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【おとなりさんちの話】こども食堂えがお@有田町

有田町の内山(うちやま)地区。商業施設や窯元、作業場が集まっており、国の伝統的建造物の保存地区に選ばれている。
この地区に住むこどもたちについて考えてみると、その数は少なくなっていて、校区の小学校はどの学年もそれぞれが20人に満たない1クラスのみによって構成されているようだ。だから、こどもたちが不自由なく過ごせているかどうか、と感じている大人も少なくないようだ。

今回は、そのような地域で思いを持って「こどもたちのおとなりさん」になろうしている方々を紹介したいと思います。

区長を務める吉野さん

このエリアで区長をしている吉野晴義(はるよし)さん、主任児童委員を務める佳子(けいこ)さんは元よりこどもたちに思いを寄せていて、学習のサポートや、里親としてこどもたちに向き合うことをされていた。その中、コロナをきっかけに地域の行事が禁止されたり、こども同士で集まる機会が制限されたりしたことに危機感を覚えていたという。「このままでは、こどもも大人も関わり合う機会が減ってしまうと思ったんです。」
当時、感染症が完全には収束はしてはいなかったものの、それぞれが顔を合わせるきっかけとして「地域食堂をやってみたい」と感じていたのだそう。こうして地域の公民館を開き、自分たちだけで、できることをやってみようと手弁当で一歩を踏み出したのだった。

月に1回、地域食堂として白川(しらかわ)公民館を開いている

この日は、なんと初めてから23回目。
最初は回覧板で情報を流しても、どんな場になるのかと踏みとどまっていた地域の方も、元より思いを持ってこどもたちへの取り組みをしてきた吉野さんのことを知っていたことから、次第に協力をしてくれるようになった。今では積極的に手伝いに来てくれているという。初夏の気候に、流しそうめんをやろうと早くから準備をする「おとなりさん」たち。「何か誰かの役に立てないか、と思っていた時に吉野さんの取り組みを知ったの。」と、自分にできることとして、調理を手伝う方。「こういう取り組みは地域で支えていかないと。」と自分ごととして話す議員の方。他にも、昔の同級生だったという方や仕事のつながりで来た方など、多くの方の思いによってされていることが伝わってくる。

取り組みについて思いを寄せ、「自分にできることを」と調理を手伝う方

お昼の時間になると、こどもたちはお父さんお母さんと一緒にきたり、時には友だちを連れてきたり。「同じクラスの友だちがあと2人くるんだよ」と教えてくれた。「わたし、流しそうめんするのが初めてなんです!」といってソワソワしている子も。老人会の皆さんも「毎回、楽しみにしているのよ。」と嬉しそうに集まる。全員が集まった頃を見て、吉野さんがまるで先生のように話を始めるが、こどもたちは早く外に繰り出したくてたまらない様子。「では、外で始めましょう!」と声かけをすると、一斉にこどもたちは外に駆けて行った。

有田焼の器が、ずらりと並ぶ
お父さんたちが、こどもたちに渡していく

「おとなりさん」たちが勢いよく声をかけながら、水を流し始めると公民館の前は、こどもたちの声で盛り上がる。流れてくるそうめんを無我夢中でつかもうとする様子は、とても楽しそうで、周りの大人たちも、そんなこどもたちの様子をみて「すごく楽しそうでいいね。」と一緒に喜んでいた。また、さらに盛り上げようと「おとなりさん」の遊び心でフルーツやお菓子なども流していて、そんな風景はまるで、運動会の1コマのようだった。

そうめんを流す、おとなりさんたち
「わ〜流れていっちゃった」「みて!お菓子をつかんだ!」

この地域はこどもたちの数が少ないからこそ、ご近所さんのような感覚があって、自分のこども以外のこどもも知っているのだそう。だから「⚪︎くん、こっち向いて〜」と自分のこどものように呼びかけて写真を撮ったり「何年生になったと?」と話しかけたりしていた。

暑さがピークを迎えた頃、「おとなりさん」の皆さんは、暑さを予想していたかのように「アイスを用意してるよ!」と声をかけて渡す。こどもたちは日陰でアイスを片手に自分たちだけの世界を楽しんでいるようだった。

ぼーっと休んだり、友だち同士で話をしていたりする様子。
こどもたちだけで盛り上がっていた。

小学校高学年の3人組。少しお邪魔して話を聞いていると、たまにみんなで集まって、美味しいご飯を食べたり、ゆっくりするのが良いんだとか。「今日も楽しみにしていたし、来週は友だちと遠くに遊びにいくし、楽しいことがたくさんあるの….!」と教えてくれたこどももいて、自分の家以外で集まって、地域の行事に参加することは、こどもたちの日常にとっては大きな「非日常」で、そんな時間を楽しみにしながら日々を過ごしていることが伺えたのだった。

写真撮って…!とカメラに笑顔を向けるこどもたち。

吉野さんは、この場所をきっかけとして日常生活の中で接点が増えていったり、お互いが気にかけるような関係性がよりできたりすることを願っているという。「もし困りごとを抱えているこどもや家庭がいたとしても、ここに来てくれることで、すぐに相談できたり、解決したりする訳ではないと思うんです。それでも、日々の些細な所で顔を合わせることによって、徐々に信頼できるのかなって。」実際に相談に乗っているという家庭は、吉野さん自身が暮らしの様々な場面に話を聞いていく中で、できてきた関係性なのだとか。そんな言葉を聞くと、接点をいかに増やすかを考えながらも、一人ひとりの距離感を大事にするような在り方を感じたのだった。

「こども食堂(わたしたち)はみんなのサポーターだよ」と、吉野さんはこどもたちにメッセージを送ってくれた。

きっと吉野さんや、ここにいる地域の皆さんは「おとなりさん」となって、いつでも耳を傾けてくれます。皆さんがいることで、こどもたちが、安心できたり、ここでの楽しみを日常の糧にできたりするのだと思います。

吉野さん(中央)と地域の皆さん

今年度から同じ場所で、月に1回学習のサポートも実施することにしました。地域の皆さんが「こどもたちにおとなりさん」になろうとする取り組みは、これからも続いていきます。

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多世代交流型こども食堂えがお
おとなりさん:吉野さん、地域のおとなの皆さん
おとなりさんち:有田町白川1-1-15(白川公民館)
月1回日曜日(詳しくはこちら▷https://www.instagram.com/egao1962/
高校生以下 無料、大人200円

instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

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有田町には、他にも素敵な「こどもたちのおとなりさん」がいます。
是非のぞいてみてくださいね。

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こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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