佐賀県職員が、事業や施設の垣根を超えてこどもの視点に立ちながら対話する『こどもまんなか地域会議』を実施しました。
前半は、地域でこどもたちのそばに居続けて活動をしている方をゲストに迎え話しを聞き、後半には居場所となりうる地域のフリースペースや児童館・公民館ほか、こどもたちを見守る民生委員など、実際にこどもの声を聴く現場の方と対話を行いました。
初の試みとなった今回の取り組みについて、どういった趣旨のものか、どのような内容だったのかについてお伝えしたいと思います。
顕在化しているこどもたちの苦しさ
こども家庭庁が設置され「こどもまんなか」をスローガンに掲げ、こどもの声を聴くために社会全体で支える必要があるとして取り組みを進められています。改めて、「こども」の状況を振り返ってみると、先進国の中で日本のこどもたちの精神的幸福度は最下位に近く、他の視点においても順調に最多を更新し続けています。自殺、不登校、虐待、特別支援、外国籍のこどもの不就学、ヤングケアラーなどの言葉もメディアに多く取り上げられています。
こういった問題を対処することは必須ですが、なぜこういった状況が生まれているのか、もう一段階深掘りをして考えてみることが重要です。
核家族が増加し、地域での行動を制限されている現代のこどもたちにとって、家庭でも地域でも居る場所(物理的・精神的)が失われていってしまっていると言えます。家庭の力が相対的に小さくなっているからこそ、地域力を強固なものにしなければいけません。
だからこそ、まず地域でこどもたちが居場所と感じる場所や人が連携をする必要性があるのではないかと考えています。運営する大人の目線では、管轄が分かれているかもしれませんが、こどもたちにとっては自分がどこに分類をされるか定められている訳ではありません。
こどもの視点に立ち、声を聴きながら居場所づくりを進めることが必要
もう1つの目的としてこどもの視点に立つということがあります。居場所を感じられていないこどもがいるらしいから、解決策として居場所を作っていこうという考えは、実は大人の側の目線であり、本当にこどもたちにとっての居場所になるのだろうかということを確認しながら考えていく必要性があります。
こういった目的や背景への目線を合わせ、政策を考える側(=県庁職員)が連携をしていくことが「こどもまんなか」に繋がっていくのではないか。そんな思いから始めた試みでした。
〇第1部 メインプレゼン 『“すべて”のこどものそばに居るということ』 よりみちステーション代表 小林由枝さん
10年以上地域でこどもの側に居続けている佐賀県武雄市のよりみちステーション代表小林さんに話をしていただきました。
〇クロストーク『こどもがこどもまんなかと思える地域のために』
続けて、日頃から「こどもまんなか」つまり、こどもの権利を守るために活動をされている、佐賀県スクールソーシャルワーカー/ 不登校対応コーディネーターの金子千春さん、本庄小学校地域教育コーディネーター/ 前西与賀公民館長の木原久美子さんに参加いただきクロストークを行いました。
〇第2部 こどもまんなか地域会議(非公開)
会議自体は、具体的になにか結論を出すものではなく、参加者と一緒に「こどもまんなか」について対話をしながら考えるワークショップの形式で行いました。肩書きにとらわれることなく、「こどもたちは何を望んでいるのだろうか」「一人の大人としてなにができるのか」について、グループごとに意見やアイディアを出し合う時間となりました。
最後に
今回の会に参加していただいた方自身の考えたアイディアが、すぐに業務や政策に反映されて大きな何かが変わる訳ではない。目に見える効果の物差しで測れば、きっかけに過ぎないでしょう。しかし、それぞれの日常において、こどもと繋がる瞬間に浮かべる表情が、伝える言葉が、取る行動が一人の人として積み重なって初めてこどもたちや私たちにとって手触りのある「こどもまんなか」社会が実現されていくのかもしれない。
こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。
編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)