木市ノ木重

「坊っちゃん」を読むまで「笹団子」というものを知らなかった。勿論口にしたこともない。未だにない。
松山へ向かう「坊っちゃん」はお土産は何がいいかと「清」に訊ねると「笹団子」を所望され、困惑する。坊っちゃん曰く「笹団子」とは新潟のものらしい。
そちら側の皆様は「笹団子」というものを食したことがありますか? 唐突だけど。

さて、そんな私だが、新潟に親戚がある。詳しく言及はしないが、親戚が新潟に居る。
実家にいた時分、毎年冬になると彼の地から新巻鮭が届いた。吊るしの一本だ(表現が正しいか知らないが)。子供だった自分はそれがとても楽しみだった。鮭が大好きだったし、何より新巻鮭は別格だったから。
陳腐な表現で甚だ申し訳ないが、焼いた新巻鮭が一切れあればご飯が何杯でもいけた。お茶漬けもいい、おにぎりもいいな、フレークにして混ぜご飯にするのも堪らない。兎に角、新巻鮭は別格。間違いない。勿論、大人になった今でもその気持ちは変わらない。

彼の地からの楽しみはもうひとつあった。
柿の種だ。米どころ新潟だけあってせんべいの類も旨いのな。こいつは20センチ四方のブリキの缶に入って届いた。その辺にあるビニール袋に入った奴とは見た目からして違う。別格感が「どうよ」て感じで、もう偉そうなんだよ。でもそれでいいんだ。偉そうでも構わない。だって、旨いんだから。

まあ、そんな感じで、私を構成する何百分の一かは柿の種(と荒巻)でできている。確実に。
それが理由かは知らないけれども、実は柿の種を常備している。落花生の入っていない奴。「純」柿の種ね。しかも新潟謹製の奴。別に柿の種中毒ではない。もっと言うと好物というわけでもない。美味しいし好きだけど。嫌いじゃないぜ、て程度。兎に角常備している。ちょうどいいんだよ。つまむのに。口寂しいときに適当にガッて皿に取ってチマチマ食うの。ちょっと口に放り込んだろ、て時にちょうどいい。
好きなのはポテロングだからそれは別で食うよ。ちゃんと、うめーなーて味わいながら。柿の種はそういうんじゃないんだよ。日常だから。さっきも食った。明日も食う。きっと明後日も食うよ。

ピーナツ入りは邪道、て話しでした。

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