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「雨上がりの猫とトモ」

静かな町の片隅で、人々の視線から隠れるようにして、トモはその日も何もしなかった。彼の部屋はごみの山、食べかけのインスタントラーメンのカップが散乱し、洗濯物はいつからたまったのかさえ思い出せない。トモはいつしか「ダメ人間」と町の人に囁かれるようになっていた。

彼はかつては違った。町の明るい未来を夢見る青年だった。だが、夢を追うことの厳しさに心を病み、次第に世間から身を引いていった。そんな彼に変化が訪れたのは、ある雨の日のことだった。

ドアを叩く音に煩わしげに目を覚ましたトモが玄関を開けると、そこには小さな黒猫がずぶ濡れで立っていた。なぜだか、その猫を放っておくことができなくて、彼は猫を家に入れた。猫のおかげで、トモの日常に僅かながらの変化が生まれ始めた。餌をやるためには買い物に行かなければならず、猫のためならばと掃除もするようになった。

日々の小さな変化が彼の心にも影響を与え、ひさしぶりに外の世界へと足を踏み出した。町の人々は彼を見て驚いた。かつての明るい青年が戻ってきたかのように見えたが、何かが違った。彼の目にはかつての夢を追う輝きはない。だが、それでいいとトモは思った。夢を追うことはもうやめた。彼はただ、今を大切に生きることにした。

猫と暮らし始めてから、トモは少しずつだが、町の一員として受け入れられるようになっていった。ダメ人間と呼ばれた日々は遠い過去のものとなり、彼はただのトモとして、ありのままの自分として町で生きていくことを決めた。静かな町の片隅で、トモは新しい日々を送っている。

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