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【おとなりさんちの話】川﨑書道教室~子どものたまり場ぽかぽか~@唐津市

佐賀県の唐津市内から車で約30分ほどに位置する、漁港のある町、呼子(よぶこ)町。町内にある小学校から、すぐの場所に、こどもたちのたまりばがある。通常は書道教室。しかし、ここには、教室に通う子も通わない子も関係なく、学校が終わったこどもたちが遊びに集まってくる。まさに、「たまりば」なのだ。

到着すると、さっそく駐車スペースでこどもたちが遊んでいる。「こんにちは!ねえ一緒に遊ぼうよ!」と元気に出迎えてくれた。テントや小さなサイズの椅子・机が置かれていて、まるでピクニックのようだ。

駄菓子を片手に、女子会らしい。

その隣に座って、こどもたちを見守っているのは、書道教室と子どもの居場所を開き続けている川﨑繁子さん(以下、川﨑先生)。自身が持っていたものを空いているスペースに置いておくと、こどもたちが自由に遊び始めたという。「学校から目と鼻の先の場所にあるから、みんなが放課後に遊びに来るんですよね。」

そんな放課後にこどもたちが集まりたくなる、たまりたくなる場所には川﨑先生の”遊び”心があった。その”遊び”は「〇〇してね」というような、おとなが決めたものではなくて、こどもたちの「やってみたい」を引き出すもの。そんな、川﨑先生の”遊び”を紹介しよう。

まず、玄関には「だれでもかいていいノート」というものがある。悪口や人の嫌がること以外はなにを書いても良いというもの。これまでに、約5冊のノートが使われてきた。ここに書いたものには、先生がコメントを入れてくれる。

こどもが読みやすいように、ひらがなでコメントを書いてくれている。

この日も、こどもが「なにを書こうかな〜」とペンを片手に考えを巡らせていた。「そういえば、この間会った子のお名前、どんな漢字だったかな〜」と、ひとりで漢字クイズ。結局思い出せなかったみたいだけれど。

また月に数回、最近は「レゴ部」というものを開催しているという。レゴをたくさん広げて自由につくってみよう、という企画。黙々と作っているこどももいれば、友だちと協力して一緒に作るこどもも。もちろん、「やらない(他の遊びをする)」というのもOKだ。

確かに、ふと外に出ると鬼ごっこをして遊んでいる高学年の女子たち。「あの子たち、最近はダンスをやっているんです。運動会に向けて、練習しているとかで。」川﨑先生は、こどもたちの動きをちゃんと分かってくれている。

決して、誰かに見せようとせずに、自分たちで練習をする高学年のこどもたち。
時には人に見られたくないこともある。

段々と日が暮れていくのに従って、お腹が空いてくる時間に。お菓子や、おにぎりを食べているこどもたちが、ちらほら増えてきた。部屋の片隅に目をやると、無料でおにぎりを食べられるように置いてある。お菓子は駄菓子コーナーが。

それぞれに値段が書かれているので、お小遣いで買うのかな、と思っているとどうやら違うようだ。「ここに来ると50円がもらえる仕組みなんです。手作りのお金を代わりに渡すようにしています。(余ったお金は先生が管理している)」

川﨑先生が作った仮想のお金。みんながこれでやりとりをしているようだ。
冷蔵庫にもおやつが。自分たちの持っているお金でなにが買えるのかを計算中。

こうして、こどもたちが自分たちの時間を好きなように楽しんでいる。「〇〇して良いですか」と許可を取る必要もないし、終わりの時間を気にする必要もない。何か困ったことがあった時や見てほしい時には「先生!きて!みて!」とこどもたちが安心して頼れる存在としてそばに居るのだ。

そんな先生の在り方は地域の人たちや保護者の皆さんにも伝わってきているという。「夕方になって、ふらりとやってくる地域の民生委員会のおじさんがいて。こどもが好きみたいで、顔を出してくれるんですよね。」地域がこどもたちの声で賑わうことを、とても喜んでくれているのだそう。こどもを迎えにきた仕事終わりのお母さんたちも、とっても安心している様子で、中にはしばらく先生と話を続ける方も。

まだ使うことのできる、古着を集めて置くようにしている。「これなんか、〇〇くんにピッタリじゃない?」と、まるで親戚のお家での会話を聞いているようだ。

この日は、たまたま赤ちゃんを連れた保護者がきた。赤ちゃんを見ることがめったにないというこどもたち。終始、そばにいて抱っこをしたり、笑わせようとしたりしていた。

「どうやったら笑ってくれるかな?かわいい〜」

私たちは一般的に、”遊び”を「楽しむための余興」のように解釈するけれど、他にも「物事にゆとりのあること」「ゆとりをもたすこと」の意味もある。川﨑先生のつくり出す”遊び”には、「ゆとり」がある。みんなが集まるワケはそこにあるのかもしれない。

そんな川﨑先生が、地域のこどもたちを見てきている中で感じていることとはー。

「最近は、学校に行きたくない子も出てきているようで。中学生が来ている日もあります。親には言えないこともあるみたいです。やっぱり、居場所を開いている中で感じるのは、こどもたちが声を出して伝えてくれるかだと思うんです。大人が、”やってあげる”のではなくて、”(こどもが)声を出してくれれている”、お互いが伝え合っていかないといけないなと。」

部屋の一角に、こどもたちが自由に書けるこんな模造紙があった。「書道教室」から連想して色々な言葉を書くことができるようだ。気づけば言葉が増えていったという。

川﨑先生の作る「ゆとり」の背景には、揺るぐことのない謙虚な思いがある。だから、安心して声を出せるし、きっと救われるような気持ちになる人さえいるはず。先生は、そんな人です。

いつも来ている人たちに言っている言葉なんですけれど….と最後にメッセージをくれた。
「何かあったら、いつでもおいで!何かなくても、いつでもおいで!」

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川﨑書道教室~子どものたまり場ぽかぽか~
おとなりさん:川﨑先生
おとなりさんち:川﨑書道教室(佐賀県唐津市呼子町呼子3204-4)
月1回(水曜日)・無料
▶︎川﨑書道教室のアカウントはこちら https://www.instagram.com/shigeko.24/

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)



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