も重要なのは「CTAをクローズド・クエスチョン」にする事です。

ちょっと画像がみずらくて恐縮なのですが、以下は同じページ(このケースの場合には店舗詳細ページ)で、チャットのCTA(コール・ツー・アクション)を、オープンクエスチョンで置いた場合と、クローズドクエスチョンで置いた場合の実際の数値状況です。

オープンクエスチョンの場合:何かご質問はありますか?
CTR:1.96%  チャット返信率:0.21%

クローズドクエスチョンの場合:来店前の不安はこちらで解決
CTR:4.21%  チャット返信率:0.87%

正確な用語の定義としては、クローズドクエスチョンとは、相手にYES/NOで答えてもらう質問のこと。反対に、自由な回答を求めるのがオープンクエスチョンとなりますが、この記事では「回答の幅を絞った質問の事」をクローズドクエスチョンとさせて頂きます。

ご覧のように、クローズドクエスションの場合の方が、CTRも返信率(顧客が何かチャット上でアクションを行ってくれる割合)も高いことがわかります。

これはどのページで行った場合においても同様の結果が出ており、要因として、オープンクエスチョンの持つ以下のようなデメリットに起因します。(裏を返せば、その逆の効能がクローズドクエスチョンにはあるという事です)。

まず一つは、オープンクエスチョンでは「顧客がチャットでどのような情報が得られるのかのイメージが湧きづらい」という点です。

「何でも聞いて下さいね!」というオープンな問いを投げかけられた場合、顧客は、そもそも「聞いた結果、何が得られるのか」という想像が働きにくくなり、「これって聞いてもいい事なのかな?」と足踏みしてしまうことが発生します。質問するという行為そのものが、顧客に心理的負荷を発生させるという点を考慮する必要があります。

二点目が、「あ、これ聞いとかなきゃ!」という気づきを与えにくいという点です。

クローズドクエスチョンの場合、多くの顧客が聞きたいであろう事や、困ったり不安になったりする事を「代弁」する事で、顧客自身も何となく感じていた事を顕在化するきっかけを与えることができます。オープンクエスチョンではこの効果が得られないというのが理由です。

以上から、クローズドクエスチョンでCTAを置いた方が、全てのKPIで高い結果を得られる事になります。ただここで当然疑問が湧いてきます。クローズドクエスションにしたら、幅広い顧客の質問に応えられず、結果的に「取りこぼし」が発生するのでは?という疑問です。

結論としては、クローズドクエスチョンにする事で「取りこぼし」は発生します。ただ、次のPDCAサイクルを回し、CTAの文言を決定する事で、全体の指標としては、2倍から3倍の成果を得ることができます。

CTAのPDCA手法

改めて書きますが、チャットを設置する目的は、顧客の困ったや不安を解決し、結果として「機会損失を削減」する事が目標です。

具体的なKPIとしては、チャットを設置する事によって、設置したページ、およびWebサイト全体の「CVR」を向上させ、最終的な営業利益を向上させる事です。また、長期的には、問題を解決する顧客を増やし、顧客の満足度を上げ、LTV向上に資する事が目的です。

よって、「いかに多くの顧客の不安や困ったを解消する事ができるか」その総量が重要になります。

その為には、KPIで説明すると「ユニーク返信者数(チャット問い合わせ数)を総量として最大化する為のPDCAが必要となります。

先に結論を述べてしまうと、以下の方法でPDCAを行います。

画像を見て頂ければ、説明の必要も無いほどシンプルな方法です。ただ前提として、チャットを設置する「ターゲットページ毎に顧客の質問したい事は異なる」という事を押さえておく必要があります。

具体的には以下の画像を参考にして頂きたいのですが、ページ毎(ディレクトリ毎)、または商品カテゴリ毎に、ユーザーが疑問に思ったり、今一歩踏み込んだ相談をしたい内容は異なるという事です。

中古車Webサイトであれば、個車ページを閲覧している時には「総額はいくらになるの?」という事が最も聞きたい人が多い内容になりますし、自動車ローンのページであれば「俺ってローン通るのかな?」といった事が、顧客が一番不安に感じる事となります。

よってPDCAの方法論としては、上記の図と通り以下の流れとなります。

・まずチャットを設置するターゲットページを決める
・そのページに一旦「オープンクエスチョン」で、かつ自由回答形式でチャットを設置する。
・一定量「自由な質問」がテキストで溜まったら、テキストマイニングを行うか手動で、質問をカテゴリ分けする。
・再びオープンクエスチョンでチャットを設置し、その中を先ほどカテゴリ分けした質問を「選択ボタン形式(ランダム配置にする事)」で設置する。
・選択された質問の構成比を分析し、最も多い質問を「CTA」の候補として選定する。(やってみると結構明確な差が出る事が多いですが、同じような構成比となってしまう場合には、質問自体の抽象度を上げ、再度カテゴリ化しなおしてチャレンジする)
・選択した「クローズドクエスチョン」にCTAを変更し、オープンクエスチョンの場合とABテストを行い結果を分析する。
・チューニングする

チャットのアイコンを擬人化する

顧客の困ったや不安を解消する事を目的としたチャットの場合、その役目は、まさにWebサイト上における「店員さん」の役割となります。

もちろん、しつこく提案してきたり、ゆっくり選びたいのに、すすーと寄ってきて、やたらと話しかけてくる店員ではなく、「困ったや不安がある時に、そっと側にいてくれて、アイコンタクトで、何かお困りですか?といった一言をくれる」そんな店員です。

よって、チャットのアイコンを、このコンセプトに合わせてチューニングする事が意外に重要です。

ただ、もろに「私がお手伝いしますよ!(ババーンと、実際の社員の画像表示)」は逆効果となります。BtoBにおいては有効かもしれないのですが、BtoCの場合だと、リアルな人物を強調しすぎると、「気軽に質問できない」のです。つまり、心理的ハードルが上がってしまうのですね。

「有人チャットが重要」と言っておきながら矛盾してしまうのですが、「質問してみよう」という最初の意思決定を行う際には、そこにいかにも「リアルな人が対応しますよ」という事を感じてしまうと、「人様が対応して下さるのだから、ちゃんと準備して質問せねば」という、無用な気構えを求めてしまう事になります。

よって、色々と検証を重ねた結果、ベストなアイコンは「ロボット的な何か」という事になりました。また、そのロボットもできれば「動かした方が良い」です。フワフワとか、クルクルとか・・。

有人チャットの組織をどう実現するのか

前編でも述べた通り、顧客が困ったや不安になる場面は、より検討進度が深まった場面である事が多く(つまり優良な見込み顧客)、この検討進度が深い顧客ほど、相談したい内容は「個別のケース」となる可能性が高いです。よって、一般的回答しかできない「チャットボット」では、役に立たないという事になります。

この「個別のケース」に対応できる柔軟性こそ、有人チャットの強みであり、個別対応ができるからこそ、顧客満足度が上がり、LTV向上に繋がる可能性も高くなっていきます。

しかしながら、このお話をすると皆さん一様に腰が引けます。当然です。そこには、「人的リソースを囲う」事によるコストリスクと、「チャット対応要因をいかに教育するのか」といった教育面の課題、そしてもっと言えば「評価をどうするのか」といったような人事面の課題まで、色々と課題が見えてしまうからです。

よって私がオススメするのが「アルバイトを中心の体制を作る」事です。もちろん100%アルバイトの方ではありません。管理者として、SV(スーパーバイザー)として、規模にもよりますが、2名程度の社員の方は必要です。

しかし、アルバイト中心体制には様々なメリットがありますが、当然ながら以下の不安が発生します。

・商品に関する問い合わせなど、知識が無いと対応できないのでは?その教育に時間がかかりそう。
・どんな質問がくるか想定できない!なので、質問対応表みたいなものを作りきれないのでは?

実はこの問題は、先に述べた、CTAを「クローズドクエスチョン」するという方法でクリア可能です。CTAのクローズドクエスチョン化が、成果にも、組織マネジメントにも影響すると書いたのは、ここに理由があります。

なぜ、CTAをクローズドクエスチョンにする事で、この問題が解決されるのでしょうか?その理由は下記の図をご覧ください。

チャット運用を数多くこなしていくとわかるのですが、CTAをクローズドクエスチョンにする事により、そもそも質問の内容がほぼ固定化されます。正確には「商品等の違いはあれど、質問される内容は同じ」という状況が生まれます。

例えば、商品詳細ページにおいては、CTAを「納期はこちら」とする事で、商品は毎回異なるものの、質問される内容は毎回「納期」についてであり、その納期の調べ方自体は、対象となるメーカーが異なっていたとしても、ほぼ同じはずです。つまり「やり方」としては同じであり、その経験値は急速に蓄積され、すぐに慣れていきます。

また、店舗の店員と異なり、チャットは「同時に多数の顧客と対応を行う」事が通常となるため、例えば1日に店舗の店員が平均10名の顧客の接客を行うとすれば、チャットメンバーは1日に「50名」の対応を行う、といった状態になります。

この為、3ヶ月もすると、1年くらい店舗経験を積んだ店員さんと、ほぼ同じレベルの商品知識等を身に着けるようになります。実際、1年も経つと、結構なスキルを持つエリート店員と同じ位のレベルになったりします。

なので、「有人チャットは無理!」と最初から決めつけるのでは無く、まずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

約4年間に渡り、本気でチャットに取り組んできた結果、オウンドメディアの戦略として、チャットは短期的なCVR向上だけでなく、長期的な顧客ロイヤルティにも大きく貢献する、戦略上とても重要な取り組みであると考えています。他にも様々なノウハウが存在しますが、ここでは公開しかねますので、もしご質問がありましたら、直接ツイッターか、Facebookでご連絡頂ければと思います。

また、マーケティングについては、こちらのマガジンに随時記事をアップしていきますので、もしよろしければ、フォロー頂けますと幸いです。



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