見出し画像

人事のデータ活用:日銀短観を見ると

日銀短観(日本銀行短期経済観測調査)は、日本の企業活動の現状と見通しを把握するための重要な経済指標です。この調査は、日本銀行が四半期ごとに行い、企業の経営者を対象にしたアンケート調査に基づいています。採用に関連する部分を含め、日銀短観の見方を解説します。


日銀短観の構成要素

業況判断DI(Diffusion Index)

 企業が現在のビジネス環境を「良い」「そこそこ」「悪い」の三つから選んで答え、その差(「良い」-「悪い」)がDIとなります。この数値が高いほど、企業の景況感は良いと判断されます。

  1. 業種別の分析: 製造業、非製造業など業種別にデータが分けられ、各業種の状況が把握できます。

  2. 企業規模別の分析: 大企業、中小企業など規模別にデータが分けられています。

採用に関連する要素

  1. 人手不足感: 企業が感じている人手不足の状況を反映します。特にサービス業や建設業などで顕著に見られる場合があります。

  2. 賃金動向: 労働市場の状況が賃金にどのような影響を与えているかを示します。人手不足が激しい場合、賃金が上昇する傾向にあります。

  3. 雇用計画: 企業が今後どの程度の採用を計画しているかの指標です。経済状況により、採用計画が変動することがあります。

日銀短観の解釈

  • 景気の先行指標: 日銀短観は景気の変動を先行して反映することが多く、経済政策や市場の動向に大きな影響を与えます。

  • セクター別の分析: 例えば、IT業界や建設業界など特定のセクターが好調な場合、関連職種の採用市場も活発になる傾向があります。

  • 地域別の状況: 地域によって経済状況は異なるため、地域別のデータを分析することで、地域経済の健全性や採用市場の動向を把握できます。

注意点

  • 短期的な変動に注意: 日銀短観は四半期ごとの調査であり、短期的な変動に敏感です。長期的なトレンドを見るためには、複数の調査結果を比較することが重要です。

  • 他の経済指標との併用: 日銀短観だけでなく、失業率やGDPなど他の経済指標と併せて分析することで、より正確な経済状況の理解が可能です。

日銀短観は、日本の経済動向を理解する上で非常に重要な指標です。特に採用市場においては、企業の業況感や人手不足感、賃金動向などを通じて、労働市場の状況を推測するのに役立ちます。

日銀短観(雇用人員判断)
2023年12月13日公表 日銀短観より転載

2023年12月調査についての私見

2023年12月の日銀短観によると、全産業・全規模での業況判断は上昇傾向にありますが、先行きには不安の兆しが見られます。特に、非製造業の経常利益は上期と比較して減速しており、人手不足が一因とされています。これにより、賃金や採用コストが増加し、事業効率が低下している状況です。現在の水準は1983年の調査開始以来、「不足」のポイントが最も高くなっています。

日経平均もバブル期を超えるような数値が出ているにもかかわらず、多くの中小企業の経営者は、人員が確保できず「先行きは不安」と思っているとの報道がありました。

「雇用人員判断」を事業規模別に見ると中小企業はその傾向は強く、先行きの変化幅も-5ポイント(全産業)と雇用確保の傾向は加速し、特に中小企業・非製造業については-47ポイントと大幅な不足傾向にあるが、先行きは-52ポイントとなっており、さらに人員不足の懸念が強まることから、採用意向は更に加速すると考えられます。
また、中堅企業においても非製造業の雇用人員の不足感は、中小企業と同様であり雇用確保に向けた採用競争の激化が直近では見込まれます。新卒採用においても2023年度の計画と比較し2024年度の計画は大幅に増加傾向となる見込みで、特に中小企業では従来新卒採用を行っていなかった企業も新たに参入していると考えられます。

今後の雇用環境は、為替の変動に大きく影響されると考えられ、直近の6ヶ月程度は現状と大きく変わらず、求職者の需要は高くなると考えられます。新卒採用についても更に激化が見込まれることから、シニア人材等の有効利用も視野に入れるべきと考えています。


【Insighting HR】
現役CHRO&人事が動画を中心に本質的な学びと 課題解決のためのアイデアを提供しています。自己学習の参考になれば幸いです。

▼公式LINE(無料)LINE登録後、初回アンケートに回答ですべてのコンテンツをご覧いただくことができます。

https://xf4avxib.autosns.app/addfrien...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?