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照り付ける太陽め!

今日は、筆が進み、結構なボリュームのものを2本もnoteに上げた。

それで今日はもう打ち止めの筈だった。
夕飯の用意の前にニュースをチェックしていたら、アランドロンの訃報が目に飛び込んできた。
そこで、急遽本日最後にもう1本、と筆を執ることにした。

私自身は、残念乍らアランドロンの活躍をオンタイムで知らない。
失礼ながら、過去の有名イケメン俳優、という認識である。
そして寧ろ、俳優と言うよりビジネスマンとしての印象が強かったように思う。

そんな私とアランドロン氏との関わりは、1990年代の終わりから2000年代初頭にかけての事である。
それと言うのも、その頃渋谷駅の東口バスターミナルには都営バスの定期券販売所があった。そしてその隣、階段下のスペースを利用した正に隙間に、小さな小さな店舗があった。「COCO渋谷」という名のその小さな店は、香水を扱う専門店だった。
侮ってもらっては困るのだが、この小さな店は香水を扱う只の小さな販売店ではない。目利きオーナーの取り扱う日本未発売のもの、レアなもので埋め尽くされた、香水の洪水、正にそれを体験できる店だった。そして、この小さな小さなお店は、アランドロンの手掛ける香水「サムライ」の日本総代理店だったのだ。
アランドロンは、三船敏郎と共演している。その縁でこの「サムライ」という香水は開発販売されるに至った、と聞いた。
角ばったボトルの形状は、裃を付けたサムライをイメージしたもので、また、その清涼な青は広重ブルーに触発されたものだと、その店主に伺った。

当初、私は他の香水を求めてCOCOに通っていた。他店で買うよりも安く買えたからだ。
ある日、店主から、小さなサンプルのアトマイザーを頂いた。今度うちが総代理店として販売することになる新しい香水だ、と言うのである。つまり、それが上述の「サムライ」であった。
貴方はきっと気に入る筈よ、と言って、そのサンプル品とは別に小さなボトル入りのものを数個頂いた。
その香りは店主の言うとおり、私の好きな香りであった。私は、次の日早速予約を入れに走った。実に商売上手である。

その際私は店主から、アランドロン手掛ける香水会社 "PARFUMS ALAIN DELON" との代理店契約締結に際し来日したアランドロンと、肩を並べた店主が嬉しそうに映った写真を見せて貰った。
そして、アランドロンの為人(ひととなり)や、古い映画や音楽、その他色々の話を小一時間伺い、改めて店主の広い知識や見識の高さに恐れ入ったものだ。

そんなCOCOも軈てその地を離れ、確か、向かいの東急文化会館に店舗を移した。店舗が移ってから幾度か訪れたのだが、その都度店主は不在で、代わりに見知らぬ女性が店に立って居た。
数年間の事ではあったが、そうして私のCOCO詣では終わるのだった。

もし、当時の店主がご存命でいらっしゃったのなら、嘸かし悲しむだろうなあと、急に私の懐かしのCOCO店主のことが気になった。

失礼ながら、彼女が既に鬼籍であれば、あの時お見せいただいた写真のように、天国でアランドロンと二人肩寄せ合って談笑しているに違いない。

アロンドロンさん、及び関係の皆さま、僭越ながら、ご冥福をお祈り申し上げます。

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