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マレーシア国王の政治的役割

イントロダクション
こんにちは、こんばんは、おはようございます!Renta@マレーシアから国際関係論について考える人です!今回の記事は、マレーシア国王の政治的役割についてです。このnoteでは、

  • 世界的に珍しいマレーシア国王の制度の概要がわかる

  • イギリス憲法

  • 立憲君主の役割がわかる

それでは、早速始めます。

マレーシア国王と2022年11月総選挙の一件 

あまり知られていないかもしれませんが、マレーシアには国王がいます。しかも任期制の国王です。

マレーシアは連邦国家なので、国家が州に分かれます。各州に州王という人がおり、その州王たちの1人が、持ち回りで国王になります。任期は5年です。
ちなみに、マレーシアの国王はスルタンと呼ばれます。元々スルタンはイスラム圏における世俗的権力者のことです。

マレーシアとイスラム教との関係については以下のnoteに詳しく書いていますので、よかったら読んでみてください。

https://note.com/shiny_otter229/n/n558720f77f13

https://note.com/shiny_otter229/n/n63c0af5d0058

さて、そんなマレーシア国王はどんな立ち位置にあるのでしょうか。それを知るために重要なのが、2022年11月にあった総選挙です。

この選挙では、マレーシアの新首相にベテラン野党指導者のアンワル・イブラヒム元副首相が就任して終わります。
しかし、そこに至るまでの過程でマレーシア国王の役割を見い出せます。

選挙直後の状況は、どんな政党も過半数を獲得できておらず、従って新政権が発足できないというものでした。

アンワル氏が率いる野党連合の希望連盟(PH)が最大議席を獲得したのですが、単独で政権を担うのに十分な議席は確保できていなかったのです。

といっても、新政権が発足しないと国の統治ができないので、水面下で交渉が続きますがうまくいきません。

そこで、マレーシア国王のアブドラはすべての政治指導者を王宮に呼び、共通点を見つけるよう求めました。

その結果、アンワル氏は他の2つの政治連合の協力を得て過半数議席を確保し、「国民統合政府」を樹立します。

このアンワル氏による新政権発足の流れは以下の記事を参照しました。
https://www.google.com/amp/s/www.bbc.com/japanese/63752337.amp

国王に対する様々な見方と立憲君主制

それでは、マレーシアの政治は結局国王の決定が全てなのでしょうか?

国王と政治には3種類の関係があります。
1つ目が、絶対君主です。絶対君主とは、国王が国家の統治機能を持っている状態です。

2つ目が、国民統合の象徴としての国王です。国王は国民を感情的に結びつけます。同じ君主を戴いているという共通点から、国民同士がお互いに共感し合えるのです。

3つ目は、立憲君主です。立憲君主は上の2つの間にあります。立憲君主は憲法によって、権力が制限されています。
立憲君主は政治に影響力を持つことはできますが、無制限ではないということです。

イギリス憲法を参考に考える

それでは、立憲君主の政治的役割について考えてみましょう。これにはイギリス憲法の教科書であるウォルター・バジョット著「英国憲政論」が役に立ちます。バジョットによると、立憲君主は大臣に対して以下の権利を持ちます。

  • 警告する権利

  • 激励をする権利

  • 相談を受ける権利

ポイントなのは、最終的な意志決定は大臣に委ねられていることです。つまり、立憲君主には権限がありません。権限がないので、大臣の行動の結果の責任をとる必要がないのです。

この制度は、国王が国民統合の象徴として機能するために重要です。なぜなら、権限には責任がついてまわる一方で、政策はいつも成功するとは限らないからです。もし国王が政治をたくさん失敗してコロコロ入れ替わられては、国王統合が難しくなります。

立憲君主制の制度の効果的な側面は、国王という権威ある存在が、しがらみのない視点から政治に対して影響力を行使できる点です。大臣の行動は、どうしても自分の支持基盤や政党の意向に影響されます。だから頭では正しい判断が分かっていても、実際には行動できない可能性があります。そこで、国王からのコメントが大事になります。国王は権威ある存在なので、時には個々の大臣の利害を乗り越えることができるのです。もし、支持基盤の意向に反する決定打としても、国王が言ったことなので、と大義名分を立てることが出来ます。

マレーシアの立憲君主制は機能している

マレーシアも立憲君主制を採っているので、バジョットの理論を援用して考えることができます。

上記の通り、マレーシア国王アブドラは政治家たちに、個々の利害は置いといて新しくリーダーを選出するように求めました。もちろん、マレーシア国王に人事権はありません。しかし、大臣にコメントを出すことはできたので、最終的にマレーシアは新政権を発足させることが出来ました。だから、マレーシアの立憲君主制は機能しているのです。

 まとめ

ここまで、マレーシアの立憲君主制を見てきました。立憲君主制は、国王に権限を持たせないが、政治的影響力は及ぼせる形になっているので、新政権が発足しないなどの国家の危機に対して対応できるのです。そしてそれは、国王がしがらみのない立場からコメントできるからなのです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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