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パパの豪快スキップ

コロナ禍で世の中が欝々としていたころのこと。買い物帰り、通りの向こうの父子に気づいた。

幼稚園服の女児が、父親の右手にぶらさがりケンケンしている。片足飛びだからノロノロしか進めず、しがみつかれた父親も歩きにくそうだ。

しばらくして父親が何か耳打ちしたかと思うと、2人はつないだ手を大きく振って、いきなりスキップを始めた。

若いパパのスキップは威勢のいい大股で、タッタラッタとリズミカル。女の子もつられて弾けるように跳ねている。息の合った力一杯のスキップは何だかおかしくて、マスクの下で私は思わず笑っていた。

遅々とした歩みだったのが、今度はあっという間に進んでいく。

数十メートル先で彼らが入っていったのは保育園。あっ、そうか。あのパパは、幼稚園で娘を迎えた後、下の子を保育園に迎えに行く途中だったのだ。時間が迫り、焦れていたかもしれない。

なかなか進まない娘に「ちゃんと歩け」と怒るのではなく、スキップをもちかけるとは、なんてステキなパパだろう。そう気づいたら、秘密の宝物を見つけたように嬉しくなった。

機転の利くパパと元気な女の子のおかげで明るい気分になった午後だった。

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