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【おとなりさんちの話】ひまわり会@佐賀市

どんな場所に住むかと、人と人がどのように交流をするかには関係性があるように思う。個人の住宅はいわゆる「おとなりさん」を意識した近所付き合いがあるものだが、一方で集合住宅は、隣に誰が住んでいるのか知らないことも普通だったりするものだ。昔からその地域に住んでいたというより、様々な場所からそこにやって来たり、出ていったりする人が多いからだろう。団地もその点、同じような特性を持っていると言える。

佐賀市兵庫地区の公営団地。比較的最近、建て替え工事が行われ、団地の中心に誰でも使うことのできる集会所がある。今回は、そこを活用し、こどもの居場所を始めた「おとなりさん」を紹介したいと思う。

民生委員児童委員で、団地のあるエリアの自治長も務める馬場井(ばばい)さんを中心に、約3年前ほどから週に1回程度、ここを開放し始めた。こども同士で交流をしたり、集まって遊んだりする場所がないことを課題に感じていたのがきっかけだったという。最初は、団地住民の理解を得ることや、こどもが安心して来てくれるか不安もあったようだが、場を開き続けてきたことによってこどもたちが自然に集まってくれるようになったそう。

この日も放課後の時間、小学生を中心にこどもたちが集まっていた。こどもたちにとって馬場井さんはすっかり「おとなりさん」になっていて、「ばばいさん、これみて!あのね!」とこどもたちに話しかけられていた。

こどもの話を聞く馬場井さん

「おとなりさん」はこどもたちが少しでも楽しめるように考えているようだ。この日は七夕が近かったので、馬場井さんは笹と短冊を用意して集会所に置き「良かったら、願い事を書いてね」と声をかけていく。こどもたちはワクワクした面持ちでペンを走らせる。こどもたちにとって、自分の願い事を周りの大人に見てもらえることも、ひょっとすると嬉しいことなのかもしれない。

また、自治会長でもあるため、団地住民にも声をかけて、不要になったおもちゃを寄付で集めた。こどもたちはくじを引いて、好きなものをもらうことができる。思惑通り、みんながとっても喜んでいて「一緒に遊ぼう〜」とこども同士で盛り上がっている様子だった。

寄付でたくさんのおもちゃが集まった

他にも自宅から自分のお気に入りのものを持ってきて遊ぶこどもたち。その様子は、まるで友だちの家に遊びに来ているかのようだった。ラジコンを操作してみたり、絵を描いてみたり、カードゲームをして過ごしたり。それぞれが自由気ままに遊んでいて、周りの大人がその様子をにっこりほほえんで見守る姿が印象的だ。時折、「ねえ、ハサミない?」「この遊びなんだけどね…」など困ったことや伝えたいことがあると、こどもたちから「おとなりさん」に話しかけているのだった。

実は、居場所づくりをスタートした当初、こどもたちに宿題をしてもらおうとしていたのだそう。しかし、こどもたちで遊びを繰り出していく姿と楽しそうな表情を見て、自身の好きなことができる場としていくことを決めたという。だから、周りのおとなりさんはあえて見守るだけにしている。「体力的に、一緒に遊べないというのも理由にはあるんだけどね。」とこそっと伝えてくれた。そんな空間が居心地が良いようで、最近では、この日だけ学童ではなく、ここに来ていたり、団地には住んでいないけれど遊びに来ていたりする子もいるようだ。

さらに、この場所は徐々に地域がこどもを理解する上でも大きな役割を担ってきているという。例えば、近くの小学校の校長先生がやってきて、学校以外でのこどもの様子を見に来たことがあったのだとか。異なる側面から、こどもを捉えることによって、より本人を理解することにつながったそう。また、迎えに来た保護者も一緒にこどもを見守る様子もあって、親子の垣根を越えて関わっていた。

学年や親子の垣根を越えて一緒に遊ぶ様子

こんな風に、こどもを大切にしようと始まった取り組みが、こどもだけではなく、周りの学校や保護者にも伝わっていっていることを、地域の社会福祉協議会もしっかり知ってくれていて、イベントを企画する時などにはサポートをしてくれる関係にもなっているのだそう。この日は打ち合わせがあったのか、職員が顔を出していたが「こどもたちと少し遊んでから帰ります」と柔らかな表情を浮かべて、一緒にこどもたちの「おとなりさん」となっていた。

どんな肩書きがあろうと、自分にできるそれぞれの形でこどもたちを理解しようとしたり、となりに居ようとしたりすること。そういった志や佇まいが重なって「こどもまんなか」になっていくのだろう。

ひまわり会の代表を担う馬場井さん(中央)、元民生委員児童委員の福井さん(左)、地域の社会福祉協議会の古澤さん(右)

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ひまわり会
おとなりさん:地域の人たち、ボランティアの皆さん
おとなりさんち:佐賀市兵庫団地 集会室 無料

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こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。
編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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